2016.02.26

2016年のJリーグが開幕へ…予測不能の戦いを盛り上げる11人の主役たち

Jリーグ
明治安田生命Jリーグが27日に開幕を迎える [写真]=Getty Images
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 2月27日、2016年の明治安田生命Jリーグが幕を開ける。日本サッカーの底上げが進んでクラブ間の戦力差が縮小、優勝争いも残留争いも「予想不能のリーグ」になったと言われて久しい。今年も「ビックリ降格」があるかもしれないし、2ステージ制+チャンピオンシップというシステムを考えても、「ビックリ優勝」が誕生する可能性も十二分にある。そんなリーグの幕開けに向けて、「Jリーグ新シーズンを楽しむための11人」をピックアップ。様々な角度からシーズンを占ってみた。なお、ベストイレブンではない。

■「大記録更新と、そこに潜む可能性」
FW 11 佐藤寿人(サンフレッチェ広島)

 開幕戦最注目カードは、過去4年で3度のチャンピオンに輝いている広島の試合だろう。ホームに川崎フロンターレを迎える一戦は、佐藤寿人と大久保嘉人の双方にJ1通算得点記録更新が懸かるという試合でもある。そして佐藤にはシーズンを通じて2004年当時J2のベガルタ仙台時代から続く「リーグ戦二桁得点記録」の更新も懸かる。なんと12シーズンも続いている空前の大記録だが、今年も更新するようなら、自然と広島の5年で4度の優勝も見えてくるかもしれない。今年で34歳になるだけに、スタミナ面には不安もあって出場時間も削られているが、それでもこの数字を残し続けるのは純粋に驚きである。コンスタントさを生む「大きな負傷をしない体」も佐藤の武器だろう。

■「いつか来るそのときに挑む“ジャガー”」
FW 10 浅野拓磨(サンフレッチェ広島)

 佐藤の12シーズン連続得点記録が更新されないケースはあるのだろうか。それはアクシデントによって途絶えるのではなく、どんな偉大な選手にも必ず訪れる「世代交代」という形になるかもしれない(もちろん、ならないかもしれない)。昨季のベストヤングプレーヤー賞を獲得した“ジャガー”浅野拓磨は、四日市中央工高を卒業して広島に加入して以降、佐藤の背中を追い続けてきた。専ら途中出場が中心だった昨季、浅野が二桁得点に迫ったことで二人の立場が近づいているのは間違いない。もちろん、現時点で評価が上なのは佐藤。それを22歳の若者がシーズン中にひっくり返してポジションを奪い取れるか否か。大きな見どころであるのは間違いない。

■「新天地を求めたU-23代表の主将…即戦力加入で白熱する浦和の定位置争い」
DF 6 遠藤航(浦和レッズ)

 浅野と言えば、今季は8月に本大会を迎えるリオデジャネイロ・オリンピック代表のことも気になるところ。そのチームの主将であり、A代表の一員でもある遠藤は今季から浦和へと籍を移した。湘南ベルマーレ時代に主に務めていた3バックの右には森脇良太、五輪代表で主に務めていたポジションであるボランチには阿部勇樹と柏木陽介がおり、目玉補強の代表選手といえども簡単に出場機会は得られない。かつての宇賀神友弥がそうだったように、補強選手の存在に奮起して伸びてくる選手がいるのも浦和の伝統的な特徴である。そういう意味でも今季のポジション争いは熱くなりそうだ。もちろん、AFCチャンピオンズリーグのタイトルを意識する意味でも、選手層が厚いに越したことはない。

■「二度目の挑戦に臨む“城福トーキョー”…結果を残して信頼を勝ち取れるか」
城福浩監督(FC東京)

 AFCチャンピオンズリーグと言えば、今季から久々に出場となったFC東京の戦いぶりも注目だろう。シーズンを前に迎えた新監督は、城福浩氏。かつてクラブを指揮した日本人指導者の「出戻り」は青赤軍団の伝統(?)でもあるのだが、ヤマザキナビスコカップのタイトル獲得という栄誉と、J2降格の始まりを作ってしまった悪夢という二つの記憶をサポーターに残しているだけに、現時点では賛否半ばする印象もある。信頼の確立は結果によってのみ為されるものということは指揮官自身も分かっているはず。極端なカウンターサッカーだった昨季のスタイルからの転換も含めて、“城福トーキョー”の成否は、リーグ戦の行方をも左右することになりそうだ。

■「サッカー界期待の新人監督…真価が問われる“名手”の指導力」
小倉隆史監督(名古屋グランパス)

 城福監督を筆頭に、今季のJ1リーグには多彩な新監督が誕生した。FC東京の前任監督だったマッシモ・フィッカデンティ氏はサガン鳥栖の新監督に就き、柏レイソルではミルトン・メンデス監督が誕生。その柏を指揮していた吉田達磨氏はアルビレックス新潟の新監督となった。そうした「監督大異動」の中で、完全な新人監督も日本の真ん中で誕生している。元日本代表FWでクラブOBの小倉隆史氏が、名古屋の新監督に就任したのだ。しかも単なる監督ではなく、補強・編成に関する権限も持ったGM(ゼネラルマネジャー)兼任。田中マルクス闘莉王がチームを去るなど激震の走ったオフを経て迎える新シーズンがどうなっていくのかは今季の注目点。プレシーズンマッチでの様子を見る限り、序盤は苦しみそうだが、夏の補強を含めて立て直しを図れるかどうかで指導者としての真価が問われる。

■「技術とハートを兼ね備えた万能FW…リオ抜擢の可能性を秘める大型ルーキー」
FW 18 小川航基(ジュビロ磐田)

