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戦う姿勢と柔軟な采配…平岡監督体制の清水は“勝利”で自信を深めチームの成長を加速

2020.11.16

中村慶太はC大阪戦で決勝点を記録した [写真]=Jリーグ

 戦う姿勢と柔軟な采配で今シーズン初の連勝をもぎ取った。清水エスパルスは14日、平岡宏章監督体制での公式戦2試合目となる明治安田生命J1リーグ第27節・セレッソ大阪戦に臨み、3-1の勝利を収めた。

 平岡監督が口酸っぱく選手たちに伝えている「戦う姿勢」が随所に現れた。前半は立ち上がりこそ清水が勢いを持って試合に入ったものの、徐々にC大阪にペースを奪われ、押し込まれる時間帯が続いた。しかし、以前ならあっさり失点を喫していたであろう場面でも、一人ひとりが明確に役割をこなすことで相手選手をフリーにさせることはほぼなく、身体を張ってピンチをしのぎ、無失点でハーフタイムを迎えた。


「少し相手に主導権を握られ、ズルズル引いてしまった」という前半を踏まえ、平岡監督は後半開始から動いた。「奪ったボールをまたすぐ相手に奪い返されていたので、1本つなぐこと」と指示し、ボールを保持できる中村慶太と鈴木唯人を投入。すると、後半開始直後から流れを呼び込み、49分にヘナト・アウグストの得点で先制した。

 67分の失点後は、坂元達裕を起点としたC大阪のサイド攻撃へのケアが必要と判断し、左サイドバックとして途中投入した立田悠悟と左センターバックを担っていたファン・ソッコの立ち位置を入れ替えた。平岡監督は「悠悟のヘディングの強さと、ソッコの一対一の対応力から判断して、(クロスを)上げさせないことと、(クロスを上げられた時の)中での対応のため」と理由を明かした。「選手にとって分かりやすい指示、采配を心掛けている」という指揮官からのメッセージは選手たちにもしっかりと伝わっていた。

「今までなら1-1の同点になったところで少しメンタルが揺らいで複数失点してしまうことがあった。でも、良い意味で割り切ることも大切。今日はみんなで焦らず続けることができた」(中村慶太

 新監督の柔軟性が光る一方で、ピーター・クラモフスキー前監督時代に築き上げた攻撃的なスタイルも確かにチーム内に蓄積されている。86分の中村の勝ち越し点は、相手のクリアボールをすぐさま回収し、中村がドリブルで運んでカルリーニョス・ジュニオとのワンツーでエリア内に侵入してシュートまで持ち込んだ。

 また、カルリーニョス・ジュニオのダメ押し弾は、相手の攻撃を自陣ペナルティエリア内でクリアしたところからのカウンター攻撃で生まれたものだった。「3点目の場面も、むやみに蹴らないでボールを大事にするのはピーター前監督の時に言われていたこと。そういったところが活きてワンチャンスをモノにできた」と中村。ボールをすぐに奪い返す意識と、リードしても攻め続ける姿勢は前監督が植え付けた基本である。

 しかし、試合全体をとおして見れば、C大阪にボールを保持された時間も多く、「相手に上手くディフェンスをはめられた時に逆を取ったり、フォローすることができなくて、90分間をとおして自分たちが上手くつくり上げたシーンはほとんどなかった」(中村)とまだまだ満足できる出来ではない。

 前節のヴィッセル神戸戦で課題に挙がった「ビルドアップ」の部分は、今節に向けて改善に取り組んできたものの、「特効薬はない」と平岡監督が言うように一朝一夕で解決するものではない。今節については「少し立ち位置を明確にしすぎたために、もっと流動的にやってもいいところで迷ってしまった」(平岡監督)と振り返っており、今後も実戦と日々の練習を重ねながら突き詰めていく必要がある。

 ただ、“勝利”という結果がもたらす好影響は何ものにも代えがたく、選手たちの顔色や振る舞いからも明らかに自信が見て取れるようになった。残り7試合、少しでも「良いチームに仕上げていく」(中村)ために、結果を追い求めながらチームの成長を加速させていく。

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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