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【祝 アジアビーチゲームズ初優勝 スペシャル対談】ビーチサッカー日本代表 茂怜羅オズ×後藤崇介「ビーチサッカー日本代表 出場全選手が大会を振り返る!」

2016.10.25

文・写真=Noriko NAGANO

 2016年9月24日~10月3日、ベトナムのダナンで開催された「第5回アジアビーチゲームズ」のビーチサッカーで日本代表が初優勝した。全試合にスタメン出場し、チームの勝利に貢献した日本代表キャプテン茂怜羅オズとエース後藤崇介、そして、試合に出場した日本代表メンバーに大会を振り返ってもらった。

※アジアビーチゲームズは、アジアオリンピック評議会(OCA)が主催するアジア地区でのビーチスポーツの総合競技大会で、2年に1度の開催。ビーチサッカー日本代表は、第2回大会から参加し、前回大会では準優勝、今大会で初のアジアチャンピオンに輝いた。

茂怜羅オズが開会式の旗手に


後藤崇介 開会式の雰囲気はすごかった。オリンピックみたいに聖火リレーがあって、ベトナム人選手がジェットスキーで海から聖火を運んできた。


茂怜羅オズ 自分が日本選手団の先頭で旗をもって入場して、すごく嬉しくて楽しかった。オリンピックの会場にいるような感じがした。ちょうど日本が入場するときに雨がすごく降ってきて、びしょびしょになったけど。


後藤崇介 そうそう、各国が入場して、日本の時に超大雨になってその瞬間、観客がバーッと出ていっちゃった(笑)。

暑くて雨が多いベトナムの気候でのプレー


茂怜羅オズ ベトナムは違うグループで、当たるとしたら決勝戦ぐらいしかなかったから、大会前にベトナムの砂で一回練習試合ができたらってことで、ベトナムと練習試合をやった。砂が浅くてやりづらかったけど、大会前に試せてよかった。


後藤崇介 大会中は雨が多くて、練習試合の時も雨で、オーバーヘッドをすると、痛いくらい砂が硬かった。砂はブラジルに似ていて、白くて細かくてさらさら、すごくきれいだった。雨が降ると固まるけど、雨が降らなかったら最高の砂。あと、めちゃ暑かった。


茂怜羅オズ 夜は涼しいけど、昼間は暑くて沖縄みたいだった。トレーニングが終わった後は、すぐにみんなでホテルのプールに入って、クールダウンしていた。

参加12か国が3チームずつに分かれてグループステージを戦った
◆グループステージ初戦 日本11-0(4-0、2-0、5-0)アフガニスタン


茂怜羅オズ 相手はどんなサッカーをしてくるか分からなかったけど、日本代表はタヒチ戦(9/17・18国際親善試合)で強いチームに勝って自信をもっていたので、監督が決めた作戦をみんなでしっかりやって、チャンスをいっぱい作って、今までは決められなかったゴールを決めた。だから、点差が11-0ですごかった。


後藤崇介 ベトナムに着いてから大会まで5日くらいあったから、午前はフッチバレーとか軽めのメニューをやって、午後はちゃんとしたトレーニングをやった。ゆっくりする時間もあって、いいコンディションで初戦を迎えられた。アフガニスタンは、ビーチサッカーというより格闘技みたいな感じで、首とか掴んできてコンタクトがすごく激しかった。


茂怜羅オズ アフガニスタンはビーチサッカーの経験があまりないようなプレーで、砂の上でサッカーをやっている感じだった。後藤が3点、自分も1点決めた。後藤の1点目は、自分のパスを練習通りに決めてくれた。


後藤崇介 3点決めたうち2点はPK。オーバーヘッド体勢に入っているのにぶつかってきて、PKをもらって2本決めた。PKは練習で腐るほど蹴っているから、緊張はぜんぜんしなかった。

