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【対談】志賀雄太 × ☆Taku Takahashi「『TSUBASA+』はサッカーファンに寄り添う」

2020.10.30

miraire代表取締役の志賀雄太氏(左)と☆Taku Takahashi氏(右)

 9月30日、スペイン、イギリス、ドイツ、イタリア、フランスといった欧州のサッカー強豪国で、『TSUBASA+』(ツバサプラス)がリリースされた。ご存じ『キャプテン翼』の世界観を体感しながらマップ上を動き回り、スマートフォンのGPSと連動してプレイするリアルワールドゲーム(位置情報ゲーム)だ。そして本日10月30日、ついに日本を含む37カ国でのリリース日を迎えた。すでにプレイしているという『キャプテン翼』ファンも多いだろう。

 だが、どうもこのゲーム、『キャプテン翼』だけが売りではないらしい。「6000人を超える実在選手が登場」、「JリーグはJ1からJ3まで網羅」、「サッカーファンのライフスタイルに最適化した作り」と、聞けば聞くほど“サッカー愛”がぎっしり詰まっている。それもそのはず。作り手が相当なサッカーフリークなのだ。開発会社である株式会社miraireの代表取締役を務める志賀雄太氏と、BGMやSE(効果音)などすべての「音」を担当した☆Taku Takahashi(m-flo, block.fm)氏に、『TSUBASA+』の魅力を聞いた。

インタビュー・文=関口 剛

『TSUBASA+』のDLはコチラから!

――まずはお二人の“人となり”を明らかにしていこうと思います。志賀さんは株式会社miraireの代表取締役をされていますが、どんな会社なのでしょう?
志賀 2017年に生まれた若い会社で、創業のきっかけは『ポケモンGO』を作った株式会社ナイアンティックとの関わりでした。『ポケモンGO』は2016年に世に出て社会現象を巻き起こしたわけですけど、リリース後の地方自治体との連携という部分でお手伝いをしていたんです。それで、「この分野はすごくおもしろい」と感じて。もともと開発会社をやっていたのもあって「リアルワールドゲーム専門の会社を作ろう」と思い、立ち上げたのがmiraireです。

――志賀さんご自身のサッカーとの関わりは?
志賀 全然うまくはないんですけど、小学校の頃からサッカー部でした。海外サッカーもJリーグも好き。もう、ずっとサッカーファンです。同時に、サッカーゲームファンでもありますね。だから「リアルワールド×サッカー」という今回の『TSUBASA+』には、個人的にもすごく思い入れがあります。

――Takuさんはいかがですか? 音楽クリエイターやプロデューサーとしての活躍は皆さんが知るところだと思いますが、サッカーとの関わりは?
Taku プレーの経験はないんですが、「ドーハの悲劇」の頃からハマっていって、「ジョホールバルの歓喜」で火がついた感じです。Jリーガーの友人もたくさんいるんですが、応援するクラブはなく、いわゆるニュートラル。でも、とにかく日本代表が好きで、ゲームをする時も日本代表しか使いません!

――語気の強さにこだわりを感じます(笑)。サッカーのどんなところに魅力を感じますか?
Taku 選手個々のプレーというよりは、相手をどう崩していくかという戦術、戦略の部分のほうが好きですね。もちろん、シュートが決まった時のカタルシスはありますけど、ビルドアップのようにパスをつなぐプレーが好き。あと、トラップがうまい選手が好きなのと、ボールを持っていない選手の動き、ポジショニングを見るのも好き(笑)。

――もうあれですね、サッカー大好きですね(笑)。その好きが高じてサッカー関連のお仕事も多くされていますよね? 特に印象に残っているものは何ですか?
Taku ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)のアンセムを作ったことですね。今も使っていただいていますし、非常に名誉なことだと思っています。

サッカーとリアルワールドゲームは相性がいい


――お二人のサッカー愛は伝わったと思うので(笑)、『TSUBASA+』の話に移りましょう。そもそもゲームの構想が生まれたのはいつ頃だったのでしょうか?
志賀 2016年の秋から暮れにかけてですね。

――発想の原点は、やはり『ポケモンGO』によってリアルワールドゲームが一大ブームになったこと、志賀さんがサッカー好きであったこと、という?
志賀 そうですね。位置情報を使ったゲーム自体はかなり昔からありましたが、『ポケモンGO』が革新的だったのは、自分たちの街全体がゲームフィールドになるという点です。ただ、正直、僕自身は「ポケモン世代」ではないので、ゲームとしては楽しいんですが、周りから「カビゴンってすごいんだよ!」と言われてもあまりピンと来なかった(笑)。『ポケモン』で言うモンスターが、自分にとって最も身近なサッカー選手だったら、「うおっ! あの選手が出た!」と楽しめるんじゃないかと。

――確かに、サッカー好きなら確実にテンションが上がりますね。
志賀 それに、「これはすごいけど、これはすごくない」となるとつまらないので、多様性があってチョイスがたくさんあるほどおもしろい。「強い」だけじゃなくて、「好きな選手」とか「思い入れのある選手」という指標でそれぞれの楽しみ方ができるサッカーは、うってつけなんじゃないかと思ったんです。それに、サッカーは地域スポーツですから、リアルワールドゲームと非常に相性がいい。

――サッカーファンは地元のクラブ、選手を大事にしますし、いろんなユーザーの「地元」が世界中にあるわけですからね。ちなみに、実在の選手とは別に、『キャプテン翼』のキャラクターを登場させようと考えたのはなぜですか?
志賀 ゲームですから、ファンタジーな部分も必要だと考えたんです。何より世界的に認知されているキャラクターですから、アンバサダーという側面にも期待しています。『TSUBASA+』は世界各国でリリースされるゲームなので、『キャプテン翼』を象徴的に使いたいな、と。

Taku 僕は、元フランス代表の(ティエリ)アンリが『キャプテン翼』を見ていたと聞いて、衝撃を受けました。『キャプテン翼』が始まったのは野球ブームの頃で、Jリーグもない。それなのにこれだけ世界中でヒットするって、やっぱりすごいですよね。

“ジャンル”の良さを踏襲しながら独自性を出す


――構想から丸4年の時を経て、ついに『TSUBASA+』が世に出たわけですが、開発にあたって特に大事にしていたことは何ですか?
志賀 まず言いたいのは、『ポケモンGO』をすごくリスペクトしているということです。当然、「パクリじゃん」みたいな声があるのは理解しています。『ポケモンGO』のベースにある仕組みは、普遍性があって楽しいものです。つまり、シューティングゲームにおける『スペースインベーダー』のように、“ジャンル”を確立したわけです。ユーザーの遊びやすさを考えると、そのジャンルが持つベースは生かしたい。でも当然、『TSUBASA+』の独自性を出す必要もある。一方で、違いを出しすぎるとジャンル自体が違うものになってしまう。開発中は、ずっとそのせめぎ合いでした。

Taku 僕は、『ポケモンGO』と『TSUBASA+』には大きな違いがあると思っています。『ポケモンGO』には「外に出よう」というコンセプトが前面に出ていると思うんですが、『TSUBASA+』はサッカー好きの人たちのライフスタイルを強く意識したデザインになっているんです。サッカーが好きな方が、通勤中にほかのサッカー好きとつながれたり、スタジアムで試合開始を待つサポーター同士がつながれたり。実際にプレイして、伝えようとしているコンセプトは全然違うものだなって感じました。

――Takuさんは、ゲーム中のBGMやSEのすべてを担当されたそうですね。
Taku そうですね。かなり密にミーティングをしながら、「こういう動作に対しても音を入れたらどうですか?」と提案をしたり、ディスカッションしながら制作しました。

――音を作るにあたって、大事にしていたことは何ですか?
Taku ゲーム音楽では、BGMで「今、プレイヤーがどのモードにいるか」が分かることが大事なんです。その部分の統一性を取ったり、一番長く流れる音楽が不快にならないように気をつけました。

