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【スカサカ!ライブ】岩政大樹が反町康治に聞いた、知将の監督論と日本サッカー界の未来

2017.10.12

 スカパー!では、毎週金曜日午後9時から、サッカー情報番組『スカサカ!ライブ』をレギュラー放送している。10月6日の放送回では、レギュラー解説委員を務める岩政大樹(東京ユナイテッドFC)がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く!」~松本山雅 反町康治篇~後編が放送された。経験豊富な知将が語る監督論、そして日本サッカーの未来予想図とは――。

■反町康治の監督論

岩政大樹(以下、岩政) 反町監督は何チームか渡り歩きましたけど、就任した時に最初に考えるのは選手たちのことですか?


反町康治(以下、反町) 選手ありきだと思うね。型があって無理やりそれをはめたとしても、どこかにひずみが生まれたり、どこかに穴ができたりして、どこかで選手の躍動感が見えなくなる。一番いいのは、選手が持っている攻撃の力を最大限に生かすような戦術を考えたい。本当は。ただ、それをやるには時間がかかるし、把握するためにも時間がかかるから、最初はそういう意味では大事だと思いますね。ここ(松本山雅)に来て、湘南の頃はずっと(DFが)4枚で4-4-2とか4-3-3をやっていて、今は3バックをやっているけれども、それは選手の力量を見た時に、これはちょっと4枚じゃ守れない、3枚にして、シャドータイプのスピードのあるやつをうまく生かしてやる。そこからスタートですよね。そのためには何が必要か。で、僕は誰にも教わったことがないんで、教わったと言えば唯一、代表の時に(イビチャ)オシムさんから薫陶を受けただけなんで、だから自分のオリジナルティーは強いですよ。

岩政 いろいろな試合を見たり、自分で指揮したりされる中で見つけていく?

反町 見つけていく。「あ~、このチームはこれやっているな」とか。だから3バックでやっているチームで参考にするんだったら、今ユヴェントスは4枚もやっているかもしれないけど、3バックの時のユーヴェとか、昨シーズンだったらチェルシーであるとか、それを見ていると「あ、そうなんだな~」とか「あ、これはこうやっているんだな~」とか、そういうヒントはたくさんありますよね。

岩政 指導者が呼応している部分と選手が呼応している部分っていうのはあるじゃないですか、サッカーって。そこも想像するんですか? 試合を見ていて。その時に指導者がやろうとしていることを見ることが多いですか? それとも選手たちが「あ、ここはでもこの選手の、勝手にやっている部分はあるな~」という部分?

反町 それはもちろん分かりますよ。でも、当たり前だけど、それをじゃあこれをやろうと言ってそれだけやっていたら面白くも何ともない。そこを逸脱して、ベースはあるんだけど応用問題を解いていかないといけないんですよ。基本問題がしっかりできていれば応用問題は解けるんで、その応用問題の解き方をどうストレートに、どう早くやれるかでしょうね。それはもう、ある意味、寛容的な目で見ていますよ。それで失敗したからといって怒るわけにはいかないし。それは自分の判断でやっている、それはもしかしたらチームの間の話し合いかもしれないし。それはダメだったからといって「もうそんなのやめてくれ」とはあまり言いたくない。チームの基準に沿った中での応用問題を解いている。

岩政 応用を解くというところでいくと、日本ではまだやはり少ないですよね。例えば練習メニューを与えます。その時に、言ってないことがあるじゃないですか。敢えて言わずにやらせるところ。でもそれを勝手に「言ってないけどやってやるぞ」みたいな選手がけっこう少なくて、僕も今、指導を始めているんですけど、僕は「言ってないことをやっていいよ」と言うんですけど。

反町 その通りだと思う。

岩政 そこを勝手にやっちゃうってやつが何だか……。

反町 もう最近は、そういう選手がいなくなったというか少なくなった。そういう選手が逆に弾かれちゃうかもしれないという非常に悲しいところはあるとは思いますね。難しいですそれは。でも少なくなってきている。俺みたいなあまのじゃくなやつがいたらすぐに「お前、グラウンドの外周走っていろ」って言っているかもしれない(笑)。

岩政 反町監督のチームに、ご自身が選手として所属いたらどうですか?