◆グループステージ第2戦 日本7-2(3-0、2-2、2-0)中国


後藤崇介 キックオフ直後の先制点は、日本の戦術のひとつで、大場崇晃のパスをジャンピングボレーで練習通りにとれた。3点目は、試合の流れの中で松尾那緒弥のいいパスが来たので、思い切ってジャンピングボレーしたら入った。


茂怜羅オズ 中国は何回も対戦しているのでよく分かっている相手で、日本が4-0でリードしたあと、流れが悪くなって中国に2点とられた。そこから、またみんなでやり直して、最後はいい感じで勝てた。

グループステージを突破し、マルセロ・メンデス監督が以前指揮したUAEと対戦
◆準々決勝 日本6-2(1-1、3-1、2-0)UAE


後藤崇介 マルセロが日本代表の監督になるまで指揮をとっていたUAEで、向こうも一番負けたくない相手だったと思う。マルセロが日本代表監督になって、2回対戦して1回も勝てていなかったから、「監督に勝たせてあげたい」という思いをみんなもっていたと思う。


茂怜羅オズ 2年前のインターコンチネンタルカップで負けて、前回のビーチゲームズではPKで負けた。その悔しさもあって、監督もずっとUAEに勝ちたかったと思う。


後藤崇介 先制点は、キックオフシュートがこぼれて自分で打とうとしたけど、大場が逆サイドで空いていたから、パスを出したら決めてくれた。最近、先制点はキックオフシュートでとれることが多い。UAE戦のオズの同点ゴールもキックオフシュートだったよね?


茂怜羅オズ そう。1-2でリードされたすぐあとにキックオフシュートを決めて、2-2にした。そこから6-2で勝った。勝って、監督もすごく楽になったし、笑顔が見られて本当によかった。監督は優勝したみたいに喜んでいた。これまで日本は、いつもいい試合をしながら結果を残せなかったけど、最近は毎月、練習や遠征があって、合宿でいろんな強いチームと対戦して、自信をつけた。日本代表は間違いなく強くなっている。

◆準決勝 日本6-5(2-2、4-1、0-2)レバノン


後藤崇介 レバノンはそんなに難しい相手じゃなかったけど、これまでやってきた自分たちのサッカーがうまくいかなかった。


茂怜羅オズ そんな中でもチャンスでしっかりと決めて6点とって勝てた。相手に先制されたけど、みんな落ち着いていて、どの選手がピッチに入っても、自信をもって勝負していた。

決勝戦、思いのこもったゴールの連続
◆決勝 日本4-3(2-1、0-1、0-0、延長2-1)オマーン

3分、大場のボレーで先制。1-0
4分、GK照喜名辰吾からのパスを受けたオズが中に切れ込んで豪快ミドル。2-0
4分、相手のキックオフシュートが決まり1点差。2-1
15分、同点ゴールを許す。2-2
2-2で延長戦へ突入。延長1分、ゴールを決めたのはオズ
延長1分 茂怜羅 3-2
延長2分 大場 4-2
延長2分 失点 4-3

延長1分、右サイド、遠目からのFKのチャンス。オズの蹴ったボールは、美しい弧を描いてゴールに吸い込まれ、満員の観客を魅了した。

「人生の中で一番大事なゴールになった」


茂怜羅オズ あのFKは練習通り。合宿の中でもああいう蹴り方を練習してきた。あの距離でもコースがちょっと空いていて、いいところに入ってよかった。前回のW杯予選で決めたFKがこれまで一番大事なゴールだったけど、今回のゴールは、自分の人生の中で一番大事なゴールになった。

タイトルを手にして


茂怜羅オズ ずっと、早くタイトルをとらないといけないというプレッシャーがあって、今、楽になった。今年初めの合宿から監督は「今年は絶対にビーチゲームズのタイトルを日本に持って帰ろう」と言ってきた。JFAがいろいろサポートしてくれているけど、結果を残さないと、合宿や海外遠征が増えていかないことをみんな分かっていた。今まで日本代表が優勝したことのない大会で歴史を作りたかった。


