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【ライターコラムfrom川崎】チームの勝敗を背負い始めた小林悠…悩める主将に鬼木監督がかけた言葉とは

2017.06.28

G大阪戦で決定機を逃したことを悔やんだ [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

「最後の決定機を決められたら、良い試合だったなと言えるのですけど。そこが悔やまれますね」

 ドローで終わった明治安田生命J1リーグ第16節ガンバ大阪戦を振り返って、そう悔しさを噛みしめていたのは小林悠だ。


 彼が言う「最後の決定機」というのは、86分の場面のことである。1-1で迎えた試合終盤、サイドを駆け上がっていたエウシーニョが、マイナス方向への折り返しを中央に配給。エウシーニョからの「決めてください」というメッセージ付きの絶妙なクロスボールで、これがゴール前に走り込んでいた小林悠への絶好の決定機となった。

 しかし小林が右足で当てたシュートの弾道は、ゴール左に外れてしまう。あの場面のプレーについて、本人はこう振り返る。

「コースが見えて流し込もうと思った。ちょっとスリッピーで、(タックルに来ていた)相手よりも先に触らなくちゃというのもあって、チョンと打つつもりがうまくミートできなくて……。もう少し、うまく当てれれば良かった」

今季は中村憲剛から主将を引き継いだ [写真]=Getty Images for DAZN

 小林悠は、現在リーグ戦4得点。チーム自体の成績は悪いわけではなく、彼自信はアシスト6を記録するなどゴール以外でもしっかりと仕事をしている。だが本人のゴールに限って言えば、第10節のアルビレックス新潟戦以降、生まれていない。それだけに、試合終盤のあの決定機を逃した自分自身に納得がいってない様子だった。

「この試合に関しては、自分に責任があると思っています。最後の方は真ん中で、そこで点を取りたかった」

 今季からチームのキャプテンを務め、さらにエースストライカーとしての自覚を持ち、小林が強い気持ちでプレーしているのは誰もが認めるところだ。しかし、勝敗に関して一人で背負いすぎる必要もないだろう。例えば、あの場面で絶好のお膳立てをしたエウシーニョに聞くと、彼はこんな風に気遣っている。

サイドから好機を演出したエウシーニョ [写真]=Getty Images for DAZN

「あの場面はユウだけではなく、みんなが残念に思いました。彼があのシュートを決めて勝利したかったという気持ちは分かります。でも彼だけのミスではなく、他の試合では誰かがミスするかもしれない。やはり試合はみんなで戦っている。勝つ時はフロンターレの勝利だし、チームが負けるときはみんなの責任でもある。次のゲームでみんなが生かすことができたらいいと思います」

 小林がチームのことを背負い過ぎていることを察したのは、チームメートだけではないのだろう。指揮官である鬼木達監督から、こんな言葉をかけられたと小林が明かしてくれた。

今季から川崎を率いる鬼木達監督 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

「オニさん(鬼木監督)とも話しましたが、『お前が1本のシュートで責任を背負いこむ必要はない。責任を背負いこんでプラスになればいいけど、すぐに試合はやってくるんだから。1本のミスを背負いこむ必要はない』と言われました」

 よく言われているように、ストライカーというのは、決定的なシュートを9本外しても、1本を決めることができたらヒーローになれるポジションだ。そう考えると、失敗体験をあまり引きずらずに都合よく忘れてしまう切り替えも、重要な素質なのかもしれない。

「そうですよね。切り替えが大事だと思います」

そう話す小林の表情は明るかった。週末のヴィッセル神戸戦でのゴールに期待である。

文=いしかわごう

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