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【ライターコラムfrom仙台】“夢、叶わずとも” パブロ・ジオゴ「来て良かった」と言葉残し、杜の都を後に

2017.06.02

5月いっぱいで仙台を退団したパブロ・ジオゴ ©J.LEAGUE PHOTOS

 2017年5月28日のこと。ユアテックスタジアム仙台で行われた明治安田生命J1リーグ第13節のベガルタ仙台vsアルビレックス新潟で、ホームの仙台が試合終盤にクリスランの2ゴールによって逆転勝ちをおさめた。仙台サポーターが大いに沸いたその試合が終わった後に、試合に出なかったとある選手が報道陣の前に姿を現した。

 Jリーグ選手登録名はパブロ・ジオゴ。2016年7月6日にブラジルのアトレチコ・ミネイロから期限付き移籍によって加わったMFだが、この5月28日をもって契約期間が満了することが発表された。翌29日にはすぐ仙台を離れるということで、急遽お別れの挨拶をすることとなった。サイン入りユニフォームと仙台公式グッズのタオルマフラーを身につけ、パブロ・ジオゴは言葉を残した。


「日本に来られて非常に嬉しく思いますし、いろいろな経験ができて、学ぶことができて、本当に来て良かったと思います。仙台ではないかもしれませんが、日本に戻りたい気持ちは強いので、またどこかで会いましょう」

 サイドアタッカーを求めていた昨夏の仙台は、このパブロ・ジオゴを獲得。軽やかなステップでドリブルを繰り出し、ブラジル時代のチームメートであるロビーニョ(元ブラジル代表)から学んだ遊び心あるフェイントも加えて相手を抜く。攻撃の切り札として期待がかかった選手だったが、なかなかフィットできずこの1年間でJ1の6試合の出場にとどまった。

パブロ・ジオゴ

©J.LEAGUE PHOTOS

 昨季の2ndステージ第16節・名古屋グランパス戦のように、鋭いクロスから相手のオウンゴールを誘発したことはあったが、味方のアシストやゴールを記録することはできなかった。また、調子を上げてきたときにケガをして好機を逸したこともあった。昨季の8月も終わる頃に練習で猛烈な突破からゴールを決め、9月2日の天皇杯2回戦・グルージャ盛岡戦で先発出場に近づいたが、この試合を前に負傷して出場は叶わなかった。この試合は誰が出てもどうしようもなかったような敗戦ではあったが、パブロ・ジオゴがここで浮上のきっかけをつかんでいたら……という“if”は残る。

 システムが変わった今季も、キャンプ中の負傷で出遅れたほか、なかなか自分を生かせるポジションが見つけられなかった。4月24日に話を聞いたときは、「フィジカル面では大丈夫だけれど、戦術のフィットでは、相手を背負ったプレーなどに慣れないと……どこで出るにしても、自分のスピードを生かしてチームに貢献できるようにならなければ」と苦しい胸の内を明かした。

 この一年間、プロのフットボーラーとしてのパブロ・ジオゴにとっても、所属チームの仙台にとっても、満足いく結果は得られなかった。したがって、ここでチームを離れることはプロの世界では当然のことである。しかし、プレー以外で、彼がこのクラブ、この街に残した足跡は、残るものだ。

パブロ・ジオゴ

©J.LEAGUE PHOTOS

 明るい性格で、チームメートの応援歌をすぐに覚えて歌い出す。仲間とともに謎の応援歌を合唱しながらクラブハウスに引き上げてきたこともある。「活躍して、自分の応援歌をサポーターに作ってもらえるようになりたい」という夢は叶わなかったけれど、どこかでまたその軽快なプレーを披露してくれることだろう。

「そんなにプレーする機会は正直なかったのですが、ここ(ユアテックスタジアム仙台)でやれたことはすごく良かったですし、仙台市の皆さん、スタッフの皆さん、選手の皆さんに本当に良くしてもらえました。本当に、来て良かった」

 Jクラブには様々な人々が出入りする。その一人、仙台の選手として記録されたパブロ・ジオゴが、これから先の人生でも仙台で過ごした日々の思い出を大切にしてくれることを願いたい。

文=板垣晴朗

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