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【土屋雅史氏のJ2展望】熊本・伊東「気持ちも出していきたい」…金沢vs甲府は、金沢に勝ち点3の可能性

2018.08.10

フットサル仕込みのテクニックが売りの、熊本の伊東俊(中央・31番) [写真]=J.LEAGUE

■苦しいシーズンを過ごす熊本で輝くテクニシャン

 リーグ戦第15節の水戸戦で勝利を収めて以来、12試合に渡って白星から見放されている21位の熊本。今節の相手はここ2試合勝ちがなく、6位に後退したものの、昇格プレーオフ圏内をキープしている横浜FC。この一戦では技術の高い選手の揃う熊本の中でも、とりわけ「上手いなあ」と唸らされることの多いテクニシャンにフィーチャーしたいと思います。

 Jリーグでは山形、愛媛、京都でプレーし、今シーズンから完全移籍で熊本へとやってきた伊東俊。もともと北海道出身の彼が幼稚園の頃から所属していたのは、札幌の名門クラブとして知られるSSS。「そこで技術をしっかり身に付けさせてもらいました。北海道なのでフットサルの練習も多かったですし、フットサルはボールが止まらないから跳ねるじゃないですか。そういう所でボールを綺麗に収める技術も、体育館でやっていると身に付くだろうし、そういうのも大きかったと思います」と自身のルーツを語った伊東の確かな技術は、SSSでの日々で培われたようです。

 進学先として選んだ青森山田高校でも1年時から選手権のメンバーに入るなど、小さくない期待をかけられていた伊東が、さらに注目を集めたのが3年時の千葉インターハイ。川邊裕紀、松本怜、ロメロ・フランク、小澤竜己、川西翔太など、のちのJリーガーが居並ぶチームでフォワードを任され、初戦の四日市中央工業高校戦で2得点をマークすると、以降もコンスタントに得点を積み重ね、準決勝の桐蔭学園高校戦、決勝の那覇西高校戦でもゴールを記録。終わってみれば7得点で大会得点王に輝く活躍を披露し、青森山田にとって初の日本一に大きく貢献してみせたのです。

 現在は中盤でのプレーが多いですが、とにかくボールの受け方と、受けてからのアイデアは秀逸。そのことについて尋ねると、「だいたい相手が取れない所というのがあるから、そこにまずボールを置いて、最悪ファウルをもらえればオッケーという感じなので、そこに置いてから相手との駆け引きかなと思います」とのこと。前々節のアウェイ大宮戦でも、伊東にボールが入った時にはチームにアクセントが生まれており、攻撃を活性化させていました。

 また、そのゲームでは熊本加入後の初ゴールも。「(中山)雄登からもらおうとしたんですけど、雄登がミナ(皆川祐介)を選んだので、そのままの流れで走ったら、ミナは周りを使うのが上手いから良いボールを出してくれて。あそこまで狙った訳ではないですけど、『ボールを浮かさないで枠には入れよう』と思っていました」という一撃は、中山、皆川、伊東のイメージがシンクロした、まさにファインゴールでした。

ボールの受け方と、受けてからのアイデアが秀逸。伊東はチームにアクセントを加えられる貴重な存在だ [写真]=J.LEAGUE

 ただ、圧倒的にゲームを支配した前半から一転、後半は相手にリズムを明け渡し、結果は無念の逆転負け。「失点がここまで続くと、失点するんじゃないかという想いがチーム全体にあるのかなと。点を取った時にどっしりと構えて、試合巧者のようなゲーム運びをできるようにみんなで意識して、戦い方を練っていかないとという感じですね」と伊東もハッキリとした課題を口にしています。

 今年の10月で31歳。2010年に山形でスタートさせたプロ生活も9シーズン目。年齢的にもリーダーシップを発揮する部分も求められる所ですが、「去年京都で闘莉王さんとやったので、あれだけうるさい人がいると心強いなというのがありますし(笑)、ああいう鼓舞するようなことも必要だなと。自分ももっと影響力を出さないといけないですよね。気持ちも出していきたいですし、いろいろやらなきゃいけないとは思います」と本人も自覚を口に。決して雄弁なタイプではないものの、プレーで牽引する背中も含めて、伊東のさらなる活躍に期待したい所です。

 このゲームに9試合ぶりのえがお健康スタジアムでの勝利を期す熊本。横浜FCの強力アタッカー陣を抑え込めるか否かが勝負の分かれ目として挙げられますが、今の調子を考えると、やはりややアウェイチーム有利の感が。ここは横浜FC勝利の「2」にマークしたいと考えています。

