FOLLOW US

初の選挙を経て会長へ…周囲との協調目指す田嶋氏「一番下から支えるのが協会」

2016.02.01

次期会長に内定した田嶋幸三副会長 [写真]=田丸英生

 日本サッカー協会(JFA)の次期会長を決める初めての会長選挙が1月31日、東京都内のJFAハウスで開催された臨時評議員会で行われた。田嶋幸三副会長と原博実専務理事の2人が立候補し、75人による投票の結果40票を獲得した田嶋氏が、34票の原氏を僅差で上回った(白票1)。3月27日の役員改選で大仁邦弥会長の後任として、正式に新会長に選任される田嶋氏は「本当に身の引き締まる思い。マニフェストを確実に実行していくことも含め、私に科せられた課題は多々ある。今の日本サッカーは決して順風満帆ではないと思っているが、しっかりとした道をもう一度築きたい」と所信表明した。

 従来は「次期役員候補推薦委員会」が候補者を決めて理事会が承認、評議員会が追認する形式だったが、今回の会長選は国際サッカー連盟(FIFA)の規約に沿って初めてオープンな選挙が導入された。立候補するためには「理事による投票」(1人)で選ばれるか「評議員7名以上の推薦」(複数名可)が必要で、田嶋氏は理事28人による投票(19対9)で理事会から擁立され、評議員7名以上の推薦を得ていた原氏は「評議員推薦」という形で出馬した。

 75人の評議員に理事は含まれておらず、47都道府県協会や昨季J1の18クラブ、JリーグやJFLなど関連10団体の代表者で構成される。理事投票よりも接戦となった結果を受け、田嶋氏は「僅差ということも含めて、そこはわきまえながらやるし、原専務の出しているマニフェストも私のとかぶるところが多々あったので、そこは一緒にやっていかなければいけない」と引き締まった表情で述べた。一方、過半数まであと一歩に迫った原専務理事は「多くの方に投票していただいたことには感謝している。手探りで全く分からない中で自分なりのやり方でやってきた。お互いが意見を出してやる会長選は、自分が出たことによって意味があったかなと思う」と、昨年12月1日に立候補を届け出てからの2カ月間を総括した。

 両者とも現職の協会幹部ということもあり、お互いが掲げる政策や公約に大きな違いは出なかった。その中でも最も意見が分かれたのが「シーズン移行」の問題だ。2019年からの実施を目指すと公言する田嶋氏は、欧州の主要リーグとJリーグの間での移籍が活発になることに加え、2020年東京オリンピックの前に準備期間を確保しやすい点、冬開催となる2022年ワールドカップ・カタール大会に合わせやすいメリットを主張している。ただし、過去には原専務理事もメンバーに名を連ねる「将来構想委員会」で検討しながらも、降雪地での実現が難しいことなどを理由に見送られてきた経緯がある。

 今後は再び議論が加熱することが予想されるが、田嶋氏は「シーズン制を変えることが目的ではない。代表チーム強化のためには早めにシーズンを変えることを(Jリーグ等に)検討していただきたいと申し上げている。それに対する答えがノーということもあり得る。もしノーという答えだったら、カタールW杯の時はどうやって10月くらいに(シーズンを)終わらせるかを考えないといけない。あくまでもそれぞれの団体のガバナンスをリスペクトして決めていただく。会長が決めたことが全部そのように決まる組織ではいけない」と周囲と協調して話し合っていく姿勢を示した。

 今回はシーズン移行に対する両候補の見解が投票結果にも影響したとみられる。田嶋氏は「(一部評議員に)シーズン制を変えないで欲しいと言われたのも事実。でも何かを主張するとき、必ず反対する人もいるのは当然。全ての方に甘い言葉をかけることはできない。やれることとやれないこと、言わない方がいいかなということも(政策で)文字にした。逆にそのことがよかったと思うし、(U-23日本代表の)団長として公務をこなしたことも評価されたと思っている」と冷静に受け止めた。

 今後はJFAの会長職と国際サッカー連盟(FIFA)理事を兼務することになる。日本は2020年フットサルW杯、2021年FIFA総会、2023年女子W杯の開催を目指しており「全て通ったら日本ばかりになるのでどうなるか分からないが、FIFAの意思決定の場にいることで招致活動は非常にやりやすくなる。FIFA、AFC(アジアサッカー連盟)理事だからこそ得られる情報もあり、ここ(JFA)で会長だからこそ向こうでの発言力も増す。その立場を利用することが日本サッカーの利益につながる」と前向きに捉える。

 これまでJFAの常務理事、専務理事、副会長をはじめ、日本体育協会評議員や日本オリンピック委員会(JOC)常務理事といった役職も歴任してきた。年間予算が200億円を超える巨大組織のトップに立つ58歳の新リーダーは「47都道府県を中心にJリーグや各種連盟が上にあり、そのトップに代表チームや協会がくるような図がよく描かれるが、その逆で一番下から支えるのが日本サッカー協会だと思う。そのことを忘れずにやっていかなければいけない」と重責を担う覚悟を口にした。

文・写真=田丸英生(共同通信社)

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO