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今季JリーグMVPのG大阪MF遠藤保仁が34歳になっても輝き続ける理由とは?

2014.12.22

遠藤は34歳になった現在でもトップレベルのプレーを続けている [写真]=Getty Images

文/元川悦子

「4回目のアジアカップ? 特に何とも思っていません。ただ、結果を求められる大会だし、アジアカップとかワールドカップを経験した選手が多くなるのはしょうがない。(代表監督が)アギーレさんになって初めて選ばれた選手たちとうまく融合しながらやっていきたいと思います」


 15日に発表された2015年アジアカップ(オーストラリア)に挑む日本代表メンバー23人。このリストに順当に名を連ねた34歳のベテラン・遠藤保仁(G大阪)は、いかにも自然体の彼らしく、飄々とした口ぶりでこうコメントしたという。

 2002年11月のアルゼンチン戦(埼玉)で国際Aマッチデビューを果たした遠藤は、2004年中国大会を皮切りに、2007年東南アジア共催、2011年カタールを経験。今回、4度のアジアカップに参戦することになった。3回出場というのは、中村俊輔や中澤佑二(ともに横浜=2000年レバノン、2004年、2007年)など何人かいるが、4回となると彼以外には見当たらない。遠藤の果たす役割も各大会ごとに異なっているのだ。

 最初の2004年は、欧州組が中村俊輔ら数人しか参戦できなかったこともあり、遠藤はボランチのレギュラーに繰り上がり、福西崇史とコンビを形成。しかし、準決勝のバーレーン戦(済南)ではレフリーの不可解な判定から一発退場を宣告され、中田浩二(鹿島)にポジションを明け渡すことになる。その中田浩二が準決勝、決勝・中国戦で連続ゴールを決めたことで、遠藤にとってはほろ苦い結末だったかもしれない。それでも、彼にとっては数々の国際大会に踏み出す貴重な一歩となったのは間違いない。

 次の2007年はイビチャ・オシム監督にとっての最初で最後の国際大会だった。遠藤は主に4-4-2の2列目を中村俊輔とともに担い、攻撃の中核として奮闘。酷暑の中、指揮官から学んだ「考えながら走る」というスタイルを前面に押し出した。中盤からダイナミックな飛び出しでゴール前へ何度も飛び込んでいくアグレッシブさはそれまでの遠藤には見られなかったもの。本人も「オシムさんとの出会いが自分を大きく変えてくれた」と繰り返し語っているが、それを具現化した場とも言える。結果的には準決勝でサウジアラビア、3位決定戦で韓国に敗れ、4位に甘んじたが、彼自身にとっては1つの転換点。30代半ばになっても第一線で生き残っていられるのは、この2007年の経験が大きいだろう。

 そして2011年はザック監督の最初の国際大会。2010年南アフリカワールドカップでベスト16入りを果たした選手の大半が残り、遠藤も長谷部誠(フランクフルト)と4-2-3-1の鉄板ボランチを形成。全試合にフル出場し、アジア制覇の原動力となった。MVPは本田圭佑(ミラン)が受賞したが、攻撃の組み立て役だった遠藤が取ってもおかしくないほど絶大な存在感を示した。この時、彼は30から31歳になる時だったが、年齢による衰えは全く感じられなかった。

 あれからさらに4年が経過し、同世代の選手が次々と現役引退する時代に突入した。同じ79年組の中田浩二がユニフォームを脱ぎ、高原直泰がJ3のSC相模原を退団することになり、稲本潤一(川崎)も小野伸二がプレーするJ2のコンサドーレ札幌移籍を決めた。長年、遠藤とともに日本代表をけん引してきた中村俊輔も今季は体調不良などでスタメン落ちする試合があり、30代半ばの選手がトップレベルを維持するのは簡単ではない。

 それでもなお、遠藤が代表の主力として輝き続けていられる理由は、大きく言って2つある。1つは大きな手術を伴うようなケガをしていないこと。遠藤の鹿児島実業時代の恩師・松沢隆司前総監督も「ヤットのボディにはガタがない」と太鼓判を押していたが、確かにこれまでの負傷は筋肉系がほとんどだ。「丈夫な体に生んでくれた両親に感謝したい」と彼は9日にMVPを受賞したJリーグアヴォーズの壇上で話していたが、これほど屈強な肉体を持つ選手はやはり少ない。それは絶対的な強みと言える。

 もう1つはさまざまな変化への対応力だ。代表だけでもフィリップ・トルシエ(杭州緑城監督)を筆頭に、ジーコ、オシム、岡田武史(FC今治代表)、ザッケローニ、アギーレと6人の指揮官で異なるポジションやスタイルを求められてきたが、遠藤は要求に対して違和感を持たずにすんなりと受け入れこなし、80点以上のパフォーマンスを見せてきた。その柔軟性と安定感、インテリジェンスは他の選手にはない長所だろう。

「彼なら38歳になる2018年ロシア・ワールドカップも行けるのではないか」と多くの人に思わせてしまうから、まさに怪物としか言いようがない。その大ベテランがオーストラリアでどのような老獪さを見せてくれるのか。今から楽しみだ。

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