2013.08.13

「電撃」解任ではなかった監督交代劇…試される大宮の団結力

ベルデニック
解任されたベルデニック監督 [写真]=Getty Images

 大宮アルディージャは11日、ズデンコ・ベルデニック監督の解任を発表した。17日のJ1第21節のサガン鳥栖戦から後任が決まるまで当面は、岡本武行GM(ゼネラル・マネージャー)が代行監督を務める。今季J1で、監督が交代するのはジュビロ磐田に続き2チーム目となった。関係者によると、後任には小倉勉TD(テクニカルディレクター)の就任が見込まれている。

 ただ今回の解任劇、決して世間で言われているような 「突然」や「電撃」ではなかった。

 7月の4連戦、過去に例を見ない猛暑に日々、ハードワークを要求される大宮のプレースタイルで、選手たちは疲労を極めていた。そんな中、「こんなに盛り沢山の練習メニューをやる必要があるのか」「さすがに2部練習はキツイ」という言葉が練習場で聞かれるようになった。戦術や練習方法において、監督と選手・コーチとの間に少しずつ溝が生まれていた。

 そして7月17日のJ1第17節、ホームに川崎フロンターレを迎えた一戦。首位大宮と2位サンフレッチェ広島との勝ち点差は「3」。大宮は勝つか、あるいは引き分けでも首位のままリーグ後半へターンできる。選手の心理的負担を考えると、ここは何がなんでも首位で折り返したい。実はこの試合の前、記者の間で1つの予想シミュレーションが行われた。「最初からDF片岡洋介を投入して3ボランチを形成し、引き分けで逃げ切る」というもの。それには理由があった。練習取材でチームの調子が上がっていない現状を目の当たりにしていたからだ。

 63分、川崎の大久保嘉人のゴールで2-2に追いつかれると大宮ベンチは動き出す。同時刻、広島は2-0と勝利を固めつつあった。仮に川崎に逆転されると首位交代となる可能性がある。FW清水慎太郎を投入して3点目を取りにいくか、片岡を投入して勝ち点「1」の僅差で逃げ切るか―。当時の映像を見ても、ベンチ内で議論が続いているのがよく分かる。ベルデニックは決断する。

 3点目を奪う。

 結果は、川崎に押し込まれ、守備に戻っていた青木拓矢がボックス内でハンドを犯してPKを献上。2-3と敗れ、得失点差で首位陥落となった。また昨季からサポーターとともに守ってきたホーム連続無敗記録も「13」で終わってしまった。スタンドからは大きな溜息があちこちで漏れていた。この試合後、大宮のフロントは動き出す。

 4日後の21日、小倉氏のTD就任が発表される。新しい役職では、試合中にベンチには入れないという。ベルデニック監督と小倉氏の関係に、何らかの変化があったようだ。

 小倉氏は、日本代表でイビチャ・オシム、岡田武史両監督をコーチとして支えるなど、指導経験は豊富だ。大宮躍進の最大の秘密は、ベルデニック監督と小倉氏の良き「補完関係」にあった。戦術に優れたベルデニック監督と、チーム対策や選手交代、また人身掌握術に長けた小倉氏とのシナジーが、ベンチワークの質の高さを生んでいた。1-0で勝利したさいたまダービー、浦和レッズの超攻撃システムを完封したマンツーマン・ディフェンスなどは小倉氏の貢献が高いと見られている。その関係が崩れてしまったのだ。その影響は、試合結果が物語っている。川崎戦の後の3試合、大宮はたったの一度も勝利していない。

 8月10日のセレッソ大阪戦、またもホームで敗北。ついにクラブは決断し、ベルデニックは解任された。そこで気になるのはノヴァコヴィッチとズラタンの去就だ。代表監督暦があり、母国の英雄でもあるベルデニックの「招集」だからこそ、大宮に加入した2人だ。

 C大阪戦の前、ズラタンはこう話してくれた。「今の大宮はすべてが足りない。それは勢いや流れを呼び込めていないこと。選手全員が自覚していかないといけない」。そう語る表情には何故か、いつもの屈託のないスマイルはなく、どこか憂いのある表情だった。この段階で監督の考えや時節の結果いかんでの動向を、ある程度知っていたのだろうか。ズラタンは今季このまま大宮でプレーするのか、それとも別の道を選択するのか。ノヴァとともに今後が注目されるところだ。

 なお、ズラタンの取材の後、ボランチの金澤慎が本音を語ってくれた。ユース一期生として、クラブと一心同体で歩んできた「ミスターアルディージャ」。そんな彼でしか語れない言葉だった。「こんなに負けているので、自分たちの立場や目標をもう一度考え直したい。まず連敗を止めることが大事、結果にこだわりたい。大宮のいいところはチームが1つにまとまってやってきたこと。そうやってJ1残留も乗り越えてきた。今回も乗り越えていきたい」

 岡本監督代行のもと、新体制で臨む鳥栖戦。

 勝利は必須だが、大宮にとっては試合を越えた試合となるだろう。金澤選手の言葉ではないが、選手、指揮官、サポーター、スタッフ、すべてが1つにまとまった時、6試合ぶりの勝利をもぎ取ることができることができるだろう。試される一戦となる。

文●上野直彦
兵庫県出身。サッカー新聞エル・ゴラッソで大宮アルディージャ担当。クラブ運営や大宮の育成など幅広く取材を続けている。また女子サッカーの長期取材も続けており、少年サンデーで好評連載された『なでしこのキセキ 川澄奈穂美物語』の原作者。宮間あや選手らの子供時代を描いた『なでしこの誓い』(学研)も執筆。 Twitter ID: @Nao_Ueno

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