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【WEリーグインタビュー】選手、監督の経験生かし…千葉・三上GMが見据える夢と課題

2021.05.21

©JEFUNITED

 日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』(Women Empowerment League)が2021年9月に開幕を迎える。

 2000年にLリーグへ参加してから20年以上が経過したジェフユナイテッド千葉レディースも、創設11クラブのうちの1つとなった。

 WEリーグという新しい舞台に戦いの場を変えるチームはどのようなクラブを目指すのか。選手として、指導者としてジェフ千葉レディースとともに歩み、2021年からGMに就任した三上尚子さんに話を聞いた。

インタビュー=小松春生

三上GM ©JEFUNITED

―――改めて、WEリーグ参入の経緯からお聞かせください。

三上尚子(以下、三上) プロリーグ設立やWEリーグの理念などに意義を感じて決定しました。ジェフは男子チームがあり、Jリーグでもスポーツを通じて社会に貢献するところに使命を感じながらやってきました。女子は2000年にLリーグへ参入し、なでしこリーグを戦う中で女子サッカーに対する知識もついてきました。男女平行してチームを持ち、地域社会への貢献という点でも、サッカーへの理解をいただきながら進めてきました。社会を元気にしたり、女性活躍に貢献するということで参入を決定しました。

―――WEリーグではプロ契約選手15名以上が必要になるなど、多くの点でなでしこリーグからの変更が必要となりました。選手の意識を変える必要もあると思います。取り組みとしてはいかがでしょうか。

三上 アマチュア契約選手に関しては、企業に勤めながらなので、プロ化に当たっての練習時間の変更などを少しずつ調整しています。企業の皆さまにかなりの協力もいただきながら、よりよい環境に、と考えています。プロとアマチュアが混在している中、選手のメンタルも十分にケアをしないというところもあります。これまで女子チームにはプロ契約選手がいなかったので、男子チームの話も聞きながら、契約もそうですし、選手へのアプローチなども参考にしています。

―――スタッフの体制はいかがでしょう。女性の比率を半数以上にするなどの規約があります。

三上 準備は粛々としています。WEリーグ専任の担当者が必要であったりして、男子チームのノウハウを知っている方に入っていただきつつ、少しずつ整えています。しかし、まだ整えきれていないこともあると思っています。メディアへの露出も考えていかないといけませんね。

―――三上さんは選手としてもジェフに在籍されました。長くこのクラブを知っているというところ含め、WEリーグではどういったチーム作りをしていかれますか?

三上 まず、女性活躍というところですね。ジェフ千葉レディースはコーチングスタッフにOGが入り、アカデミー含めてスタッフの男女比率も半々というところで、女性活躍のモデルクラブになりたいと考えながら、これまで進めてきました。それは、引き続きジェフのいいところとしてやっていきます。選手としてだけではなく、セカンドキャリアも含めた人材育成にもつなげていきたいですね。

 選手は、アカデミー出身や地元出身の選手をしっかり育てていきたいと考えています。もちろん外からの融合も非常に大切なことだと思います。一方でアカデミーの強みを出せるような強化をしていきたいと思っています。

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―――なでしこリーグでは実現できなかった部分、難しさを感じられた部分も多々あると思います。

三上 これまでも取り組んでいましたが、プロリーグになることで、より入場料収入をしっかり確保できる、お客さまに見せられるようなサッカーを展開しなければいけません。それ以外にも仕掛けを作っていく必要もあります。世界へのチャレンジにも貢献しないといけないと思います。クラブとしても、なでしこジャパンが世界と戦う上で貢献できる人材を輩出していきたいですね。プロ化することによって、外国籍選手がプレーしやすくなるなど、リーグの活性化に関しては今までとは違った期待もあります。

―――集客へのアプローチはいかがでしょう。リーグとしては女性、特にサッカー少女にスタジアムへ来てほしいと呼びかけています。

三上 これまで応援していただいているファン・サポーターの皆さまも大切にしたいですし、若い世代に見てもらうような取り組みも必要です。社会はデジタル化が進み、SNSでの展開を強化することなどはクラブ内でも話しています。新たな見せ方をもう少し考えないといけませんね。その中で、どうやったら少女たちが見に来てくれるのかを考えています。

