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【コラム】獅子奮迅の活躍を披露したMF大島僚太…確かな進化を見せつけ、いざ日の丸へ

2017.09.11

川崎で存在感を増す大島 (右)[写真]=清原茂樹

 168センチ、64キロの背番号10は圧倒的な存在感を放っていた。

 川崎フロンターレ、MF大島僚太のことだ。


 9日の明治安田生命J1リーグ、横浜F・マリノス戦。物静かな24歳が3-0の圧勝を支えた。

 立ち上がり、ボランチの位置からぐいぐい畳みかける。9分、センターライン付近でこぼれ球を拾ってドリブル突破。MF中村憲剛とのパス交換でためをつくり、裏へ抜けたエウシーニョにつないで決定機を導いた。14分には左から攻略した後、相手の中途半端なクリアを見逃さない。ペナルティーエリア左に飛び出し、浮き球の落ち際を右足でとらえた。

 ゴール右隅を射抜く先制点。難度の高い技術も、大島に言わせれば「(クリアからシュートまで)時間があったので落ち着いて蹴れた」。堅守の横浜FMにとって6試合ぶりの失点は、自身にとって今季初得点。「周りから『そろそろだぞ』と言われていたので、ほっとした」とはにかんだ。

 しかし、驚きはゴールのみにとどまらなかった。圧巻は後半の守りだ。主導権を手放すまいと相手の逆襲に神経を研ぎ澄ませ、力強いボール奪取を重ねる。

 53分、左をドリブルするMF斎藤学へとかぶり気味に寄せ、内への切り返しを誘って刈り取った。65分には敵陣から長駆、自陣ゴール前に戻り、ポルトガル人FWウーゴ・ヴィエイラの体とボールの間に右足をねじ込んだ。74分、天野純に集まるパスを狙い澄まして当たり勝った。

「ほとんど、相手のボールコントロールミスだから」と謙遜しつつ「スタッフのスカウティングで、相手の特長がカウンターなのはわかっていた。少しでも最終ラインの負担を減らそうと、守備時に戻る意識をチーム全員で持てた」。自分だけではない、みんなで守れた結果の無失点なのだと強調した。

 そんな姿に思う。この人、チームの成長と軌を一に自らの強みを増やしている。

 独特なパスワークにこだわった風間八宏前監督時代。相手の逆を取る動きをたたき込まれ、小柄な技巧派は才を磨いた。鬼木達監督が就任した今季は素早い攻守の切り替えが重視される。献身と一手先を読む力を守備にも生かし、また一皮むけた。

「アイツの守備はすごいから。どんどんどんどん、すごくなっていく。もう、いい年齢ですしね。やってくれないと困る。10番だから」。12歳上の中村の弁だ。話は問わず語りに日本代表へと及んだ。「もっと得点に絡めれば、日本でもトップの中盤。怖さが出てくれば、ね。そうなれば、いますぐにでも普通に代表でやれる」

 思い起こせば1年前。ワールドカップアジア最終予選の初戦、アラブ首長国連邦戦で大島は初出場、初先発に抜擢された。飛躍の絶好機を迎えたはずだった。が、関係者によれば、前日から緊張が周りに伝わるほど不安を隠せなかったという。案の定、相手を倒して決勝PKを献上。日本は敗れた。

 あれから日の丸は遠ざかる。日本は、大島と同じ年代の台頭でロシア行きの切符をつかんだ。

 いまなら、やれる。オレはここにいる。

 そんな叫びが小さな背中から聞こえてくるような、この夜の存在感だった。

文=中川文如

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