33歳のアンドレ・バイアはDF陣の中心として今季J2全試合に出場している [写真]=©J.LEAGUE PHOTOS
前節の東京ヴェルディ戦、U-20日本代表の神谷優太をはじめ、湘南ユース出身の石原広教に同い年の杉岡大暉と、10代の3選手が湘南ベルマーレのスタメンに並び、同じく18歳で生え抜きの齊藤未月も神谷からバトンを受けて後半途中からプレーした。「10代の選手を3人同時にピッチに立たせたのは初めてではないか」と、曹貴裁(チョウ・キジェ)監督も自身の采を振り返ったように、クラブの未来を踏まえたうえでも彼らの躍動は意義深い。
かたや、その背景にあるベテランの存在も見過ごせない。チームを文字通り後ろで支えたのは、この日のピッチ上の最年長で3バックの中央を担うDFアンドレ・バイアである。
「そういった若い選手が出てきたことは私もすごくうれしい」アンドレ・バイアは父のようなまなざしを傾けて喜びを口にする。
「とくにヒロ(石原)にとっては初めてのリーグ戦。彼のデビュー戦に一緒に出られたことは自分としてもうれしいし、勝つこともできた。彼のいいところもプレーに出たと思うし、これからさらに伸びていくと思う」
果たして湘南はこの日3-2で勝負を制した。若手の活躍はもちろん、0-3で敗れた前々節のカマタマーレ讃岐戦を思えば、逆転勝利という内容と結果もまたチームにとって大きい。
アンドレ・バイアは言う。
「讃岐戦では自分たちの持てる力をまったく出せなかった。でも、あの試合からチームとしても個人としても皆学び、ヴェルディ戦に臨んで結果を手にすることができた。失点は反省点ですが、すぐに取り返し、さらに追加点を入れられたのは、みんなが諦めずに集中していたからこそ。これからも厳しく難しい戦いが続きますが、今回学んだことを忘れずにやっていきたいと思います」
事実、先制された後すぐに集まり意思統一を図ったように、ピッチ上での自立や状況判断は経験を肥やしに着実に育まれている。キャプテンの高山薫が怪我で戦列を離れた中で、個々の自覚はなおのこと求められよう。
「走りや戦う気持ちなど、薫はチームにとってシンボルのような存在です。薫が戻ってきたときに自分たちの順位や成績が伴っていなければいけないし、薫のためにもチームとして結果を残していかなければいけない」
そう語るアンドレ・バイアをはじめ、最年長のDF坪井慶介や彼に次ぐFW藤田祥史とFWジネイ、最古参のDF島村毅と、チームを思う30代が頼もしい。経験豊かな先輩たちが若き躍動を支えている。
文=隈元大吾