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【インハイプレビュー】偉大なOBを超えられるか…心に残る攻撃サッカーで全国制覇を(藤枝東)

2018.07.31

藤枝東は10番の坂本康汰らを中心としたコンビネーションで相手DFを切り崩す [写真]=吉田太郎

 選手権優勝4回、インターハイ優勝2回の名門・藤枝東を率いる若き指揮官、小林公平監督は3年前の悔しい思いを忘れていない。就任1年目だった小林監督はインターハイ予選準々決勝で敗退するなど結果が出なかったことから、選手権予選ではショートパスを判断。テンポ良く繋いで相手の守りを崩す伝統のパススタイルではなく、勝利に固執したサッカーを選択して激戦区の静岡県予選を突破した。しかし、チームは全国初戦で香芝(奈良)の守りを崩せず、PK戦で敗れてしまった。

 藤枝東は地区大会1回戦から厳しい目を持つOBや地域のファンが多数グラウンドに集まる。どこよりも勝利を求められるチームだけに、当時の判断は決して間違ってはいなかった。藤枝東のプライドを持って戦い、それに応えた選手たちも立派だった。ただ、「ウチらしくないサッカーをして全国に出てしまった」という思いが今も指揮官の胸の中にあるのは確かだ。

 迎えた今回のインターハイ予選、藤枝東は見る側もプレーする側も楽しいサッカーを展開した。延長戦までもつれ込んだ決勝では、清水桜が丘との壮絶な打ち合いを5-3で勝利して観衆を沸かせた。前評判の高かった清水東や浜松開誠館などと同居した激戦ブロックを藤枝東らしく堂々と戦い、勝ち上がって全国切符獲得。「あの」選手権以来となる全国の舞台でも彼らは自分たちのサッカースタイルを貫き、なおかつ勝利も手にするつもりでいる。

 強力ドリブラーのMF平尾拳市朗は「自分たちは昔からのスタイルである繋ぐスタイルでやっていきたいと思っている」。全体的に小柄な選手が多い印象だが、2年生ながら伝統の10番を背負うMF坂本康汰をはじめ、抜群の突破力を持つ平尾拳、163cmのテクニカルMF山本竜輝、U-15日本代表候補歴を持つ実力派レフティー・MF田村祐二朗らが狭い局面を個やショートコンビネーションで切り崩していく攻撃は爽快だ。

 そして県大会で4戦連発のパワーシューター・FW井上燎哉やパワフルなSB平出海ら力強さで違いを生み出す選手もいる。加えて、DF鈴木大河やGK小川陣を中心に粘り強い守備。「みんなにチャンスあるぞ」(小林監督)という実績関係なしの起用法もチームの競争力を高め、雰囲気を向上させている。

 元U-17日本代表DFの小林監督が2年生、MF長谷部誠が3年生だった2001年のインターハイで藤枝東は全国準優勝。静岡の名門はそれ以来となるインターハイファイナリスト、日本一になることが目標だ。W杯で日本中に感動を与えた偉大なOBのように、今回は観ている人の心に残るような攻撃サッカーを全国舞台で展開して頂点を勝ち取る。

文=吉田太郎

By 吉田太郎

サッカー専門媒体を中心に、主に育成年代の取材活動を展開。

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