後藤崇介 W杯に行けると言われていたフットサル代表は行けなかったし、サッカー日本代表も苦戦している中で、ビーチサッカーは絶対にW杯に行きたいから、この時期にアジア予選と同じような大会に参加できて、すごくいい機会だった。


茂怜羅オズ おいしいご飯を食べたときに、もっと食べたくなるのと一緒で、日本代表の選手としてタイトルをとって、歴史を作ってこれで終わりじゃなくて、これからもっともっとタイトルをとりたい。日本の人にビーチサッカーのことを知ってもらえるように、もっといろいろやっていきたい。


後藤崇介 点をとり続けることができて今が一番楽しい。ビーチサッカーが好きで楽しいけど、結果がともなってきたらもっと楽しくなる。もっともっと上を目指して頑張りたい。

今大会、ふたりは全試合にスタメン出場し、後藤は8得点、オズは5得点をマーク。タイトルをとらなければならないプレッシャーの中で、キャプテンのオズ、エースの後藤は、それぞれの責任を果たし、終始笑顔の対談になった。

アジアビーチゲームズが終わって間もなくチームに戻ったふたりは、今年2つ目のタイトルを獲得。新潟県の柏崎を本拠地とするビーチサッカーチームFusionに所属し、共に練習を重ね、全国大会で初優勝するまでにチームを引き上げた。

最後にお互いの印象を聞くと、オズは、後藤のことを「ゴール」だと言った。オズが後ろで守れば、後藤が点をとってくれる。一方の後藤は、オズのことを「心臓」だと言う。後藤がゴールを取れない苦しい時には、オズがゴールをとってくれる。互いに助け合って日本代表を強くしていく。

【アジアビーチゲームズ ビーチサッカー日本代表優勝メンバー】


GK1 照喜名 辰吾(ソーマプライア)

最近は海外遠征が増えて、15名くらいの選手が国際経験を積んでいて、海外でもいつも通りのプレーができるし、誰が入ってもある程度できて、得点力も高くなっている。

ベスト8のUAE戦は結構苦しかったけど、最後の最後に得点を重ねて6-2で勝った。シュートを打てる選手が代表に入っているので、大事な時に誰かがとってくれる。今、相当いいチームになっている。

新しく入ってきた選手がチームとしてやるべきことを素直に聞いてやってくれるからまとまりがいいし、決勝も2-2で延長までいったけど、ぜんぜん負ける気がしなかった。


GK2 河合 雄介(ソーマプライア)
周りからは日本がとるだろうと言われて、それがプレッシャーになっていたけど、一人一人が気持ちをもって試合に臨めた結果、とれたメダルだと思う。

砂がさらさらでやりづらさがあったが、2試合目からしっかり修正できたことが大きかった。準決勝のUAE戦では、途中から入って、FKもしっかり止められて、失点しなかったことがよかった。

決勝は2-2の緊迫する場面でピッチに立ったが、それほど緊張せず、得点につながる前線へのスローや何本かシュートも打てた。シュートは決めきれなくて残念だが、勝ててよかった。


FP7 田畑 輝樹(東京レキオスBS)

2011年にAFCビーチサッカー選手権でチャンピオンになってから代表で長い間タイトルをとれていなかったので、優勝できて素直に嬉しい。

レバノン戦は、楽にゲームが進められると思っていたが、途中からうまくいかないことが多く、あれよあれよと詰め寄られた。その苦しい中でも勝ててよかった。

決勝はやっぱりあの雰囲気の中で、お互いに知り尽くしている相手で難しい試合になると分かっていたが、立ち上がりからいい形で得点でき、いいゲーム運びができた。延長になっても勝てる自信があった。優勝できてよかった。


FP3 原口 翔太郎(Inter Japan BS)

一人一人が役割をこなし、チームのために戦った。オフにもしっかりコミュニケーションがとれて、すごくいい雰囲気だった。
みんな勝利を信じてプレーできたし、それが結果につながったと思う。

