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【ライターコラムfrom仙台】仙台の水に馴染んだ阿部拓馬…「力強さ」を武器にゴールをこじ開ける

2018.07.14

力強いドリブルを披露する阿部 [写真]=Getty Images

 “アベタク”こと、FW阿部拓馬のプレーはいつも、力強い。

 ボールを持って前を向けば果敢にドリブルをしかけ、阻もうとする相手を押しのけるようにボールを運ぶ。ボールを持っていないときも、味方からのパスを待つのではなく、互いの位置関係を把握してパスコースを作れる場所に素早く立ち位置をとる。相手が守備ブロックを設営しようものなら、ガリガリとスペースを削り取るようなランニングで割って入り、後続の味方が侵入する道を切り開く。


「自分の特徴は、ゴールにからむところや、気持ちの面で一生懸命やるところ」。今季からベガルタ仙台に加わった阿部は、1月の新加入会見の場でサポーターに自らの長所を説明。開幕戦から先発出場を果たし、宣言通りに戦う気持ちを前面に押し出したプレーで最前線を駆け回った。相手DFと真正面からぶつかっても、逆に相手DFを背負っても味方とのコンビネーションで決定機を作る。ただし、なかなかその貢献は数字に表れにくい。

 それだけに、明治安田生命J1リーグ第4節・清水エスパルス戦で移籍後初ゴールを決めたときは、「毎試合(点を)取るつもりでのぞんでいたので、『やっと1点を取れた』という感じ」と、数字に残る結果にホッとした様子だった。

 ここで勢いに乗りたいところだったが、阿部は第6節・浦和レッズ戦で左ハムストリングスの肉離れに見舞われ、長期離脱を余儀なくされた。この頃は、リーグ戦とカップ戦が短い間隔で続く“15連戦”の真っ最中。チームにとっても痛手だったが、阿部本人の悔しさも相当なものだった。

「自分としては、2週間で戻ってくるつもりでした。見ていることしかできなかったので、早く戻りたくて……」

 チームが一時期調子を落とした頃もあれば、そこから復調したころもあった。もどかしさを押さえつつ、メディカルスタッフと話し合いながら、復帰に備えてきた。

 そして阿部は“15連戦”の最後、第15節・鹿島アントラーズ戦で戻ってきた。直接ゴールにはからまなかったものの、前線からの鋭いプレッシングを見せたり、サイドからのドリブルで日本代表の昌子源や植田直通といった名センターバックを苦しめたりと活躍し、2-1の勝利に貢献した。「チームが早々に点を取れて勝てたのは良かったけれど、個人としてはまだボールが足につかないなど、まだまだ」と、さらに調子を上げることを誓った。

 6月2日と9日にはJリーグYBCルヴァンカップのプレーオフステージ・湘南ベルマーレ戦でも先発出場し、石原直樹との2トップを縦関係のポジションに変化させて相手のスペースを突いたこともあれば、3-4-2-1のシャドーの位置から相手ゴール前に飛び出したこともあった。力強さはそのままに、負傷前よりも連係面で脅威を見せ、阿部は仙台のスタイルの中で凄みを見せている。

 W杯による中断期間に、チームは熊本キャンプで暑さ対策に取り組み、厳しいコンディションを戦い抜く体力と、その状況下でもプレー精度を向上させることを目指した。練習試合でゴールするなど調子を上げた阿部は「プレシーズンマッチを終えて開幕戦に行くような感覚。再開が楽しみです。磨いてきた仙台のサッカーを暑い中でも発揮できる手応えがありますから」と、充実した表情で再開後のゲームにのぞむ。

 7月11日の天皇杯3回戦・大宮アルディージャ戦では、1トップの位置に入り、相手DFを押しのけながら蜂須賀孝治のカットインを引き出したり、ワンタッチで相手最終ラインの裏にボールを送りこんだりと、効果的な動きを見せた。「コンビネーションが良くなっているのは間違いない。それだけに、もっと点に結びつけたかった。(相手ゴール前の)最後の三分の一のところでのイメージ共有を、さらに進めたい」と、阿部は試合を振り返った。背番号20の力強いプレーは、これからも仙台の攻撃に勢いを加える。

文=板垣晴朗

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