―――選手たちには、より一層、発信や地域貢献などが求められると思います。

三上 そうですね。私自身も発信をしていかないといけないと思いますし、全体的にもまだまだ少ないと思っています。選手たちは真面目ですし、こちらのお願いも積極的にやってくれます。サッカー教室などもすごくいい雰囲気です。いろいろなことをやってくれる選手が多い中、選手個人の魅力や価値をもっと表に出していきたいですね。

 地域貢献で言えば、ホームタウンである市原市、千葉市といった地域でサッカー教室や、施設訪問などいろいろ企画していきたいですし、千葉県に対しての貢献、つながりも持っていきたいです。

 地域への貢献がファン・サポーターの拡大、プレーヤー層の拡大などにもつながります。地域を巻き込んでの活動は、選手たちのセカンドキャリアの勉強も含めて、進めていきたいと思っています。

©JEFUNITED

―――セカンドキャリアは大きな課題の一つでもあります。

三上 一人の社会人としての教育はやっていきます。選手もいきなり「プロ選手だ」と言われても、例えば確定申告など、個人事業主としてやっていくことにピンと来ない部分がたくさん出てくると思います。私たちもそこに寄り添い、研修をしたり、企業に研修へ行かせてもらうなど、そういう関わりも地域の皆さまと持っていきたいですね。

―――なでしこリーグでは中位に位置することがほとんどでした。WEリーグ参戦の11クラブの中での立ち位置はどうとらえていますか?

三上 クラブの目指すサッカーに賛同してくれる選手、私たちから見て適応できると考えた選手が揃い、いい形で進められていると思います。他チームとの比較に関してはなかなか難しいところではあります。ジェフとして監督、選手のやりたいサッカーが表現できると思っています。

―――三上さんご自身のお話もできればと思います。選手としてプレーし、トップやアカデミーの指導者も務めました。長年日本の女子サッカーに関わってきて、足りない部分、もっと変えないといけない部分はありますか?

三上 発展できるところはたくさんあります。男子サッカーに追いつかないといけない部分がありながら、そもそも女子サッカーの良さをまだまだ知ってもらえていないのでは、と思っています。自分たちのセールスポイントの伝え方、見せ方が違っていた部分もあったのかなと。

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―――三上さんが思う女子サッカーの良さは何でしょう。

三上 プレースピードは、男子と大きな差があります。でも、逆にそれが見やすさにつながったり、ひたむきにプレーするところ、緻密さが売りだと思っています。さらに、日本だけではなく世界を見ても、女子選手のアスリート化はかなり進んでいます。今、お話ししたプレースピードと相反するところはありますが、男子と変わらない迫力を持った選手も出てきています。そういった選手は日本にはまだ少ないかもしれませんが、魅力、かっこいい女性像が、これまで日本では売りになっていないところもあったので、今後はそういった部分も見てもらいたいですね。

―――9月の開幕はあくまでスタートで、その先もWEリーグが続いていく取り組みをしていかないといけません。どういった姿をピッチ内外で見せていきたいですか?

三上 地域と関わりながら、プロ選手の育成をしっかりやっていきたいですし、その人材を増やすことに力を入れていきたいと思っています。

 ジェフ千葉レディースで育った選手たちが将来、指導者やクラブスタッフとして、クラブに還元する形で戻って来てくれる。そういう仲間を増やしていきながら、クラブがさらに地域に定着して、クラブと一緒に育った子どもたちに目指してもらえる存在になる。その循環が生まれ、地域を明るく照らす存在になりたいですね。ピッチでは「これがジェフのサッカーだ」という核を作り上げようとしています。例えば、全く違うユニフォームを着ていても、「ジェフだ」と言ってもらえるようなクラブ、チームにしていきたいですね。

By 小松春生

Web『サッカーキング』編集長

1984年東京都生まれ。2012年よりWeb『サッカーキング』で編集者として勤務。2019年7月よりWeb『サッカーキング』編集長に就任。イギリスと⚽️サッカーと🎤音楽と🤼‍♂️プロレスが好き

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