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障がい者サッカー連盟がイベント初主催…体験会参加の川島「理解や関心が深まる」

2016.12.25

電動車椅子サッカーに挑戦した川島永嗣。これまでも積極的に障害者サッカーに携わってきた

 日本サッカー協会(JFA)の関連団体として、今年4月に発足した日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が初めての主催イベント「JIFF インクルーシブフットボールフェスタ2016」を24日に東京都多摩市のフットサルステージで開催した。

 健常者と障害者の混成チームによるミニゲームに約120人、3競技(アンプティサッカー、ブラインドサッカー、電動車椅子サッカー)の体験会には約60人が参加。元日本代表監督の岡田武史氏、23日に帰国したばかりの日本代表GK川島永嗣(メス/フランス)も特別ゲストとして登場し、JIFFの北澤豪会長は「『サッカーなら、どんな障害も乗り越えられる』というキャッチフレーズがあるが、人が集まらないと乗り越えるパワーにもならない。今日はたくさんの人が集まったので、非常に意義がある」と実感を込めて話した。

川島永嗣

JIFF初主催のイベントに会長の北澤氏(中央)、JFA副会長の岡田氏(右)、川島(左)が参加した

 JIFFに加盟する障害者サッカーの7団体は、それぞれ競技の特性や登録者数が違うため以前は一緒に活動する機会が少なかったという。今回は東京都内のJリーグ、Fリーグ、なでしこリーグのクラブからスクールの指導者などが協力し、北澤会長は「みんなで楽しむことを目的に同じ時間を共有することによって、何かが生まれてくると思う。サッカー界を代表するクラブの人も参加することで、一般の人が『そういうのもありだな』と思ってくれることが大事。そういう入口を広げたかった」と開催の趣旨を説明する。

 これまで日本だけでなく、欧州でも障害者サッカーと関わりを持ってきた川島は「一つのボールを通じて、障害者と健常者の壁がなくなる」と交流の意義を強調した。もともとピッチ外の社会貢献活動を始めたきっかけは、川崎フロンターレ時代に遡るという。「病院訪問をした時に骨肉腫の子がいた。本当は治療に時間がかかると言われていた彼と『リーグ最終戦を見に来てね』と約束したら、本当にその時までに治って見に来てくれた。そういう経験を通じて、選手としてやれることがあるならもっとやって、いろいろな人に還元したいと思った」と、今も活動を続ける理由を説明した。

 一方で長年、知的障害者サッカーやブラインドサッカーに携わってきた北澤会長は、障害者が持つパワーや技量に着目する。「例えばブラインドサッカーは目が見えない分、チーム全体で同じ絵を共有できるだけのコミュニケーション力が必要になる。アンプティサッカーは踏み込みの脚でボールを蹴る力が強い。彼らのすごさやサッカーに向き合う姿勢は、健常者のアスリートにもいい影響を与えられる」と、互いを理解することによって生まれる相乗効果を口にする。

北澤豪

JIFFの会長を務める北澤氏も自らアンプティサッカーで子供たちと交流した

 体験会では岡田氏や川島も電動車椅子に乗り、杖を使ってアンプティサッカーに挑戦した。岡田氏は「思った以上に難しいことや大変なことを実感できたが、やっていて楽しかった」と述べ、笑顔を絶やさず子どもたちに声をかけ続けた川島は「健常者も実際にこういう体験をすることで、理解や関心が深まる」と語った。

岡田武史

アンプティサッカーを体験した岡田氏。苦戦しつつも、プレー中は笑顔を見せた

 2020年には東京でパラリンピックが開催されることもあり、障害者スポーツへの理解や関心は高まっている。パラリンピックの実施競技はブラインドサッカー(5人制サッカー)のみだが、アンプティサッカーの実技指導を行ったFC ALVORADAの新井誠治氏は「パラリンピックだけが全てではない。バリバリの競技志向じゃなくても、人それぞれに合ったサッカーがあればいい」と、まずは裾野を拡大することが重要だと捉えている。

 秋からは7社のスポンサー企業が協賛し、徐々に活動の幅も増えつつある。JFAの副会長でもある岡田氏は「オリンピック・パラリンピックも経済効果よりも、スポーツには社会アジェンダ(課題)を解決する力がある。まずサッカーからこういうダイバーシティ(多様性)、いろいろなものを受け入れる社会になるよう、キーちゃん(北澤会長)を先頭に頑張っているのは素晴らしいこと。機会があればまた協力させてもらいたい」と、今後の活動の広がりに期待した。

文・写真=田丸英生(共同通信社)

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