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【平畠啓史氏はこう見る!】“アニキ”のプレーが東京Vに火をつける…今節は男気溢れる平本一樹のプレーに注目

2015.06.17

男気溢れるプレーが注目される平本一樹(右) [写真]=Getty Images

 4月上旬、広島でのこと。移動の際、何度かタクシーに乗ったのだが、その時タクシーの運転手から出る話題が見事に一緒だった。

「黒田博樹の男気について」。


 広島のタクシー協会から、お題が出されているのではないかと思うほど、どのタクシー運転手の口からもその話題が出た。批判する類のものはもちろん皆無。称賛の嵐だった。それはそうだろう、大リーグの他球団からの高額オファーを蹴り、古巣広島カープの復帰を決めた黒田博樹の男気に男が惚れていた。内容も、「それはみんな知っているよ」的なエピソードから、「そのドキュメンタリー番組は私も見たよ」的なものや「なんでそんなこと知っているの? その現場にいたの?」的なネタ。そして、「話が膨らみまくって、さらに運転手さん盛っているでしょ?」的なものまで盛りだくさんだった。

 それにしても、「黒田博樹の男気について」を語るおじさんたちは、本当にいい表情をしていた。任侠映画を見た後に、少し強くなったような気がして、肩で風を切って歩くがごとく、おじさんたちの顔にも、昔から持っていた男気が復活したのか、ブームに乗ったにわか男気かはわからないが、男気が上乗せされて、男前になっていた。

 あれから、2カ月以上経った。男気メーターがアップしているならいいが、もし男気メーターがダウンしているなら、東京Vのゲームをオススメしたい。東京Vの25番、平本一樹には男気が溢れまくっている。

 黒田博樹もそうだが、平本もシャイだ。まずこれが男気ポイントが高い。人前でベラベラしゃべらないのがいい。ウケを狙ってみたり、無理にテンションを上げたりしない。ゆえに、少し不器用な感じがする。これも、男気ポイントをさらに上げる。小器用に人付き合いして、揉み手で人のおこぼれを預かろうという雰囲気がまるでない。自分のケツは自分で拭く感が強い。そうすると、背中に生き様がにじみ出てくる。黒田博樹がマウンドに立っている時の背中。平本一樹がドリブルで中央突破を始めた時の背中。チームのメンバーにその背中が雄弁に語りかけているのだ。

 そんな生き様、闘い様が印象的だったのが、J2第17節の岡山vs東京Vの一戦だった。岡山のディフェンスラインの中央には岩政大樹が君臨する。強い。相手のフォワードをあの手この手で叩き潰す。しかし、平本一樹は逃げなかった。戦いを挑んで、一歩も引くことがなかった。サイドに流れれば、ボールを受けることはできる。少し中盤に下がって、楽に受けることもできるだろう。しかし、一切逃げなかった。勝とうが負けようが、競り合い、体をぶつけて戦いまくった。

 東京Vにはユース出身の若い選手が多い。若い選手は見ていただろう。平本アニキの戦いぶりを。もし、競り合いの場面で逃げていたら、腰が引けたところを少しでも見せていたなら、アニキはアニキでなくなる。だけど、その闘う姿は無言のメッセージとなり、若い選手に伝わっていった。このゲームはシュートが少なく、パスが華麗につながりまくるようなシーンも少なかったが、東京Vの選手たちの球際の激しさ、ボールへの執着心は素晴らしく、感動的だった。そして彼らの闘争心に火をつけたのは、間違いなく平本一樹の男気だった。

 戦術もシステムもテクニックも大事だけれど、男ばかりの集団では、こういうことが一番大事だったりする。スタジアムで、平本一樹の男気を是非感じてもらいたいし、飛田給周辺のタクシーの運転手の方には、「平本一樹の男気について」をしゃべりまくってもらいたい。

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