■金沢を全国規模のリーグへと押し上げた、現・甲府の指揮官

 前節のアウェイ熊本戦で4試合ぶりの白星を手に入れた13位の金沢と、千葉、松本、福岡に3連敗を喫し、順位を14位まで落とした甲府が、石川西部で激突する第28節。このゲームでは、かつて率いた古巣と対峙することになるアウェイチームの監督をご紹介します。

 今シーズン途中の4月から甲府の指揮官に就任した上野展裕監督。全日空やマツダ、そして広島でプレーした後、現役を引退した1995年以降はそのまま広島で指導者の道へと進み、ユースでは小林伸二監督の元で、トップチームではエディ・トムソン監督の元でコーチを務め、2002年からはジュニアユースの監督に。当時のチームには森重真人、槙野智章、平繁龍一、横竹翔、兼田亜季重らが在籍しており、フォワードだった森重と槙野をそれぞれ中盤とディフェンダーにコンバートしたのも上野監督だったそうです。

 2005年には京都へ籍を移し、育成統括ディレクターやトップチームのコーチを務めると、2009年に届いたのは新たな挑戦のオファー。当時は北信越リーグに所属していた金沢からの誘いに応じる格好で、最終的にJリーグ昇格を見据える社会人チームの監督へとトライすることになりました。

 ゴールキーパーに木寺浩一、左サイドバックに根本裕一、中盤にビジュや三原雅俊、前線に古部健太など、Jリーグでの経験も豊富な実力者を有したチームは、その2009年の全社で羽中田昌監督が指揮を執っていた讃岐やtonan前橋などを破って決勝へと進出し、最後は同じ北信越のライバルだった松本に敗れたものの、年末の地域決勝への出場権を獲得。その地域決勝でも3位に入ると、FC刈谷との入れ替え戦も制して、1年でチームをJFLへと導いてみせます。

 また、JFL初参戦となった2010年のメンバーは、広島のコーチ時代に指導していた日本代表経験者の久保竜彦や山根巌に加え、日本国籍を取得する前のマイケル・ジェームズ、その後にラトビアやポーランドでプレーすることになる赤星貴文、今も奈良クラブで現役を続ける曽我部慶太など、かなり豪華な顔ぶれ。この年の5月に取材した秋津でのジェフリザーブズ戦では、久保の2得点で金沢が快勝しましたが、試合後にお話を伺った上野監督はとにかく腰の低い方で、「ウチには久保もいるので、また試合を見にいらっしゃってくださいね」とおっしゃっていただいたことをハッキリと記憶しています。

 結果としてクラブのJリーグ準加盟申請もなかなか通らず、上野監督は2011年シーズンをもって退任することに。その後継となった森下仁之監督に率いられたチームは、2014年に悲願のJリーグ加盟を果たすことになりますが、“地獄の北信越”とも言われた地域リーグを抜け出し、全国規模のリーグへとクラブを押し上げた上野監督の功績が、金沢にとっても非常に大きなものだったことは、改めて言うまでもありません。

J2で戦う金沢の礎を築いた上野展裕監督。今節は甲府の指揮官として、金沢と相対する [写真]=J.LEAGUE

 2014年に山口の監督を託された上野監督と金沢の再会は、同じカテゴリーで戦うことになった2016年シーズンのJ2第12節。山口ホームの維新公園で戦った90分間は、0-1でアウェイチームが意地の勝利。また、石川西部に乗り込んだ第35節も、再び1-0でホームの金沢が山口を返り討ちに。さらに、今シーズンのJ2第18節では、中銀スタで金沢が1-3と甲府相手に快勝を収めており、上野監督にとって金沢との対戦は3戦3敗という数字が残っています。

 7年前に指揮を執っていたチームとはいえ、苦しい時期をともにした“戦友”への想いは、上野監督にとっても決して小さくないはず。石川西部という舞台も考えれば、上野監督の意地にも期待したい所ですが、過去の相性と今のチーム状況を鑑みて、ここはホームの金沢が勝ち点3を獲得すると予想。「1」で勝負します!

文=土屋雅史

予想難易度が高いとされるJ2は、toto当せんのカギを握る重要な要素の一つ。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ2を徹底解剖する! 『今週のJ2(http://www.totoone.jp/j2/)』はサッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/)』にて好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J2リーグ第28節
2018年8月11日(土)19時キックオフ
ロアッソ熊本vs横浜FC(えがお健康スタジアム)

■明治安田生命J2リーグ第28節
2018年8月11日(土)19時キックオフ
ツエーゲン金沢vs甲府(石川県西部緑地公園陸上競技場)

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