――過去にサッカーゲームの音楽を担当されたことはあるんですか?
Taku 『ウイニングイレブン』(編集部注:『ワールドサッカー ウイニングイレブン10』)がありますね。ただ、あの時はオープニングテーマだけだったので、ここまで本格的に全体のプロデュースを手掛けたのは初めてです。志賀さんが「通常のゲームBGMの概念は忘れてください。Takuさんがスタイリッシュだと思うものにしてください」と言ってくれたので、すごくやりやすかった。クラシックなダンスミュージックのビートを入れたり、今っぽいビートを入れたり。いろいろな要素を入れられて楽しかったですね。

志賀 割と乱暴に振ってしまったんですけど(笑)、出来上がったものを聞いて、「来たな!」って感じでした。昔からTakuさんの音楽を聞いていますけど、昔から“新しい”んです。今の時代でも、やっぱり新しい。本当にずっと聞いていられる音楽だと思いますし、そういう部分でゲームのコンセプトにもマッチしているなって。

気持ちのいい操作性にはこだわり抜いた


――改めてお聞きしたいんですが、『TSUBASA+』の最大の魅力は何だと思いますか?
志賀 先ほどTakuさんが言ってくれましたが、サッカーが好きな方々のライフスタイルに寄り添うことを何より大事にしてきました。サッカー好きの方のリズムってあるじゃないですか。平日から週末にかけてどんどん気分が盛り上がっていって、たまにサッカー友達と会ってサッカー談義したり。たとえばそこで試合以外にもう一つ、「今日この選手を取ったんだぜ」、「今週はこの選手が出た」とか、そういう話題を提供したい。皆さんのサッカーライフが今よりおもしろくなることを目指しました。

Taku サッカーゲームって、操作が難しいというイメージが強いじゃないですか。でも『TSUBASA+』は操作が簡単で、“サッカーが好きだけどサッカーゲームをしたことがない人”でも、すぐに入れる工夫がたくさんある。それに、操作性がすごく気持ちいいんです。開発チームを見ていて、そこへのこだわりはひしひしと感じました。

――気持ちいいとは?
志賀 開発チームには、最初から「“やらされゲー”になったら負けだよね」という話をしていました。ちょっとしたミニゲームなんだけど、延々とやりたくなる。そこを目指そうと。

――“やらないといけないからやってるだけ”みたいなシチュエーション、けっこうありますもんね……。
志賀 そのために、いい意味での難しさは意識しました。かなり育成が進んでいても、ちょっと気を抜くとやられちゃう、みたいな。操作はシンプルなんですが、ハラハラする要素はかなり入れましたね。

――ほかにユーザーが気になるところで言うと、ライセンス面があると思います。『TSUBASA+』はFIFPro(国際プロサッカー選手会)のライセンスを取得していると聞きましたが、実在の選手は何人くらい登場するんですか?
志賀 リリース時点では6400人くらいですね。ライセンス的にはもっと増やせるので、モデリングが追いつき次第、増やしていこうと思っています。

――当然、Jリーグの選手も……?
これは史上初らしいのですが、J1からJ3まで、プロの選手はすべて登場します。

Taku おお。すごい。

――J3まで網羅しているゲームはなかなかないですよね。
Taku 世界のすごい選手を見るのも楽しいと思うんですが、やっぱりサッカーって“地元の誇り”という部分も重要じゃないですか。J3のクラブのサポーターはうれしいですよね。

――ちょっとわかりやすく例を出しながら話をしたいんですが……たとえば僕がFC東京のサポーターだとします。味の素スタジアムに行って『TSUBASA+』をプレイすると……?
志賀 味の素スタジアムの周辺には、いろんなユーザーが作った「スタジアム」があるので、そこにチェックインします。すると5人の選手が登場するので、一人を選んで一対一の対戦をする。勝利すれば、その選手を仲間にできます。

――その5人の選手が誰になるかは、その「スタジアム」がどこにあるかが関係してくる?
志賀 そうです。なので、味の素スタジアム周辺ならばFC東京の選手が優先的に出てくることになります。この5人の選手は3分おきに入れ替わるんですが、ここに裏設定があって……。実は選手の出身高校などもできる限りデータとして反映しているんです。つまり、“FC東京の選手ではないけれど、調布周辺の高校出身である”という選手も出やすくなる。

