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国内最大のトレーニングセンター復活へ…Jヴィレッジの復興プロジェクトを公開

2016.08.30

『Jヴィレッジ復興プロジェクト』の記者会見に“復興サポーター”が集結(左からラグビーW杯2015日本代表の大野均さん、日本ラグビーフットボール協会の岡村正会長、内堀雅雄福島県知事、日本サッカー協会の田嶋幸三会長、サッカー女子日本代表の高倉麻子監督、澤穂希さん)

 29日、JFAハウスで『Jヴィレッジ復興プロジェクト』キックオフ記者会見が開催された。会見には、福島県の内堀雅雄知事、日本サッカー協会の田嶋幸三会長、日本ラグビーフットボール協会の岡村正会長が登場。さらに、サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)の高倉麻子監督、元なでしこジャパンの澤穂希さん、ラグビー・ワールドカップ2015日本代表で東芝ブレイブルーパスの大野均さんが登場。6名は“復興サポーター”として、2011年に使用停止となったJヴィレッジの活動再開をサポートする。会見では、それぞれが持つJヴィレッジへの思いを語った。

 会見冒頭、「私たちには夢があります。Jヴィレッジを震災前のように緑あふれるグラウンドに再生することです」と、内堀知事は胸の内を明かした。

 Jヴィレッジは1997年に日本初のサッカー・ナショナルトレーニングセンターとして福島県双葉郡に開設。天然芝のサッカーコートや多目的フィールドはもちろん、宿泊施設も充実し、これまで日本代表やJリーグクラブなど、多くのチームが強化合宿などに利用してきた。しかし、2011年の東日本大震災発生により福島県は甚大な被害を受けた。さらに、原発事故によりJヴィレッジはすべての業務を休止。以降、原発事故収束のための拠点として使用されてきた。今回の復興プロジェクトでは、2020年の東京オリンピックに向けて始動し、2018年夏の一部営業再開、翌年4月の全面解禁のグランドオープンを目指している。

2019年4月のグランドオープン時の完成予想図

2019年4月のグランドオープン時の完成予想図

 会見に登場した復興サポーターの面々も、それぞれが営業再開へ思いを胸に秘めている。

 澤さんは、「日本代表の強化合宿など、長い期間Jヴィレッジで汗をかき、良いトレーニングができたと思っています。良い合宿があったからこそ、世界でも良い結果を残せたと思う」と語った。

 史上初の決勝トーナメント進出を果たしたアテネ五輪、ベスト4に駒を進めメダルまであと一歩に迫った北京五輪では、いずれも本戦前にJヴィレッジで強化合宿を行った。国際舞台で活躍できず、不遇の時代も味わったなでしこジャパンだが、Jヴィレッジとともに1段ずつ階段を駆け上がった。震災の影響でJヴィレッジが使用停止になってからも、その歩みは止まらず、2011年にはW杯優勝、2012年はロンドン五輪準優勝と、大舞台で結果を残してきた。

「今後、Jヴィレッジでたくさんの大会をしていただいて、1人でも多く世界で活躍する選手が増えてくれることを願っています」と、未来の後輩たちに思いを託した。

澤さんは現役時代、Jヴィレッジで多くの合宿を行った。「良い合宿があったからこそ、世界でも良い結果を残せた」と数多くの功績を振り返った

Jヴィレッジで多くの合宿を行った澤さんは「良い合宿があったからこそ、世界でも良い結果を残せた」と現役時代を振り返った

 福島県郡山市出身の大野さんも、Jヴィレッジには特別な思いがある。「初めてJヴィレッジを訪れたのは、2004年に初めてラグビー日本代表に選出されたときでした。日本代表として初めての合宿で、非常に緊張しながら門をくぐったことを覚えています」と、当時を振り返った。

「Jヴィレッジはトレーニング、リカバリーともに素晴らしい施設が整っているだけではなく、食事面でも福島県の食材を使って美味しいものを提供していただき、ラグビーのトレーニングに集中できました」

 ラグビー日本代表は昨年、イングランドで開催されたW杯の初戦で、強豪南アフリカを破る金星を挙げるなど3勝をマーク。“歴史的3勝”と呼ばれた快挙は、空前のラグビーブームを巻き起こした。大野さんは現在38歳の大ベテランだが、新生Jヴィレッジのグラウンドに立てる日を心待ちにしている。

「Jヴィレッジの復興が福島のみならず、東北全体の復興のシンボルとなることを期待し、私自身も新しいJヴィレッジのグラウンドで、プレーヤーとして汗を流すことを強く希望します」

ラグビー日本代表の大野さんは、地元のJヴィレッジから2019年に日本で開催されるW杯を目指す

福島出身のラグビー日本代表の大野さんは、Jヴィレッジグラウンドに立てる日を心待ちにしている

 一方、今後の課題からも目を逸らすことはできない。内堀知事は最大の課題として“風評”を挙げた。

「Jヴィレッジは避難区域にあったため、“原発事故終息の拠点”というイメージが強く残っています。風評を払拭して、生まれ変わったことを実感していただいて、安心して使ってもらえるようになるには時間が必要だと思います。正確な情報を皆さんに示して、スケジュールに沿うよう整備を進めながら、笑顔で使っていただけるような環境を整えることが我々の大事な仕事だと考えております」

 それでも、内堀知事は「Jヴィレッジ内の除染はすでに完了しています。また、原発事故対応拠点機能を外に移す作業も今年度中に完了します」と、安全性と復興への確かな歩みを強調した。

内堀福島県知事(写真中央)は懸念される風評に対し「Jヴィレッジ内の除染はすでに完了しています」と安全性を強調した

内堀福島県知事(写真中央)は懸念される風評に対し「Jヴィレッジ内の除染はすでに完了しています」と安全性を強調した

 数年後に待ち構える国内のビッグイベントに向け、国内最大のトレーニングセンターの復興が待たれる。風評などクリアすべき課題は残るが、“震災前よりもさらに魅力的なトレーニングセンター”をコンセプトに、国内初の人工芝1面サイズ全天候型練習場を新設予定。この施設の総工費には22億円を要するが、今年6月、日本スポーツ振興センターから、15億円のスポーツ振興くじ助成金(toto助成金)を受けることが内定。残りの7億円は全国の個人、団体・企業から寄附金を募り、最高の状態でグランドオープンを目指す。

新設予定の国内初の人工芝1面サイズ全天候型練習場

国内初の人工芝1面サイズ全天候型練習場を新設予定

 なお、寄附金はJヴィレッジサポーター事務局から応募可能。日本スポーツ界のさらなる発展と、福島県復興のシンボルへ。国内最大のトレーニングセンターの再スタートに今後も注目したい。

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