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【ライターコラムfrom柏】“アジアの大砲”直伝! 定位置確保に燃える武富孝介が手にした新たな武器

2017.08.16

中盤での激しいポジション争いに挑んでいる武富孝介 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 前節の清水エスパルス戦、柏レイソルはディエゴ・オリヴェイラとキム・ボギョンの2人が出場停止だった。彼らに代わる選手として、中川寛斗、大津祐樹という選択肢があった中で、下平隆宏監督は武富孝介をトップ下に起用。その理由を、試合後にこう語った。

「右サイドバックの小池龍太、左サイドバックのユン・ソギョンからクロスが上がると思っていたので、上背はないがヘディングの強い武富を置いた」


 身長173センチと大柄ではないものの、武富は空中戦に強い。今季、ここまで叩き出した6得点のうち、5点はヘディングによるものだ。昨季までの武富は、トップ下やサイドで攻撃の起点を作り、どちらかといえば味方の得点をお膳立てするタイプ。ただ今季、ハモン・ロペスの加入によって前線の層が厚くなり、その熾烈なポジション争いに勝つためにも“得点”という結果を強く意識した武富は、キャンプから通じて、毎日練習後には居残りでクロスに合わせる練習を続けていた。その成果が結果に表れていると言っていいだろう。

 清水戦での下平監督の選手選考は見事に的中した。武富は指揮官の期待に応え、66分に小池のクロスを頭で合わせてネットを揺らした。マークについていたカヌの前に入って合わせた完璧なヘディングによる一撃だった。

打点の高いヘディングを叩き込む [写真]=JL/Getty Images for DAZN

「クロスに対して、いつもDFの前に入ることを意識しているんですが、カヌ選手が止まって見るタイプだったので前に入りやすかったですし、その他の場面でも何本か前には入れていたと思います。それに、あの場面では左右で揺さぶったのでマークがずれていました。俺の前にいたクリス(クリスティアーノ)が潰れて、俺に入ってきましたが、リュウ(小池)もダイレクトでクロスを入れる練習をしているので、タイミングも分かりやすかったです」

 そして、日々の練習の成果に加え、今季のヘディングによるゴール量産に大きく影響していると武富が話すのが、2011年と12年にかけて期限付き移籍に出ていたロアッソ熊本時代の経験である。武富は、当時の熊本を率いていた高木琢也監督から、ゴール前の細かい動きを指導された。その指導の甲斐もあって、12年にはJ2で14得点を挙げるのだが、5年を経過した今、“アジアの大砲”から伝授された空中戦やヘディングのコツが糧となり、武富の大きなストロングポイントになろうとしている。

2011年から12年まで期限付き移籍で熊本に在籍 [写真]=J.LEAGUE

「クロスの合わせ方、ジャンプの仕方、タイミングの取り方は、初めて知ることも多かったですし、高木さんから教えてもらったことは今に生きていると思います。駆け引きをして、相手の前に入っていくのはパワーが必要ですが、そこでパワーを出せるようになっています」

 これまで、柏の攻撃は伊東純也と小池の右サイドに偏る傾向が強かった。だが、開幕当初のケガで出遅れていたユン・ソギョンとハモン・ロペスが、ここにきてコンディションを上げ、定位置獲得に名乗りを挙げている。柏の選手たちによれば「2人ともに左利きなので、左足キックの精度は高い」とのこと。右サイドからだけでなく、左からもクロスの本数が増えていけば、迫力を持ってゴール前へ入っていける武富の得点数は自ずと増えていくだろう。

 キム・ボギョンの加入で加熱する前線のポジション争い。清水戦で結果を残した武富も、そう簡単にポジションを譲らない。

文=鈴木潤

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