2013.05.17

乾、香川、清武、柿谷──。セレッソのDNAが夢想させる日本代表の可能性

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文=前田敏勝 Text by Toshikatsu MAEDA
Photo by Getty Images

■セレッソで開花した《ゴールデンコンビ》
 近年のセレッソ大阪で育まれた若き才能、乾貴士、香川真司、清武弘嗣といった選手たちが、2012年10月12日、フランス・サンドニの地で、日本代表というトップカテゴリーの試合で初めて揃い踏みした。香川だけでなく、同世代の、ともに桜色のユニフォームに袖を通した逸材たちが、今や日本代表をリードする存在になりつつある。彼らが揃った姿を、その流麗なコンビネーションを、14年ブラジル・ワールドカップの舞台で見たいと望む声は、日に日に大きくなってきている。
 
 今でこそ、才能豊かなアタッカーの宝庫として脚光を浴びているセレッソだが、そのポジションが大いにクローズアップされるようになったのは、J2時代の08年6月に遡る。乾がセレッソの一員となり、香川との絶妙なコンビネーションが作り上げられたところから始まったといっても言いだろう。若き才能を躊躇なく登用し、彼らの自由な発想を生かすような攻撃的なスタイルを実践するレヴィー・クルピ監督の下、若干20歳そこそこだった彼らが、まばゆい輝きを放ち出したのだ。
 
 08年の後半戦だけですっかり定着していた乾と香川の《ゴールデンコンビ》。当初から、「すごく息も合っている。距離感も分かりあえて、良い形でプレーできている」(香川)、「本当に良い刺激を受けているし、良いパートナーでもあり、良いライバルでもある」(乾)という2人は、09年でも、更に進化を遂げていく。
 
 そのキーワードは「2シャドー」。08年終盤からのシステム、3─4─2─1の「2」の部分に彼らが入ったことで、お互いの距離が近くなり、その想像力豊かなプレーが際限なく広がっていったのだ。ドリブル、パス&ゴー、ワンツー、スイッチプレー、小気味良い連係の数々が、J2を席巻した。当時、解説者だった野々村芳和氏(現コンサドーレ札幌代表取締役社長)からは、「キャプテン翼の『翼くん、岬くん』みたいだ」と言われたほど、この2人の間には、《あうんの呼吸》というものが流れていた。
 
 チームメートであり、右サイドから彼らのプレーを常に目の当たりにしてきた酒本憲幸は、こう話す。「あれ(乾と香川のコンビプレー)が、がっつりハマった時には、誰も止められない。やっていること、パス交換自体は、別に難しいことをやっているわけではないんですが、交換する時のスピード感がハンパない。シンプルといえばシンプルな突破ですが、難しいことをしない時が一番止められない。そうなってきたら、後ろから見ていても、ホンマに楽しい(笑)」
 
 ただし、09年にサイドハーフを担っていた酒本らは、彼らをフォローする大変さも味わっていたようだ。「(乾と香川は)速すぎるんです。(当時のセレッソが)3バックで、僕らがサイドにいるんですが追い付けないからボールが来ない。2人がスピーディーすぎて……(苦笑)」(酒本)
 
 あのパスワークやアグレッシブな動きができるのは、彼らが常に走り続けている証拠でもある。乾も香川も、練習から人一倍走っていた。試合中でも、「立ち止まってる姿は、あまり見たことがない」(酒本)というほど、常に動き続けていた。そして、乾や香川の良さは、攻撃のバリエーションが多岐にわたること。

「パスが止まった時でも彼らは《個人》でいける。パス交換にはこだわってないというか、どっちかが良い状態であれば、シュートを打てる。《やりすぎない》というのが良かったんちゃうかなと思います」(酒本)
 
 その年、香川がJ2得点王となる26ゴール、乾が20ゴールをマークする活躍を見せたことで、セレッソはJ1へ復帰。J1でも2人のコンビに世間は熱狂するかと思われたが、主力が入れ変わったこともあり、序盤戦では連係がかみ合うまでに時間を要した。しかし今度は、家長昭博(現ガンバ大阪)という抜群のキープ力を備えた実力者を加え、「3シャドー」という布陣に移行すると、再び攻撃が活性化。香川は12試合7得点という結果を置き土産にドイツへ渡った。

