2018.12.14

【インタビュー】進化を続ける安部裕葵、成長の鍵は「インプット」

安部裕葵
鹿島アントラーズの安部裕葵、今季のベストヤングプレーヤーに輝いた [写真]=︎NIKE
サッカーキング編集部

 安部裕葵が過ごしたこの1年は、本当に濃かった。プロ2年目にして鹿島アントラーズの貴重な戦力としてプレーし、クラブ史上初のアジア制覇に貢献した。

 安部の成長を促しているのは、自身の観察力と吸収力の高さだろう。ピッチを離れても、「体だけではなく、目からも覚える」とインプット作業を怠らない。だから、これまで見たことのないプレーを突然披露することだってある。

 安部裕葵はおもしろい。プレーを見ても、言葉を交わしても、そう感じる。これから、どんな選手になるのだろう。そんなワクワク感を抱かせておきながら、「先のことは本当に考えない」と何食わぬ顔で言う。若きファンタジスタが、充実した1年を振り返りながら、自身のスタイルを語る。

何も考えていない時が、一番気持ち良くプレーできる

――まずはアジア制覇、おめでとうございます。
ありがとうございます! 僕のサッカー人生で初めてのタイトルです。優勝できて、本当に良かったです。

――セカンドレグは10万人の観客が詰めかけました。完全アウェーの中での試合でしたが、大勢の前でプレーできる楽しさもあったのでは?
ありました。会場に着いた瞬間にニヤけちゃって(笑)。試合が楽しみで、笑顔が止まらなかったです。僕、緊張を一切しないんですよ。

――サッカー以外でも?
しないですね。だから緊張という感覚がなんとなくしか分かりません(笑)。

安部裕葵

――たしかに決勝でも緊張した様子はなかったです。むしろ、安部選手のプレーからは気迫を感じました。例えば、ファーストレグの序盤でカウンターのピンチを迎えた時、抜け出しかけた相手選手を後ろから止める場面がありましたね。結果的にイエローカードをもらってしまいましたけど、絶対に勝ちたいという気持ちが伝わってきました。
高校を卒業したばかりの僕だったら、あのプレーはできなかったと思います。ファウルをしてでも止めるという判断ができるようになったのは、鹿島というチームにいるからです。鹿島でトレーニングを積んで、試合数を重ねたからこそ、瞬時の判断力が高まったと思います。

――今年7月にはジーコ氏がテクニカルディレクターとして鹿島に復帰しました。ジーコがもたらした変化とはどのようなものでしょう。
ジーコさんは偉大な方で、みんなが尊敬している。ジーコさんの発言一つひとつに重みがあって、影響力がある方だと実感しています。僕は、組織においては一人ひとりの影響力が大きいと思っています。一人の選手が入ったり、抜けたりするだけで大きな変化が生まれる。ジーコさんがチームに加わるとなれば、その変化は大きい。ジーコさんが来ると分かっただけで、チームの雰囲気が変わります。

――一対一で会話をすることはありますか?
練習終わりに通訳を介してアドバイスをもらうことはよくあります。サッカーは感覚がすごく大事なスポーツなので、考え方が変わるだけでプレーは変わります。何を言われたからって、すぐにうまくいくことはないですけど、声をかけてもらうことで自信が持てる。メンタルがパフォーマンスを左右することをジーコさんは知っていて、声をかけてくださるんだと思います。

――「感覚がすごく大事」と言われましたが、安部選手が感覚的に気持ち良くプレーできるのはどういう時ですか?
何も考えていない時が一番気持ち良くプレーできると思います。サッカーは考えるスポーツだけど、うまくいっている時は考えなくても良い判断ができる。そういう感覚の時はゲームがうまく進むんです。その好循環が続けば、シーズンを通して良いパフォーマンスを発揮できる。

――「考えない」とは、考える前にイメージが浮かんだり、体が勝手に動いているという感覚ですか?
なんて言うんですかね……。調子が良い時は、パッと顔を上げた瞬間にたくさんの情報を取り入れられる。でも調子が悪い時は、耳や目から入れられる情報が少ない。それは自信がなかったり、不安があったりして、自分の力を発揮できていないからだと思います。自信がある時はパッと見ただけで何をすればいかが一瞬で分かる。そういう感覚ですね。

――試合の中でその感覚が研ぎ澄まされていく時もありますか?
もちろん。最初からそのゾーンに入っている時もあるし、試合中に入っていく時もある。逆に時間が経つにつれてできなくなる時もありますよ。

安部裕葵

――安部選手は視野が広く、「何をすればいいか」の判断力もある。判断する前段の、選択肢についてはどうでしょう。この2年間でプレーの引き出しが増えたという実感はありますか?
いや、高校の時のほうがドリブルもできたし、パスもできたし、なんでもできましたね。プロに入ってからは、ドリブルしかできませんでした。ようやく、いろいろなことができるようになってきましたけど、それでもまだまだです。判断力も含めて、もっと追求していきたいですね。

