2016.03.13

仙台を救った“代役”…「いっぱいいっぱいだった」GK関の好セーブ連発で鹿島を完封

関憲太郎
復興応援試合に出場した仙台GK関憲太郎。1年ぶりの先発出場で好セーブを連発し勝利に貢献した
学生時代から全国のスタジアムへ通い続けてきた経験と人脈を生かして、Jリーグを取り巻くピッチ内外のネタを探り続ける。

 東日本大震災発生から5年目。節目の“3.11”の翌日に行われた復興応援試合で、ベガルタ仙台が気迫溢れるサッカーを披露して鹿島アントラーズに勝利。被災クラブ同士の対戦となった注目のカードで輝いたのは、丸一年ぶりにリーグ戦先発の座を手にした仙台GK関憲太郎だった。

 巡ってきたチャンスは、“特別な日”に行われる大事なゲームだった。

 ホームに鹿島を迎え撃った2016明治安田生命J1リーグ・ファーストステージ第3節。日本代表GK六反勇治が前節FC東京戦で負傷交代し、右足外側くるぶし付近のじん帯損傷で全治約3~4週間と診断され、関が丸一年ぶりに先発出場の機会を得ることになった。彼にとっては昨年3月13日に行われたJ1ファーストステージ第2節の柏レイソル戦以来となるリーグ戦でのスタメン出場だった。

 結果、この守護神がファインセーブを連発して仙台に勝利をもたらす。

 序盤から激しいプレスで主導権を握った仙台は、8分に金久保順のゴールで先制。その後も連動性の高い積極的なプレッシングで相手を押し込むと、「この3試合で一番良かった」(梁勇基)という気持ちを前面に押し出した素晴らしい内容で前半を折り返した。そして後半、鹿島が開幕3連勝を狙って仙台ゴールに襲い掛かる。

 サイドからクロスを放り込まれ、セットプレーで幾度となくピンチを作られた。だが、そのたびに関が正確かつ冷静なクロス対応を見せてゴールに鍵を掛ける。必死に腕を伸ばしてクロスボールを弾き返せば、体ごとボールに突っ込んでセーブ。本人は「(チームのみんなは)足が軽そうな感じで、ボールへのプレッシャーも早いし、一人が寄せたら二人目がカバーしたり、スライドも早かった。鹿島もやりにくかったんじゃないかと思う」と仙台イレブンの積極的な守備に助けられたと振り返る。

 渡邉晋監督も「素晴らしいパフォーマンスだったと思います。憲太郎とは付き合いが長くて彼の良さや強みは知っていますので、送り出すにあたって何の心配もしていませんでしたし、これくらいのことはしてくれると期待を持っていました。後半にあれだけ押し込まれる中で、憲太郎のビッグセーブがなければ無失点に抑えることができなかったのではと思う。久々のゲームとは思えないくらいの高い集中力と素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた。これで満足することなく、この次のゲームに向けていい準備をしてほしい」と称賛した。

 この日は“特別な試合”。178センチの身長はGKとしては決して大きくないが、関自身も大事なゲームでのプレーに気持ちをたぎらせていた。

「こういう場で勇気溢れるプレーを見せることが、サッカー選手である今の自分の最低限の行い。今日に限らずにそういう姿勢を見せていきたい。『こんな身長のGKでも頑張れるんだ』というところは、プロを目指す小中高生を勇気づけられたかな」

 こう話してくれた関だが、ポーカーフェイスを崩さない。「毎日の練習でGKコーチといろいろと話し合いながら、ボールが来ない時でも集中するように常日頃から指導されていた。今日はそういう部分が出たのかな」と日頃の積み重ねが結果につながったことをアピールしつつ、「本当にいっぱいいっぱいだった。サポーターの声援が本当にパワーを与えてくれて、自分が持っている以上の力を発揮できた。皆さんの後押しは改めて素晴らしいものだと思った」とスタジアムの雰囲気に感謝の意を表した。

 虎の子の1点を守り切って試合終了のホイッスルが鳴った直後、多くの選手がゴールマウスに立つ関のところへ駆け寄り、勝利の喜びを分かち合った。それこそがこの日のヒーローが誰だったのかを表している証だろう。

「本当は自分が活躍しちゃいけないと思うんですけど、そういう形になった。今日は周りに助けられたし、後ろから見ていてもみんながよく走ってくれた。仙台らしいチームだったと思いました。今日みたいにみんなでサポートし合って、カバーしあって戦えば勝ち点を取れる。『勝って兜の緒を締めよ』と言いますけど、試合が終わった瞬間から次の試合のことを考えていました。本当にいっぱいいっぱいなんですけど、それも自分らしいかなと。これからはもっとしんどい試合や厳しい試合が続くと思うので、家に帰って映像で振り返って、今まで以上の準備をして次の名古屋グランパス戦に臨みたい」

 関自身にとって、ちょうど一年ぶりに巡ってきた先発機会で結果を出せたことは大きな自信になったはず。チーム一丸となって、節目の試合で勝利を得ることもできた。だが、それも一つの勝利でしかない。これを継続していくことが、個人としてもチームとしても、真の“存在意義”となっていくことだろう。六反について聞かれても「早く戻ってきてもらって、またライバルとして切磋琢磨して、日々向上していけるように頑張っていきたい」と前を向く。鹿島戦で見せた“仙台らしさ”を見せ続け、結果を出していくことが、何より被災地復興のシンボルとなる。その最後方にチームを盛り立て、声を張り上げる関の存在がある。

文・写真=青山知雄

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