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鹿島に敵地で完封勝利…盤石振りを見せた名古屋は6連勝で代表ウィークへ

2021.03.22

名古屋が鹿島を下した [写真]=J.LEAGUE

 まるで揺らぐことのない強さが、指揮官が序盤戦の区切りと位置付けた代表ウィークまでの全勝を実現した。戦いの第一目標は当然のごとく勝利だが、敗戦の可能性を可能な限り排除しながら勝ち点「3」を付け狙うその徹底された意識付けは目を見張るほどだ。横殴りの雨の中、連敗を避けたい鹿島アントラーズはキックオフからインテンシティの高い試合を仕掛けてきたが、名古屋グランパスは一歩も引かないどころか少しの焦りさえ見せなかった。「前半を0-0で折り返せたので、まず0-0でしっかりゲームを終わらせるという気持ちで僕自身はやっていた」(丸山祐市)、「0-0だから焦るとかは僕を含め思ってなかったと思うし、このまま進めていっていいよと話しながら試合を進められていた」(稲垣祥)。この落ち着き、この肚の据わりようには、5試合連続無失点を含む6連勝も頷ける。

 鹿島は善戦した。ザーゴ監督は「サイドのスピードを生かす部分は良かった」と若いウインガーの起用に一定の手応えを感じ、実際にも荒木遼太郎、松村優太の二人は中央のエヴェラウド、ファン・アラーノの流動的な動きを利用して何度もサイドをえぐってみせた。DFラインから前線を幅広く使うポゼッションに名古屋はそこまで食いついてはこなかったが、緩急のついたボールの動かし方は何度も名古屋のバイタルエリアに起点を作っている。あとはシュートまで持ち込めれば、という場面も数多く、鹿島優勢という見た目がピッチ上には広がった。


 だが、それも名古屋にとっては想定内、対応できる範囲だったようだ。普段はあまり見られない縦パスの入れられ方にも、丸山は「そこまで怖い場所ではなかった」と平然。稲垣も「中でボールを持たれても嫌な持たれ方ではなかった」とやはり問題なしを強調し、「下がりすぎてペナルティエリアに入られると事故が起こるので、そこは意識した」とリスクマネジメントの範疇内だったと断言した。そうした中で後半に入り、攻勢を強める鹿島に慣れた名古屋の力関係が、勝敗を分ける違いを生み出していく。

 59分、鹿島のゴール前での攻防からカウンターの防ぎ合いのような展開になり、鹿島が奪って速攻に持ち込もうとしたが、これを吉田豊が寸でのところでカットし事なきを得ると、その攻撃がコーナーキックに変わる。ザーゴ監督は「最近はディフェンスからオフェンスのトランジションに問題がある。今日の失点につながったコーナーキックもそうだった」と頭を抱えたが、マテウスのキックに競った山﨑凌吾がつないだボールを、稲垣祥が目の覚めるようなボレーシュートに仕留めてみせた。件のシーンは吉田豊のファインプレーとも呼べるインターセプトではあったが、喫緊の課題として抱える鹿島にとっては痛恨だったのだろう。これが3度目の決勝点となる稲垣は「自分の得意なボールが来てくれた」と淡々としたもので、そのテンションがかえって名古屋の力強さを際立たせる。

 失点後の鹿島は4人同時交代という奥の手を繰り出してきたが、それを見た名古屋のフィッカデンティ監督はすぐさま木本恭生を中盤に入れて布陣を4-3-3に移行。「木本をDFラインの前で使い、深くえぐられた場合はもうDFラインに入ってプレーして、真ん中がツートップに対して一対一ではなく数的優位を作れる状態にした」だけでなく、木本のボランチとしての配球能力も追い風に変えて試合の流れを渡さなかった。指揮官の戦術眼と選手たちの遂行能力が相まった名古屋の戦いぶりは、荒天にも相手のモチベーションにもびくともしなかった。

 驚くべきは6連勝のうち、オウンゴールの1失点以外はすべて無失点試合ということ。昨季17枚を稼いだクリーンシートを、すでに5枚も手にしている。6勝1分で19得点4失点の川崎フロンターレとはベクトルの違う圧倒的な強さを、今の名古屋は見せていると言っていいだろう。負けない試合に焦らず勝点「3」を上乗せするどっしりとした戦い方はさながら横綱相撲で、この経験をもって迎える2週間のインターバルでどれだけブラッシュアップされてくるかは実に見ものだ。かつての鬼門、アウェイ鹿島での盤石の勝利はそうした期待をさらに膨らませる説得力に満ちていた。

文=今井雄一朗

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