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【インタビュー】コロナ禍におけるクラブ活動。その変化と未来|ガンバ大阪〈前編〉

2020.09.04

「#ホームで勝とう ~ガンバとともに~」プロジェクト 写真提供=ガンバ大阪

 先月の臨時実行委員会において、9月末まで観客数5,000人を上限として公式戦を開催することを決めたJリーグ。コロナ禍での困難なリーグ運営は今後もしばらく続きそうだ。一方で、日々の感染防止対策や制限下での試合運営などの対応に追われるクラブは、財政面だけでなく、情報発信やプロモーションにおいても大きな打撃を受けるとともに、新しい生活様式を視野に入れた“変化”を求められている。

 4月7日の緊急事態宣言の発令から約5カ月。未知の状況下で試行錯誤しながら活動を続けてきたクラブの取り組みについて、ガンバ大阪の竹井学氏(顧客創造部企画課 集客イベント・デジタルマーケティング担当課長)、奥永憲治氏(広報課課長)、西尾智行氏(広報課)にオンライン取材を行った。


 また、スポーツ業界で活躍できるクリエイティブ人材を養成する『CREATIVE GYM supported by デジハリ・オンラインスクール』をサポートするガンバ大阪。サッカー界に求められる、また一緒に仕事をしたいと思える人材像についても話を聞いた。

──まずコロナ禍での取り組みについて伺います。緊急事態宣言が発令された4月、全国規模で自粛や制限が求められる中、クラブとしてどのような活動に取り組まれたのでしょうか?

奥永 仕事や学校だけでなく日常生活にも自粛を求められ、医療従事者の皆さんをはじめ大変な状況下で仕事をされている方もいる中、これまでいかに我々が恵まれた環境だったか、様々な方に支えられながらクラブ活動ができていたかを改めて実感しました。その中で“恩返し”と言うとおこがましいかもしれませんが、ガンバとして何か楽しみを届けられないか、パートナーやホームタウンの皆さんに少しでも貢献できないかと考え、立ち上げたのが「#ホームで勝とう ~ガンバとともに~」でした。

──「#ホームで勝とう」プロジェクトでは、打倒コロナを呼びかけるメッセージ動画の発信にはじまり、パートナー企業やホームタウンの支援など多岐にわたる施策を行いました。

奥永 自粛期間においては、我々はもちろん、選手も試合どころか練習もできない状況でしたが、ガンバを通じて、ファンの皆さんに少しでも自宅で楽しんでもらえるコンテンツを届けようと。選手自身に写真や動画を撮影してもらったり、YouTubeに出演してもらったり、選手たちの協力を得ながらコンテンツを発信できた中で少なからずファンの皆さんに喜んでいただけたのかなと思います。また、全国的に企業経営が危ぶまれる中、パートナーやホームタウンの方々の売上に貢献できるように、通常はスタジアム限定で販売している選手コラボメニューのテイクアウト販売、公式サイトでのホームタウンの店舗紹介などを行いました。我々としては、試合がない中でもガンバを忘れてもらわないようにしなければいけませんし、苦しい状況だからこそ「ガンバを応援していて良かった」「ガンバがこの街にあって良かった」「ガンバのパートナーになって良かった」と思っていただけるように、できることに取り組みました。

──その一方で、リモート環境に移行する中での取り組みとあって、施策を行う上では様々な困難もあったと思います。

奥永 そうですね。正直、リモートワークを導入した当初は悪戦苦闘しましたが、慣れれば意外とスムーズに対応できることも多かったので、これを機にリモートの活用は進んでいくと思います。ただ、ファン・サポーターとのリモート交流という点で言うと便利である反面、サポーターの皆さんにとっては物足りなさもあったのかなと。やはり選手に直接会えない寂しさは当然あると思いますし、そこを100パーセント補うのは難しいと感じました。とはいえ、SNSをはじめ様々なチャンネルを通じて幅広い層にアプローチし、今まで交流がなかった方々とも接点を持てたことはリモート施策ならではだったとも思います。今後も当面はリモート環境が続くと思いますが、いつの日か今までのような日常が戻ってきたとしても、現在のリモート施策をなくすのではなく、リアルな交流と掛け合わせて継続していきたいと考えています。

「#ホームで勝とう ~ガンバとともに~」ではファンとの交流だけでなく、コロナ禍で苦しむパートナーやホームタウンの方々を支援する施策も実施
写真提供=ガンバ大阪

──リモート施策では、これまでと比べて情報発信やプロモーションの方法も大きく変わったと思います。SNSの普及に加え、このコロナ禍によって変化のスピードはさらに加速している印象です。

西尾 おっしゃるとおり、変化してきていると思いますし、SNSの普及によってクラブ独自で行えることの幅は確実に広がりました。SNS上にはサポーターはもちろん、まだガンバに関心のない方々にアプローチできる環境もありますからね。ただ、世の中には無数のアカウントがあり、その中でユーザーの方は関心があるものだけをフォローできるので、しっかりと見てもらえる、楽しんでいただけるコンテンツを作らなければいけないという課題もあります。