■桜色の哲学が生む1+1+1=無限大
 香川が旅立った後には、ケガから復帰した清武がそのポジションに入った。すべてのプレーにおいてハイレベルかつコンスタントに力を出す大分育ちのMFも、「俺らはチョコチョコした(細かい)プレーが好きなタイプ。ピッチをあんまり広く使うより、中で細かくプレーするし、ボールの出すところやタイミングが合うのでやりやすい」と語るように、中盤の連動性は保たれ、結果的にセレッソはJ1で初めて3位に入り、アジアチャンピオンズリーグ出場権を獲得した。

 乾も当時、「真司はどっちかというと1人で長く持つタイプ。キヨは持つ時もあるけど、それでリズムができるからやりやすかった。上手いし、強いし、速いので」と清武のことを絶賛していた。それだけに、「やっぱり4人(乾、香川、家長、清武)で一緒にやりたかった」(乾)という想いも募る。
 
 そして11年夏には乾がドイツへ戦いの場を移した。『レヴィーセレッソ』の代名詞とも言える《チョコチョコ》した多彩な攻撃は、《生え抜きの至宝》柿谷曜一朗たちの手によって、今シーズンも継続されているのだ。
 
 よくレヴィー・クルピ監督は「芸術的なサッカーで勝利する」と言うが、そのフィロソフィーこそが、乾、香川、清武、そして柿谷ら、若き逸材たちの創造性を引き出し、サッカーファンを魅了するプレーを実現させてきた。この多彩さは、日本代表の攻撃に更なる希望の光を当てるような、「1+1+1=無限大」という可能性も秘めているのではないだろうか。
 
 また、彼らの特長は、ただ攻撃するだけに限らない。とにかくチームのために献身的な姿勢を見せ続けるからこそ、チームメートからの信頼も厚い。乾に関して、酒本はこう評する。
 
「乾は見たまま。サッカーが好きで、自分のやりたいプレーにこだわりは持っている。でも、あいつが自己中(心的)というイメージは、僕はない。来たボールは(味方に)返すし、(相手に)取られたボールは絶対に自分で取りに行く。抜かれても、必死で追い掛け回してきますし(笑)。ディフェンスへの切り替えがまた速かった」
 
 前線の選手に求められるファーストディフェンスも、乾たちは積極的にきっちり行っている。それが、ショートカウンターでの攻撃や、ポゼッション率を高めることにもつながっていた。

 セレッソの小菊昭雄コーチも「レヴィー(クルピ監督)は、攻撃では本当に自由を与える代わりに、守備のタスクに関しては、すごく要求が高い」と言うように、練習中から、ゴールやアシストという目に見える『結果』のみならず、前からのプレスも徹底的に要求してきた名伯楽のもと、足を止めることなく動き回る彼らのプレーが確立されたのだ。
 
 09年J2第10節カターレ富山戦で、唯一、先発で乾、香川、柿谷が並んだ試合があった時は、激しい風雨という悪条件もあり、トリオでの連係を生かしきることはできず、悔しい思いもした。しかし、あれから4年の歳月が流れた。日本代表で10番を背負う香川はマンチェスター・ユナイテッドでプレミアリーグ優勝を経験。ブンデスリーガにいる乾(フランクフルト)と清武(ニュルンベルク)は、ともにチームの主軸として攻撃を牽引。そして、セレッソで8番を担う柿谷も、ゴールに一番近いFWのポジションで公式戦11試合6得点(4月25日現在)と活躍中だ。それぞれがたくましさを増し、結果を残している。プレーだけでなく、精神的にも成長している今だからこそ、彼らの融合を、日本代表で、W杯という檜舞台で見たいのだ。

「真司はもちろん中心になっているから出るだろうけど、乾、キヨ、(柿谷)曜一朗も見てみたいですね。(彼らが揃うと)絶対に強いと思うけどな……」
 
 セレッソ一筋11年目となる酒本の想いは、セレッソ関係者やサポーターだけではなく、すべての人たちに通じる願いだ。14年、ブラジルの地で日本が世界を魅了する、その中心で、《桜》が咲き誇ることを願ってやまない。

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