反町 いや、うまく話してやるだろうな。うまく話し合いながら。それでもできないって言うんだったら、まあここにも何人かいたけどね。最初に来た時には何人かいたけれども、やっぱりチーム全体のマネージメントを考えた場合に、足を引っ張るんだったらやっぱりそれは仕方がない。ゲームのチャンスはなくなるよね。

■日本サッカーの未来について

岩政 監督から見て、足りないことばかりだと思いますけど、日本サッカーはこれから何をすべきだと見ていますか?

反町 トップのフル代表に選ばれた選手だけでなく、下のカテゴリーからどういった方向性を持ってやるかっていうことを、もう少し整理して、道筋を作らなきゃいけないとは思いますよね。その道筋は作っているのかもしれません。もちろん。僕もトレセンのコーチをやったことがあるんで、そういういろんなところとか、グラスルーツからスタートしていると思うんだけど、本当にそういうところから出てくる選手が多いのか、そこをもう一度整理してやっていかなければならないと、ちょっと感じますよね。“たくましい選手”がちょっと少ない。

岩政 それは、流れの良くない時にということですか?

反町 流れとかじゃなくて、全体的にもう少しタフな選手が増えてこないと。フィジカル的にも精神的にも。やっぱり少し、何ていうのかな、周りの目を気にしているというか、のんびりっていうのはちょっと違うかもしれないけども、全面的にギラついたようなヤツが少ないかなって。それが今の選手だって言われればそれまでなんだけど。昔の中山ゴン(中山雅史/現アスルクラロ沼津)みたいにさ、ヒデ(中田英寿氏)もそうだけど、我々が期待感を持った選手がたくさん出てきてほしい。

岩政 ワクワクするような選手?

反町 そうですね。

岩政 そうですね、それは減ってきたといえば減ってきていますよね。今の若いヤツ……うん、そうかもしれないですね。

反町 うん。

岩政 若い年代の子たちを見る場合、たくましい子を育てるために指導の中で何を与えればいいですかね。

反町 ハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督)は「デュエル」なんて言葉を言ったりしているけど、やっぱりそういう部分でもこだわりを持ってやらなきゃいけないでしょうね。やっぱり高校レベルになると、そういうところの戦いはあまり強調せずに、“キレイなサッカー”と言えばそれまでだけれども、セカンドボールの争いであるとか、そういうところをもうちょっとタイトに、こだわりを持ってやるのは必要かなと。サッカーの世界で、10本もパスが通ってゴールが決まるというのが多いかと言えば、ほとんどないですよ。残念な話。じゃあどういうふうにしてゴールに近づいていっているかというと、やっぱり中盤で拾うとか、一歩先に出て、それがそのままラストパスになるとか、そういうのがけっこう多いんですよ。日本人はフィジカル的なところで二度追い、三度追いができる。二回、三回動き直すことができるっていう人種だから、やっぱりそういう特徴を持って、それをチームの力に変えていけるような形にできれば一番いいのかもしれないけどね。

岩政 なるほど。フィジカル的にも日本人の特徴を出せるところがあるということですね。そこをしっかりと体系化していくということですよね。

反町 抽象的だけどね。でも、見ていて何かすごくさっぱりした感は否めないよね。全然いいんだけども、「もっとガツガツやれよ」っていうところは正直ある。

 10月13日午後9時から生放送される『スカサカ!ライブ』では、日本代表の10月の2連戦を、同番組のレギュラー解説員である岩政大樹、ゲスト解説委員の柱谷幸一氏らが徹底レビュー。また、ガンバ大阪などで活躍した本並健治氏を招き、ポジション論~GK編~などを放送する。

『スカサカ!ライブ』公式サイトへ

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