竹井 今まで(新型コロナウイルス感染拡大前)は、スタジアムに来ていただくことが一つの目標で、どちらかと言えばコアなお客様向けのプロモーションを行っていました。もちろん、それと同時に交通広告などを活用して、新しいお客様を増やすためのアプローチも実施してきましたが、SNSには両方の層が混在しています。だからこそ、SNSそのものの活用の仕方や(ターゲットに合わせた)使い分けがより大切だと感じています。

──その意味では、発信するクリエイティブの重要性も増していると思います。

竹井 そうですね。こだわりという点で言えば、例えば掲出期間などがあらかじめ分かっているポスターを作る時のほうが内容や構成、訴求するポイントなどをじっくり考えられる面はあります。一方、SNSなどのクリエイティブは印刷会社等とのやりとりもなくスピーディーに制作できますが、SNS上には無数のクリエイティブが溢れているぶん、インパクトや差別化が大事になります。

奥永 インパクトという意味で心掛けていることの一つは“旬”です。例えば、シーズン途中に加入した昌子源、直近の試合で活躍した若手選手を、すぐに次節のクリエイティブに起用するなど、紙媒体では難しかったタイムリーさ、臨機応変さというSNSならではのメリットを生かすことは意識しています。ただ、デジタルのクリエイティブは、紙媒体のように一つひとつじっくりと時間を掛けるわけにはいかないので、クラブとしてのカラーやクオリティーにこだわりたい反面、スピード感も必要なぶん、そこのバランスは非常に難しいですね。

竹井 例えば、大阪ダービーや“ナショナルダービー”とも呼ばれる浦和レッズ戦など、シーズンの中でも特に重要な試合では、クリエイティブ以外にもプロモーション動画などを作り込み、サポーターの皆さんと一緒に試合へのモチベーションを高めていくというこだわり方もしていますが、すべての試合で同じことをしても飽きられてしまいます。やはり何を伝えるか、何を重視するかを明確にした上で使い分けることが大切。特にSNSはスピード感が大きな要素としてあるので、取って出しとは言わないまでも、試合直後に情報を発信したり、舞台裏から生中継したり、ということも大事かなと。

SNSの普及によってクリエイティブも多様化する中、“旬”や“使い分け”をキーポイントに各SNSで情報を発信している
写真提供=ガンバ大阪

──情報発信の幅が増える中、より一層ターゲットやチャンネルに適したコンテンツが求められていると。その中で多数のクリエイティブを作らなければならない今、スポーツ業界・サッカー業界にはこれまで以上にクリエイティブ人材が求められていると感じますか?

奥永 そう思います。SNSをはじめ様々なツールが普及する中、クリエイティブの種類も量もどんどん増えています。我々もその変化に合わせないといけませんが、すべてを内製することはできないので、そういった人材のニーズは今後さらに増えていくのではないかと感じています。

──ちなみに、クラブとしてお付き合いしたいと感じる人材像については、どんなお考えをお持ちですか?

竹井 イメージしたものを作れるスキル、構成や色合いなどを組み立てられるセンスはベースとして必要だと思いますし、ゼロから作り出せるクリエイティビティも大事ですよね。あと、たまに「自分がいいと思ったモノが、いいモノだ」という感覚の方もいますが、独りよがりにならないバランス感覚も必要かなと。こだわりが強すぎてクライアントが伝えたいことが伝わらないようではダメですし、逆にこだわりがなさすぎて言われたとおりに作るだけではクリエイティビティがないと感じてしまうかもしれませんから。

奥永 あとは、やっぱりサッカーに愛情があるほうがうれしいです。愛情が強すぎるのも良くないですが(苦笑)、全くサッカーを知らない方に依頼をするのは、さすがに抵抗が……。愛情とは言わないまでも、理解しようという姿勢は望みたいですね。スポーツが好きだからといって、必ずしもスポーツの仕事ができるわけではないでしょうし、全く違う分野で仕事をすることもあると思います。そういった時に、その分野に興味を持ったり、勉強してみたりというポジティブな姿勢を感じられる方のほうが一緒に仕事をしやすい。特にクリエイティブなモノは本人の思いが作品にも表れると思うので、未知の分野であっても理解しようとする姿勢は大事かなと。どの分野であれ、そこに愛がある人と、そうでない人とではクリエイティブも変わってくると思います。

西尾 2人が言ったことが、ほとんどすべてです(笑)。クライアントの意向を理解しようとする姿勢というのは私も大事だと思いますし、特に長くお付き合いするとなると、関係性を作ることも重要ですからね。自分なら、ポジティブにサッカーやガンバに興味を持ってくれる方と、お付き合いしたいなと思います。

<後編>はこちらから

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By サッカーキング編集部

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