村上アシシ氏の取材に応じた永里優季
経営コンサルタントを本業としながらも、サッカー日本代表とコンサドーレの熱烈なサポーターとして各種メディアで積極的に情報発信を行っている村上アシシ氏。今回、J論ではアシシ氏独特のサポーター視点、経営コンサルタント視点で日本サッカー界を盛り上げる方法を探る対談企画をスタート。第3回はなでしこジャパンのエースとして活躍する永里優季選手が登場。なぜアジア予選で敗退してしまったのか舞台裏に迫る。
▼リオデジャネイロオリンピック予選の敗因
アシシ:まずは今シーズンお疲れ様でした。フランクフルトは今季何位だったんだっけ?
永里:リーグ戦は3位です。
アシシ:ちなみに来季は?
永里:来季もフランクフルトの予定です。
アシシ:そうなんだ。あんまり報道とか出てないから。
永里:一応2年契約で、来季は2年目です。
アシシ:こないだのブンデスリーガ最終節の試合、両親が試合観に来てたでしょ。Facebookで記念撮影した写真を永里ママがアップしてたから、これは娘のブンデス最終試合か?とか勘ぐってたんだけど、違ったんですね。
永里:両親来てたけど、そんな特別な意味はないですよ。
アシシ:では本題を。今年2月から3月にかけてあったリオデジャネイロオリンピック予選の話をさせてください。あんまり振り返りたくないかもしれないけど。
永里:もう切り替えたんで、大丈夫ですよ。
アシシ:あの予選から3~4カ月経って、改めて予選敗退の要因みたいなものを個人的な見解でいいので、語ってほしいなと。
永里:純粋に私たちの力不足です。
アシシ:そんな新聞記者相手にしてるわけじゃないんだから、もっとぶっちゃけようよ(笑)。力不足が大前提としてあって、それ以外の敗因は?
永里:うーん。一番大きかったのは、ホーム開催の利点が逆効果になってしまった点ですかね。
アシシ:というと?
永里:オリンピックやワールドカップの予選が初体験の選手もいて、負けたら終わりという大会を日本でやるっていうのは、普段以上に相当なプレッシャーがかかるわけで、チーム全体として完全にビビってしまった感じは正直ありますね。
アシシ:でも僕がテレビ越しに見た感想を言うと、初戦のオーストラリア戦は試合前の映像とか見ても、スタメンがみんなすごい余裕のある感じの笑顔で、逆に心配になるくらいだった。
永里:あれはみんな、無理に作っていた雰囲気だったと思います。
アシシ:ビビってるのを隠す笑顔だったと。
永里:そう。
アシシ:そこに超本気のオーストラリアが、すごいインテンシティの高い試合の入り方をしてきて、オーストラリアの勢いに完全に飲まれてしまったという試合展開に。
永里:初戦のオーストラリアは日本戦のためだけに4週間準備を徹底的にやってきて、自分たちの弱点を研究してきたって感じだったし、なす術なく敗れて、本当の意味で完敗だった。
アシシ:日本は何週前から合宿してたんだっけ?
永里:国内組と海外組で合流時期は違いましたけど、ざっくり言うと約2週間前からですね。
アシシ:その差は大きいね。JFAにちゃんと提言した方がいいね。
永里:私から言ってもしょうがないんで、アシシさんから提言してください(笑)。
アシシ:わかった。言っとく。あと個人的に思うのは、対戦の順番も良くなかったと思う。短期決戦の初戦って1試合以上の重みのある試合なのに、なんで強豪のオーストラリアを初戦に持ってきたのかと。今回の予選は男子代表の予選みたいに公に抽選やってないし、ホスト国として運営の決め事はそれなりに融通利かせることができたんじゃないかと思ってるのね。実際、日本戦は地上波の放送時間考えて、5試合全て夜の時間帯にできたわけだし、対戦順についてもJFAや電通の力で何とかならなかったのかと僕は思っています。
永里:それも私にじゃなくて、協会に言ってください(笑)。
アシシ:たしかに。話を戻すと、初戦に負けてしまったことで、ホーム開催のメリットが逆に過度のプレッシャーに変わってしまったと。
永里:そうですね。
アシシ:バックパスをかっさわれて失点した中国戦は僕、スタジアムで応援してたんだけど、あんなネガティブなイージーミスなんて技術うんぬんの話ではなくて、メンタル面で動揺していた証拠とも言えるのではないかと。
永里:精神面でも負けていたし、技術面でも負けていました。最近思うのは、なでしこは5年前にワールドカップで優勝して以降、国際大会で結果を出し続けてきたけど、実力が抜きんでているわけではないんです。
アシシ:でも2011年ドイツワールドカップ優勝、2012年ロンドン五輪準優勝、2015年カナダワールドカップ準優勝と世界大会で3回連続ファイナリストまで登りつめているんだから、否が応でも世間の期待値は上がるよね。
永里:でも私自身、去年までなんであんなに結果が出ていたのか、理由はよくわかってないんです。
アシシ:なるほど。そういう自覚なんだ。実際の実力では大した差がないのに、予選突破はして当たり前、みたいな世間の雰囲気が重圧になってしまった感じ?
永里:敗因は私たちの力不足です。これは言い訳のしようがない事実。そういった重圧がかかる中でも、100%の力が出せるようにならないといけないと感じた予選でした。
(取材日:2016年6月14日)