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【土屋雅史氏のJ3展望】3位と好調の沼津が敵地で長野を下すと見る…11試合未勝利の鳥取は久々の勝利を予期

2017.11.10

好調を維持する沼津でゴールを量産しているFW薗田卓馬 [写真]=J.LEAGUE

■高い得点力でチームを牽引する、沼津のエースFW

 15勝9分4敗の3位。いわゆる“台風の目”という表現では収まりきらない実力を披露し、クラブ初挑戦となるJ3を大いに盛り上げている沼津。とりわけリーグトップの58得点という圧倒的な攻撃力を誇るアタッカー陣の中で、J3得点ランキング2位となる18得点を挙げている薗田卓馬の存在は語り落とせません。


ここまでJ3得点ランキング2位となる18得点を記録。薗田(左)はリーグトップの得点数を誇る沼津のなかでも抜きん出た存在だ [写真]=J.LEAGUE

 鹿児島育英館中学から鹿児島城西高校へというルートは、郷里の先輩に当たる大迫勇也とまったく同じ経歴。高校2年時の沖縄インターハイでは、初戦の市立浦和戦で1得点をマークするも、チームは2回戦で伊東幸敏や長谷川竜也を擁する静岡学園の前に敗退。3年時には大迫と同じ9番を背負い、選手権で全国の舞台に帰ってきますが、初戦で新潟西にPK戦で敗れ涙を飲むなど、際立った実績は残せないまま、福岡大学へと進学することになります。

 そんな薗田は2年時と3年時にデンソーカップの九州選抜に選出され、チームでは1学年上の山﨑凌吾のパートナーとして前線でプレーしていたものの、ゴール数はそれほど多くなかったなかで、一気にブレイクしたのは18得点を叩き出し、リーグ優勝に貢献した4年時。その得点感覚が評価され、2016年にはJ3昇格を目指す沼津に白石智之、徳武正之とともに大卒ルーキーとして加入すると開幕スタメンを勝ち取り、コンスタントにゴールを量産。結果的にチームトップの12得点を記録し、昇格を果たしたチームのメインキャストとして、自身初となるJリーグの舞台へ乗り込むことになりました。

 そして2017年シーズン。第3節の藤枝戦で早くも初ゴールを奪った薗田は、ここまでリーグ2位の18得点という大活躍で、チームの好調を最前線から牽引しています。第8節の琉球戦で見せたような裏への飛び出しが本来の特徴だったと思いますが、今シーズンの大半のゴールはペナルティエリア内でのワンタッチが多く、サイドからのボールへ巧みにマークを外して、フリーで合わせるパターンを確立。ゴール前にこぼれたボールへの反応も抜群に速く、献身的な守備への姿勢も含めて、J3屈指のストライカーと言っても過言ではないでしょう。

 ここまで11チームからゴールを強奪してきた薗田にとって、今節対戦する7位長野との前半戦はノーゴールに終わっており、“12チーム目”が実現するかどうかにも注目したい一戦。現状の両者のパフォーマンスを考えると、やはり勢いは沼津が上。アウェイ勝利の「2」にマークしたいと考えています。

■現役ラストシーズンを駆け抜ける、鳥取DF片岡洋介

 4勝7分17敗と黒星が大きく先行。1ヶ月の中断を挟んだ8月以降は11試合未勝利で、とうとう最下位に転落してしまった鳥取。今節はホームに9位の北九州を迎えることになりますが、このゲームで注目したいのは、既に今シーズン限りでの現役引退を発表している鳥取の片岡洋介です。

鳥取DF片岡は今シーズン終了後にスパイクを脱ぐ決断を下した。J3最下位に沈むチームで最後の輝きを放てるか [写真]=PARCEIRO

 1学年上に島田裕介、1学年下に南祐三と、のちのJリーガーともプレーしていた西武台高校時代を経て、進学した国士舘大学では関東大学リーグとJFLの両方を経験し、2005年に大卒ルーキーとしてJ1へと昇格したばかりの大宮へ加入した片岡。第4節という比較的早い段階で、途中出場でのリーグ戦デビューを果たすことになりますが、その試合のメンバー表を見てみると、トニーニョやデイビッドソン純マーカス、荒谷弘樹といったJ2時代の大宮を支えたレジェンドの名前も。言わばクラブと同じタイミングで、J1でのキャリアをスタートさせることになります。

 ルーキーイヤーにヤマザキナビスコ杯と天皇杯ではゴールを挙げていたものの、リーグ戦での初ゴールをマークしたのは、プロ2年目の2006年8月12日。長居スタジアムで行われたJ1第17節のC大阪戦で、1-0と勝利したゲームの決勝ゴールを82分に記録。この年は1シーズンを通じて中盤のレギュラーとして活躍し、キャリアを通じて唯一リーグ戦での複数ゴールを記録したシーズンに。2007年にはそれまでのDF登録もMF登録へと変更され、背番号も一桁の6番に。生え抜き選手として、年々クラブの中での存在感を高めていきます。

 センターバック起用の多かった2009年を経て、翌2010年には中盤アンカーを探していた京都へと完全移籍を果たし、開幕スタメンを勝ち取ったものの、中盤戦以降は出場機会を失い、チームもJ2降格。結果的に1年で再び大宮へと帰還することになり、以降は一貫してDF登録に。ただ、センターバックには菊地光将や河本裕之、高橋祥平といった実力者が居並ぶ中で、年々スタメン出場する機会は減少し、2014年にはクラブ初のJ2降格も経験。1年でのJ1復帰を義務付けられた2015年シーズンは、ベンチ入りの機会も限られていた前半戦から一転、後半戦は一気にプレー時間を伸ばし、唯一の目標を達成しますが、シーズン終了後に鳥取への完全移籍を決断。10年間を過ごした大宮に別れを告げ、山陰の地でリスタートを切ることになりました。

 迎えた2016年シーズン。大学時代に指導を受けた柱谷哲二監督の下、キャプテンに指名された片岡。センターバックとボランチを併用される中で、チームの調子はなかなか上向かず、結果は16チーム中15位という厳しいものに。森岡隆三新監督が登板した今シーズンも、ほとんど出番の訪れない日々が続き、チームは低迷。ただ、10月12日に現役引退を発表してからは、4試合続けて本職だったボランチでスタメン出場。「残り1ヶ月半、悔いなくやり切るので引き続き応援よろしくお願いします! 」というクラブ公式サイトで発表されたメッセージを体現するような奮闘を続けています。

 前述したように11試合未勝利の最下位と苦境に立たされている鳥取ですが、僅差で勝ち点を落としているゲームも少なくありません。先週末のゲームで首位の栃木を下している北九州が、勢いを持ってとりスタに乗り込んでくることは間違いのない所ですが、ここは片岡の活躍を願いつつ、鳥取がホームで久々の勝利を掴み取る「1」で勝負したいと思います。

文=土屋雅史

J3は当せんの行方を左右する重要な要素。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ3攻略のカギを語る! サッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/top/)』にて、『今週のJ3(http://www.totoone.jp/j3/)』が好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第31節
2017年11月12日(日)13時キックオフ
AC長野パルセイロvsアスルクラロ沼津(長野Uスタジアム)

■明治安田生命J3リーグ第31節
2017年11月12日(日)13時キックオフ
ガイナーレ鳥取vsギラヴァンツ北九州(とりぎんバードスタジアム)

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