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【ライターコラムfrom千葉】北爪健吾、深まる自信と終わりのない向上心…目標とするのはあの“隊長”

2017.05.04

2015年に入団した北爪は3年目の今季、開幕から10試合連続フル出場を果たした [写真]=Getty Images

 長いリーグ戦も11節が終了し、ジェフユナイテッド市原・千葉は勝点16(4勝4分3敗)を積み上げ11位に位置している。

 首位との勝点差は「7」。ここを抜け出すためには連勝街道を走ること、そしてジェフ千葉が目指すスタイルの確立が最重要ポイントになることは間違いない。


 その中、フィールドプレイヤーとして唯一、開幕から10試合連続フルタイム出場をしていたのがDF北爪健吾だ。

 加入3年目となる背番号4番は、専修大学時代には、関東大学サッカーリーグ4連覇の中心選手で全日本大学選抜に選ばれるなど、大学NO.1サイドバックの進路に注目が集まっていたが、チームからの熱心な誘いとJ1昇格のために役立ちたいという強い思いを抱きジェフ千葉に加入した。

 入団初年度は先発で4試合、2年目は先発で6試合に出場。頭角を表した今シーズンは既に過去2年の出場記録を更新しており、怪我や出場停止などの影響がなければさらに伸びて行くだろう。

「常に危機感を持ってプレーをしている。目の前の試合で結果を出すことだけを考えてプレーしていることが良い状態につながっている。そして自分のプレーに自信がついきていて手応えもある。スタメンをもっと揺るぎないものにしたい」

 フアン・エスナイデル新監督は、3バックと4バックを併用するチーム作りをしており、北爪は持ち前の推進力を武器に“3枚時には右ウイングバック”として、“4枚時には右サイドバック”として起用され続けている。推進力とハードワークを90分間、貫くチームにとっては欠かすことの出来ないピースになっているのだ。

 入団当初から北爪を見守ってきた菅原大介コーチは「もちろん課題も多いが(笑)、健吾の良さは攻撃力。スピードに乗って敵陣を突破して相手の背後を取れる」と話すと「その中でもメンタルの成長が一番大きい。今のアイツは自信がみなぎっている。継続して使われることでさらに自信がプラスとして働いている」とその成長に目を細める。

右サイドでシステムに応じてウイングとサイドバックで起用されている北爪 [写真]=Getty Images

 開幕戦となったFC町田ゼルビア戦では、右ウイングバックで先発すると40分に決勝点となるMF町田也真人へのゴールをアシスト。第7節ザスパクサツ群馬戦では、67分に中央右を突破しMF高橋壱晟にラストパスを送り同点ゴールを演出した。プレーのディテールを紐解くとそこに北爪の進化が見え隠れしていた。

 北爪は活躍の理由を問われて、こう返した。

「特に開幕戦で数字を残せたことは大きい。どの試合でも手応えと成長を感じていて、プロになって初めて自分自身に期待しているシーズン。最低でも10アシストの結果は残したい。応援をしてくれる人のためにも、選手としてのこれからを見せられるようにもっと頑張るだけ」

 そして、チームメイトで大学時代からの先輩でもある町田は「(10アシストは)このままだったら行ける、町田戦のパスも今までだったら慌てて無理だったかもしれないが、自信もついている。僕は信頼をしているし、健吾に負けないようにプレーしたいし(成長の階段を)一緒に昇って行きたい」と語る表情には、後輩への信頼が滲み出ていた。

 まだ粗削りな部分もあるが、地道に鍛練を重ねて深めた自信と、終わりのない向上心がプレーへの種火となり、新たな自分を作り上げてきた。

 ポジションは待っていて与えられるものではない。指揮官に“使いたい”と思わせるインパクトとプレーを身に付けたが、なおも北爪は「ピッチにはもっと上手くなれるチャンスが転がっている」と全力疾走を止めようとはしない。

 自身のことを語る時、北爪の口調はいつも控えめだ。だが、その心中からは揺るぎない信念を感じる。

「チームの中心選手になりたい」

 自信と覚悟が彼をさらに成長させる。

北爪は理想の選手像に現役時代“隊長”と呼ばれファンに親しまれた坂本將貴(現U-15監督)の名前を挙げた [写真]=Getty Images

 北爪には憧れであると同時に理想とする選手像がある。

 それは、坂本將貴(現:U-15監督)だ。リーグ通算327試合に出場し、ジェフ千葉サポーターの間では“隊長”と呼ばれ、チームの精神的支柱でもあった選手だ。

「目標としているのが坂本さん。自分が練習生でここにきた時に同じポジションだったので目に入った。坂本さんのように長く現役生活を続けて、1つのプレーでサポーターを熱くさせられるような、感動を与えられるような選手になりたい」

 責任あるプレーを自身に求め、試合に出場する立場だからこそ、ピッチに立てない仲間の思いと、熱い声援で背中を押してくれるサポーターと共に昇格を目指し戦って行く。

「チームのために、自分のアシストやゴールで勝点3を取る。『北爪がいたからこそ勝った』と言われるようになりたい」と、目標とする輪郭は太くなったが、彼の心はまだ満たされない。

 スタジアムには、目の前の壁を乗り越え、全力疾走を繰り返す背番号4番・北爪健吾がいる。

文=石田達也

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