――1年目はプロとの力の差を感じたと。
そうですね。「このままだと、クビ切られるわ」って(笑)。でも、へこみはしなかった。高卒でプロになって、すぐにうまくいくとは思っていませんでしたから。そういう心構えだったのは良かったと思います。

――体つきもたくましくなりました。
体は大きくなりましたし、姿勢も変わったと思います。

――姿勢も?
自分のプレー動画を見て、「こうしたほうがかっこいい」という姿勢を意識しています。シルエットがきれいな人は、動きもスムーズですから。良い姿勢や立ち方、走り方を研究するのはサッカー選手として大事なことだと思っています。だから、僕は姿勢にもこだわります。

――なるほど。安部選手は相手を背負ってドリブルしていても、倒れることがほとんどないですよね。
そうですね。技術もありますけど、自分が相手に勝てる、勝てないの判断ができるかどうか。そこの判断を的確にすることが大事だと思います。例えば、ここでボールを取りに行っても倒される、と判断した時は、相手のバランスを崩すために体を当てることもある。僕は小柄な選手ですし、すべての場面でボールを奪おうとすると限界があります。だから工夫することが大切です。相手がどの方向から、どのくらいの力で来る、というのが分かれば倒れることはない。バランスを崩してしまうのは、自分の想像とは違うタイミングや力で当たられた時ですから。相手を観察して、しっかりと情報を入れていれば、倒れることはない。たまにイメージとのギャップが大きくて、びっくりすることはありますけど(笑)。

あのシーン、実はヴェラッティの真似だった!?

安部裕葵

――安部選手の名前が広く知られたのは、昨年のセビージャ戦だと思います。ドリブルで3人を抜いた後、最後は冷静にパスを選択して、鈴木優磨選手のゴールをアシストしました。
ああ、あの時も何も考えていなかったですね。GKが前に出てきたからというより、ただパスを出そうと思って。無心でした。

――プレー中の落ち着きはもちろん、足元の技術の高さに驚かされた人は多いと思います。
練習中も試合中もうまく見せることを意識しています。一つのトラップや姿勢で「なんでもできそうだな」、「こいつ怖いな」という感覚を相手に与えられる。相手は細かいところを見ているし、そこから感じるものがあると思うんです。プレーする上で見せ方は大事だと思います。

――海外サッカーをよく見ると聞きました。
僕はインプットの量を増やすことが大事だと思っています。映像で見るだけでも「こういうプレーもあるんだ」とイメージが湧いてきて、自分の選択肢の一つになる。体だけではなく、目からも覚えます。実は、最初に話したペルセポリスとの決勝で相手を止めた場面もそうなんですよ。

――というと?
あのプレーはパリ・サンジェルマンのマルコ・ヴェラッティがやっていたんですよ。それをたまたま試合の前日に見ていて、パッと出てきました。だからヴェラッティのおかげです(笑)。

――それを決勝の大舞台で咄嗟にできる判断力と行動力はすごいです。
いろいろなプレーに挑戦したいんです。失敗と成功を繰り返すことで、自分の選択肢が増えて、視野も広がる。さっきも言ったように、僕はインプットが大事だと思っていて、インプットが多ければ多いほどイメージも膨らんでいく。調子が良い時は、そのイメージと現実がリンクするんです。頭で描いたとおりに試合が進んでいくので、楽しくて仕方ない。逆に調子が悪い時は、イメージと現実が全然違うからうまくいかない。

――安部選手はこういう選手になりたい、という理想像はありますか?
本田(圭佑)選手や(クリスティアーノ)ロナウドのように、人に影響を与える選手になりたい。サッカーの技術云々ではなくて、そこにいるだけで周りの人に影響を与えるような、そんな選手になりたいです。選手としてだけではなく、一人の人間として憧れます。

――12月の大会ではヨーロッパ王者と対戦できるかもしれません。でも、残念ながらC・ロナウドはいませんね。
ロナウドがいなくなっても、レアルはレアルです。前回の対戦の時は高校生だったので、寮で見ていました。ちょうど鹿島への入団が決まった時期だったので、「ここに入るのかあ」と思ったのを覚えています。

――あまり先のことを考えない安部選手でも、レアルと対戦できるかもしれないと考えたらさすがにワクワクするのでは?
いや、ワクワクとか全然ないです(笑)。

――ないんだ(笑)。
もちろん、試合前は戦う気持ちになるので、テンションも上がってきますけど、今はないです(笑)。

――今年はかなり濃いシーズンになりました。
そうですね。代表の活動にも参加させてもらったので、ずっとサッカーをしていた印象です。ケガで少し休んだ時期はありましたけど、試合にたくさん出られて充実していました。連戦は忙しくて大変だったけれど、充実している証だと思う。もっと忙しくしたいですね!

インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力、写真=ナイキジャパン

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