鬼門だったUAE戦で1得点1アシストできて、自分の中ですごくいい出来で、そこで勝てたことが大きい。

今まで自分が結果を残して代表に残りたいというイメージだったが、今はチームを勝たせたいというプレーに変わった。W杯予選に向けてチームのためにやれることをやっていきたい。


FP6 松尾 那緒弥(アヴェルダージ熊本BS)

UAE戦は、ここを倒せば最後までいけるだろうというのがあって、みんな気持ちが入っていた。シュートを打ってDFに阻まれる惜しい場面があって悔しかったけど、勝って嬉しかった。
次のレバノンは、日本のいいところ消してきたけど、日本は攻撃のアクセントをつけて得点を奪って、たたみかけることができた。自分もいい時間帯に得点に絡めてよかった。

決勝は失点ができなかったので、守備の意識を強く持ちながら、攻撃も狙っていた。みんなが集中を切らさずにやれて、延長戦で押し切れた。前回は準優勝で悔しかったので、初の優勝で嬉しかったのと、絶対にとらないといけないというのがあったので、安心した。みんなで喜べて、いい空気を味わえた。


FP9 赤熊 卓弥(ドルソーレ北九州)

優勝しないといけないというプレッシャーが常にあったし、期待に応えないといけないというのがあった。決勝は接戦で延長までいって、どっちに転ぶか分からなかった。もっとできると思ったが、まだまだだというのを感じた。チームが勝って優勝した瞬間は嬉しかったけど、悔しいと思った。

タイトルをとって当り前という中で、ノルマをクリアしたというのがあるが、マルセロが来て初のタイトルだったので嬉しかった。でも、目指しているのはそこじゃないし、マルセロももう次を見ているだろうから、切り替えてやっていかないといけない。


FP5 中原 勇貴(アヴェルダージ熊本BS)

タヒチ戦からずっとチームはいい雰囲気で決勝までいけた。特にUAE戦は気持ちの入る試合で、自分もアシストできて力になれたかなと思う。勝ったときは優勝したみたいにみんな喜んで、マルセロも選手一人一人に抱きついて喜んでくれた。

去年、全国大会で銅メダルをもらったけど、金メダルは初めて。今年の3月に代表に初めて呼ばれて、今回大きな大会で金メダルをとれて、両親も本当に喜んでくれた。

代表に入ってから、試合以外も緊張しっぱなしなので、正直、帰ったらどっと疲れが出るけど、代表合宿は勉強になるので楽しみ。頑張って代表に残ってW杯にいきたい。


FP8 大場 崇晃(ドルソーレ北九州)

今まで最後の一戦で負けていたので、あの瞬間を待っていた。優勝した瞬間は本当に気持ち良くて、言葉にできないような感情になった。どこにも負けないチーム力が出来上がっていて、チームとしても個人としても自信をもっていた。監督や選手一人一人の信頼関係ができていたので負ける気がしなかった。

レバノン戦は難しい試合になったけど、苦し紛れでも点をとって勝てたところは、チームとしての成長が見えた。アジア予選に向けて、王者というよりは、まだチャレンジャーとして挑むべきなのかなと個人的には思う。ただ、より上を目指すという意味で、その先のW杯を見据えながら日々のトレーニングをしていきたい。


マルセロ・メンデス監督

日本に来てから積み上げてきたものの成果が少しずつ出てきていると感じながらも、これだという形になるものが今までなかった中で、今回の優勝は本当に大きかった。

ポイントになったのはUAE戦で、今までUAEと2回戦って、2回とも自分たちが優勢だったのに負けて、今回は生き残りをかけた試合で当たって、選手たちには相当なプレッシャーがかかったと思う。勝って、試合内容も非常によかったので選手たちを祝福した。

決勝も選手たちがいいプレーをしていたので、勝てるという安心感があった。セットプレーから失点はしたが、全体的には自分たちが支配していたし、あとは勝利をつかむだけだった。

今まで、自分たちはもっとできると強く信じることが大事だと言い続けてきて、選手たちは自信をもってプレーできるようになってきた。アジア予選に向けてもいい準備をしていきたい。

By サッカーキング編集部

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