Taku すごいこだわり(笑)。

――なるほど。それと同じことが各地のスタジアム周辺で起きる、と。さらに言うと、サンチャゴ・ベルナベウやエミレーツ・スタジアムでも同じことが……?
志賀 そうですね。今はまだ新型コロナウイルスの影響があるので実装していませんが、いずれは試合日にだけレアキャラが出るとか、普段と違うユニフォームを着た選手が出るとか、そういったことも考えています。

――『TSUBASA+』がサッカークラブの集客に一役買う、というシチュエーションも起きそうですね。
志賀 いずれは、スタジアムで試合開始を待つサポーター同士が対戦するモードも実装していく予定です。

――自由席の順番待ちをしている時にピッタリですね(笑)。
Taku 僕が一番楽しみにしてるのは、この「サポーターズバトル」なんですよ。「試合前から試合は始まってるんだよ!」みたいな(笑)。

『TSUBASA+』でサッカーファンの裾野を広げたい


――先日、アンドレス・イニエスタ選手が『TSUBASA+』の公式サポーターに就任したことが発表されましたが、その動画内では早くも「2ndバージョン」への言及がありました。2ndバージョンではどんな機能が実装されるんでしょうか?
志賀 まだ構想段階ではありますが、11対11の対戦を実現しようと思っています。1stバージョンのコンセプトは、「最強のイレブンを集めよう」です。サッカー好きなら当然、次は「集めた11人で試合をしたい!」ってなりますからね。

――サッカー好きの気持ちに寄り添ってますね(笑)。
志賀 最初は裾野を広げたかったので、サッカーをよく知らない人でも遊べる仕組みにしました。そういった人たちが、今あるサッカーゲームをプレイするのはやっぱり難しいと思っていて。「日本代表のあの選手が好き」から入って、徐々に他の選手のことを覚えたり、ポジションのことやフォーメーションのことを理解したり、そうやってサッカーにハマっていく方って多いじゃないですか。そういう方にも寄り添えるように、『TSUBASA+』は2段階の方式を取ったんです。

――ゲームのユーザーの裾野という部分だけじゃなく、『TSUBASA+』を通じてサッカーファン自体の裾野を広げる手伝いができるんじゃないかと。
志賀 そうです。

――まさにサッカー愛ですね……。では最後の質問をしたいと思います。『TSUBASA+』を通じて、ユーザーにどんな体験をしてほしいと思いますか?
志賀 サッカーはそれだけで十分に魅力的ですが、『TSUBASA+』によってさらにサッカーがおもしろくなると思っています。サッカーファンがよりつながり合って、よりコミュニケーションが取れて、新しい友だちができたり。そういうプラットフォームやハブとして使ってほしいと思います。

Taku 『TSUBASA+』って、サッカーファンそれぞれのライフスタイルにフィットできるように作られていると思うんです。試合をスタジアムに見に行く人も、見に行かない人も楽しめるし、互いがつながれる。『キャプテン翼』という世界的に知られるキャラクターを通じて、いろんな国の人ともつながれるかもしれない。それに、僕はこのゲームに“余白”を感じるんです。

――余白……?
Taku ユーザーがどう遊んだら楽しいかを考えられるというか。実際にプレイしながら、「こう遊ぶと楽しい」というそれぞれの楽しさが見いだせる。

――位置情報ゲームならではの部分ですね。どこにいるか、どこに行くかでユーザーの体験が変わる。
Taku ゲーム自体もどんどん進化していくと思うので、その過程も楽しんでほしいですね。もちろん、2ndバージョンから始めても楽しめると思うんですけど、始めるなら早いほうがいいですから(笑)。

By 関口剛

1984年、埼玉県生まれ。2014年のブラジルW杯開幕直前にフロムワンに入社。2019年10月から雑誌『SOCCER KING』編集長に。2023年に退社し、雑誌以外の世界へ活躍の場を広げる。

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