 新人監督ではなく、新人選手という意味で注目なのが桐光学園高から磐田に加入したFW小川航基だろう。高さと速さ、技術に加えてハートも備えるスペシャルな素材感の持ち主だけに名波浩監督の評価も高く、開幕前のスカパー!ニューイヤーカップの静岡ダービーで決勝点を奪うなど存在感も見せていた。その後に発熱でダウンしてしまうアクシデントがあって開幕即デビューはないかもしれないが、シーズンという意味ではどこかで出てくるタレントだろう。2020年の東京五輪を狙う世代だが、霜田正浩技術委員長はこの世代の選手を飛び級でリオ五輪へ抜擢することを示唆している。もちろんJリーグで結果を残すことが前提条件だが、その「可能性」を持った選手であることは確かだ。

■「飛躍を遂げた期待の新守護神…レイソルとリオ五輪で定位置奪取に燃える」
GK 23 中村航輔(柏レイソル)

 1部リーグのチームが、出番のない若手選手を2部や3部のリーグのチームへ「貸し出して」経験を積ませて、育ったところでチームへ戻す。俗にレンタル移籍と言われる期限付き移籍制度を利用した選手育成も、日本のサッカー界でようやく当たり前になってきた。柏から昨季J2だったアビスパ福岡に貸し出されていた中村航輔は、まさにこのやり方で鍛えられた選手。今季は満を持して柏に復帰し、正GKとして新シーズンに臨むこととなる。俊敏かつ剛毅なセービングと、確かな足元の技術を備えるタレントで、リオ五輪代表の正GK争いを繰り広げる柏の新守護神に懸かる期待は大きい。

■「トライを続ける長谷川ガンバ、タイトル奪還に向けた“ラストピース”」
FW 9 アデミウソン(ガンバ大阪)

 新人でもレンタルバックでもなく、純粋に移籍組という意味で見ていくと、やはり注目はG大阪のアデミウソンではないだろうか。リオ五輪代表入りも視野にあるであろうタレントだが、まだまだチームにフィットしてはいない。ただ、長谷川健太監督は「昨季と同じメンバーでやれば上手くいくことは分かっているが、それでは進歩しない」と、この新助っ人を組み込む新たなトライを継続している。タイトル奪還を図るチームにとって、このアデミウソンが新たな“ラストピース”になれるかは一つの分かれ目になりそうだ。今季から新たなホーム舞台となる市立吹田サッカースタジアムも完成したG大阪は、新しい攻撃の形を確立し、新時代の幕開けにふさわしいタイトルを勝ち取れるだろうか。

■「帰ってきたセレッソのエース…慣れ親しんだホームで復活を期す」
FW 8 柿谷曜一朗(セレッソ大阪)

 同じ大阪府に居を構えるライバルクラブのC大阪は今季もJ2での戦いとなった。攻守の要だった日本代表MF山口蛍もドイツへと旅立った一方で、帰ってきた男もいる。1年半にわたってプレーしたスイスのバーゼルではなかなか結果を残せなかったが、そのタレント性自体に疑問はない。慣れ親しんだ釜の飯を食べる中で本来の状態に戻ってくれば自ずと活躍してくれるだろうし、そうなればC大阪のJ1復帰も見えてくる。もちろん、対戦相手からすると「柿谷を止めれば名が売れる」わけで、自然と気持ちも高まるはず。J2を熱くしてくれる男が帰ってきたと言えそうだ。同時にドルトムントU-23への期限付き移籍から復帰した丸岡満の活躍も楽しみにしたい。

■「ドイツで揉まれた逆輸入Jリーガー…“10番”を背負い昇格のキーマンに」
MF 10 長澤和輝(ジェフユナイテッド千葉)

 帰ってきたと言えば、注目しておきたい選手がJ2にもう一人いる。ドイツのケルンでプレーしていた長澤和輝である。専修大を卒業後にJリーグを経ずにそのまま海を渡り、ドイツの大男たちと格闘してきた技巧派のMF。昨年末に浦和への移籍、そして千葉への期限付き移籍が電撃発表され、今季からJ2へと戦いの舞台を移してきた。ドイツでは出場機会を失っていたこともあってまだまだ本調子ではないという話もあるが、この男が新たに託された「10番」にふさわしい輝きを見せるようなら、パラグアイ代表MFアランダなど渋い好選手も獲得している今季の千葉は、ちょっと面白いことになりそうだ。

■「復帰から一転、電撃の完全移籍…自らの穴を埋めるミラクル補強」
FW 33 金崎夢生(鹿島アントラーズ)

 そしてJリーグには、帰ってきたと思ったら行っちゃったと思ったらやっぱり帰ってきた男もいる。昨季はポルトガル2部のポルティモネンセから期限付き移籍という形で鹿島にてプレーし、ナビスコカップ優勝に貢献。自身も日本代表復帰を果たし、大分トリニータ時代から耳目を集めてきたタレントが再ブレイクを果たすこととなった。今季はそのポルティモネンセへ復帰が決まった……と思われたが、電撃的に完全移籍。鹿島は前線の強力な駒を確保することに成功した。金崎不在時に高卒2年目のFW鈴木優磨も存在感を増しており、MF永木亮太、三竿健斗といった「日の丸」を狙うべき選手も外部から補強。金崎の穴が金崎自身によって埋まるというミラクルが起きたことで、一躍優勝候補の一角に名を連ねることとなった。

 2016年でJリーグは24回目の開幕を迎えることとなる。今年も喜怒哀楽の詰まったエモーショナルな戦いが繰り広げられることは間違いないし、意外なチームの台頭や、思わぬ選手の活躍も見られることだろう。熱く激しく逞しく、何より楽しいJリーグとなることを強く期待したい。

文=川端暁彦

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