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浦和レッズユースが「インテンシティ」の高さを発揮し、Jユース杯を初制覇

2015.11.16

 23回目の2015Jユースカップは浦和レッズユースの優勝という形で幕を閉じた。ポゼッションスタイルに傾注するチームが多い中で、シンプルにロングボールを蹴ることをいとわず、セカンドボールを回収して試合を支配していくスタイルを貫徹。いわゆる「インテンシティ」の高さによって大会を制圧してみせた。

 今シーズンから「育成年代でリーグ戦文化が浸透してきたことを受けて」(村井満Jリーグチェアマン)一発勝負のみ、予選リーグを廃した完全ノックアウト方式に移行したJユースカップ。参加53チームが「負けたら終わり」で戦い抜く形式は、冬の全国高校サッカー選手権大会に近くなったと言えば分かりやすいかもしれない。その中で「走れる強さ」を打ちだした浦和ユースが栄冠を手にしたのは、必然の要素もあったように思う。

 もっとも、決勝だけ観ていた人にはクエスチョンマークの浮かぶ言説かもしれない。この試合の浦和ユースは正直に言って、大会で一番悪い出来だったのではと思われるパフォーマンスだったからだ。「決勝って、こんなに走れなくなるんですね」と苦笑いを浮かべたのは、浦和ユースの大槻毅監督。「試合前からハアハア言っている選手がいて、『あれ、こいつらおかしいぞ』とは思っていた」と言うが、こればかりはどうしようもない。ファイナルが持つ独特の空気の中で、パフォーマンスが落ちてしまうのも「これも経験」(同監督)ということだろう。

 決勝で目立ったのはもう一つの強みのほうだ。ゴール前で体を張って、最後の最後で粘り強く守るという、古きよき浦和らしさは存分に見せた。DF小木曽佑太、DF橋岡大樹のセンターバックコンビ、ボランチのMF中塩大貴といった強健な肉体を持つ選手たちが、その肉体のポテンシャルに頼るのではなく、限界まで引きだして体を張って守る。今大会、「こりゃ、終わった」というシーンでしのぐシーンが何度も観られたが、単に運が良かったという話ではないだろう。「それしかできないから、それをやっているだけ」と大槻監督はうそぶくが、普段からの積み重ねなくして、こうした舞台でそのプレーが出てくるはずもない。

 今シーズンは高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プリンスリーグ関東で降格の危機に瀕し、夏の第39回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)は出場すらできなかった。夏休みには朝4時起床で3部練が続く地獄のレッズランド合宿を敢行するなど、ある意味で古典的なアプローチもしながら、選手の心身を鍛え直してきた。正直に言えば、大会前の時点で浦和ユースの優勝はまったく予想していなかったが、ここまでの勝ち残りを観てきた立場から言えば、この優勝は決して「たまたま」ではなく、必然性を伴ったものだった。

文・写真=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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