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狙いどおりのゴールと試合展開…G大阪が浦和を術中に沈める

2015.02.28

ゼロックス杯を制したG大阪イレブン [写真]=Getty Images

 まさに狙いどおり。昨シーズンの三冠王者が、最大のライバルを術中に沈めた。

 26日に日産スタジアムで行われた富士ゼロックススーパーカップ2015。昨シーズンのリーグ王者・ガンバ大阪と2位・浦和レッズが対戦した試合は、浦和が前半から圧倒的にボールを保持する展開となりながら、G大阪が2-0で勝利。68分に遠藤保仁の右CKから宇佐美貴史が蹴り込んで先制すると、試合終了間際にはカウンターからドリブルを仕掛けたパトリックが追加点を決めて勝負あり。Jリーグの新シーズン幕開けを告げる同大会をG大阪が制した。


 ボールだけを追いかけていたら、浦和が攻め込みながらゴールを割れず、G大阪の勝負強さが際立っただけに見えたかもしれない。実際、浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督も試合後の記者会見で「試合の見方はそれぞれあるけれど、私たちはコンセプトを元に、アイデアを持ってプレーすることができていた。相手は自陣に引きこもって10人でブロックを作るような状況になっていた。試合には負けたが、ピッチでは相手よりも良いサッカーをしていた」とコメントしている。

 だが、すべては三冠王者のスカウティングどおりだった。G大阪には今シーズンから長年、日本代表の分析を担当してきた和田一郎氏が入閣。浦和戦前のミーティングでは、試合展開と狙いどころについて話があったという。先制点を決めた宇佐美は「セットプレーで浦和がボールウォッチャーになることが多いことは聞いていました。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)の水原戦もこの形でやられていましたし、(遠藤の右CKから)パトリックがニアに入って相手選手がボールに気を取られた瞬間、裏に抜けてフリーになることができた」と得点シーンを述懐した。

 相手に押し込まれた試合展開についても「前半はチャンスが作れなかったし、後半もなかなか攻め込めなかった。このままではいけないとは思うけれど、レッズとこういう展開になるのは分かっていた」と言い、丹羽大輝は「相手にボールを持たせてもサイドや後ろで回させて、中央を締めていれば問題なかった」と振り返った。新加入の赤嶺真吾も「向こうは3トップとワイドのMFを置いていて、こっちは4バック。システムの組み合わせでサイドバックはあまり上がらないようにしていたから、ある程度、押し込まれることもサイドから攻める回数が少ないことも想定内」としている。

 ちなみに丹羽に敵将の会見コメントを投げかけてみると、「見方はいろいろあると思いますけど、僕たちとしては狙いどおり。守備もパズルのようにはめ込むことができたし、後ろが耐えれば前線の選手が点を取ってくれる。昨シーズンのいい時を思い出しました」と笑顔を浮かべた。

 終了間際のダメ押しゴールも想定していた形から生まれた。チームミーティングで「前半は0-0でいい。そうなれば後半、相手は前掛かってくるからショートカウンターが生きる」と説明があり、まさに追加点は1点を追う浦和が攻めに重きをおいて空いたスペースをパトリックが突いた形。リードしたチームが守りを固めながら追加点を狙うというセオリーどおりの展開でもあるが、試合展開、セットプレーでの狙いどころを的確に分析した上での会心のダメ押しゴールだったと言っていい。思い返せば昨シーズン、G大阪が大逆転優勝に勢いをつけた浦和戦の勝利も、守備陣が耐えて88分にカウンターから先制点を奪い、後半アディショナルタイムに相手のプレスが緩くなった間隙を突いて追加点を決めたものだった。

 まだシーズン序盤だけに連携面の熟成はこれからだが、丹羽は「昨シーズンの良かったサッカーにちょっと近づいた。これから試合を重ねるごとにパスの感覚が合ってくると思う」と話し、宇佐美は「(内容的には)このままではいけないと思いながら、勝負強さを出せたことは自信になる。(公式戦で)連敗していたらネガティブになっていたと思うので、いいサイクルで次に進める」と口にしている。試合後、G大阪はACL第2節城南FC戦に向けて羽田空港から韓国へ出国した。初戦では広州富力(中国)にホームで敗れているが、浦和戦の勝利で「日本代表の誇りを持って、いい形で乗り込める」(丹羽)。G大阪が本領を発揮するのはこれからだろう。「取れるタイトルは全部取りたい」と語った遠藤の言葉どおり、G大阪にとっては今シーズン最初のタイトルとなる富士ゼロックススーパーカップを制したことが、ACL制覇、そしてJリーグの開幕に向けて大きなプラスとなりそうだ。

 一方、心配なのは浦和だ。確かにボールを動かしながら攻めることはできており、G大阪戦では相手選手のクリアがパスと見間違われてオフサイドを取られたり、G大阪のバックパスを見逃されて間接FKがもらえないなどの不運なジャッジがあったのも事実。だが、昨シーズンから同じパターンや時間帯での失点が続いているのは気がかりだ。ペトロヴィッチ監督は「ちょっとしたところやミスから失点している」としながらも、どう修正するかについて問われると、「質問は難しい。気にし過ぎることで、必要以上にナーバスになってしまう」と悩ましげな表情を浮かべていた。

 敗戦後、日産スタジアムに集まった浦和サポーターからは、審判団だけでなく、イレブンに対しても大ブーイングが巻き起こっていた。今シーズンはアジアとJリーグの二冠を狙ってターンオーバー制を敷けるほどの戦力を整えたが、内容に結果が伴わず、タイトルに手が届かないのは近年の傾向でもある。もしかしたら本当に内容がいいのかどうかも検証が必要なのかもしれない。開幕時期からブーイングが出たのは、サポーターも結果に飢えているからなのだろう。相手からのマークがキツくなる中、勝利、そしてタイトルへの渇望がチームを変えるのか。浦和の立て直しにもしっかり目を光らせておきたいところだ。

文=青山知雄


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