Jリーグサッカーキング放談

スクープ合戦の末に決まった新監督

投稿日時:2010年09月05日 15:12

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スクープ合戦の末に決まった新監督
新たなチャレンジに挑む指揮官に注目したい

写真=足立雅史


 日本代表の新監督にイタリア人のアルベルト・ザッケローニ氏が正式に決まった。南アフリカ・ワールドカップ終了後から話題を集め続けた監督人事が、ようやく一段落した形だが、今回の日本代表監督を巡るスポーツ紙のスクープ合戦には辟易したというのが正直なところだ。

 ザッケローニ新監督の就任会見後、世界中を渡り歩いた交渉担当者に労いの言葉を掛けつつ話を聞いていると、「ファン・バステンとかクーマンとか全く交渉をしていない人の名前がデカデカと見出しになっていて驚いた。どこからそんな報道が出たんだろう」と苦笑いを浮かべていた。僕自身も8月半ばの時点でファンバステン氏の代理人と直接話した関係者に「打診すらないと言っていた」と耳にしていただけに、「やはりそうだったか」と感じた。交渉の途中段階でいろいろな情報が出てくるのは、何者かの思惑が働いているからだろう。最後まで違う人物の名前で押し通したスポーツ紙には、それだけ信頼しうるソースがあったはずだが、スクープ合戦は“誤報”を呼ぶ可能性も高い。今回の騒動は、読む側にもそれを理解しながら文字を追う必要があることを思い知らされたと言える。スクープ合戦の中にあるスポーツ紙は、お互いに「抜いた」「抜かれた」というプレッシャーを感じることで、確実な“裏”が取れていなくても報じなければならないようになってしまった。それが顕著になったのが、一連の“戦い”だった。また、今回は原博実技術委員長を始めとする関係者の口が堅く、交渉状況が漏れてこなかったことも“裏”の取れていないスクープ合戦を呼んだのかもしれない。

 とかく交渉ごとは微妙な駆け引きが重要となる。日本協会からすれば並行して複数の人物と交渉を進めなければならないし、交渉相手は少しでも良い条件を引き出したいと考える。口頭で合意に達したとしてもサインをする瞬間まで油断はできない。

 新監督との交渉がまとまらないまま一時帰国した原技術委員長に「交渉状況が全く見えてこない。どうなっているのか」と問い質した記者がいたが、そんなものが外部に見えたとしたらそれこそ問題だ。このやり取りからもスクープ合戦を強いられている現場の記者がイライラしているのが見て取れた。結果的に“誤報”となってしまったスポーツ紙記者は、ザッケローニ新監督の就任会見で「交渉経緯を教えてほしい」と聞いたが、原技術委員長が「この喜ばしい席でその話題をするべきではない」とバッサリ。大変な交渉を乗り越えてきた責任者を心強く思った。

 何はともあれ、日本代表を任せる指揮官が正式に決まった。98-99シーズンにミランをスクデット(セリエA優勝)に導き、インテル、ユヴェントスなどのビッグクラブを率いてきた名将も、近年はイタリアで思うような結果を残せていない。だが、この夏にはイタリア代表の新監督候補にも名前が挙がっていたほどの人物だという。この4年間は日本サッカー界だけでなく、ザッケローニ監督にとっても重要な期間となる。日本代表で結果を残せば4年後に素晴らしいオファーが舞い込んでくる可能性は十分にあるからだ。61歳でブラジルW杯を迎えるザッケローニ氏は、ブラジル大会後に指導者として大きなチャンスを手にするためにも、日本でのチャレンジをステップとしたいはず。代表チームの監督を任されるのは初めてだが、イタリアでも評判の人格者で、日本を理解しようとする意欲にも溢れている。就任会見で「Jリーグだけでなく、練習も見に行って指導者と話をしたい」と話した点からも新しいチャレンジへの思いを感じた。家族をイタリアに残し、強い意気込みを抱いて単身での日本行きを決意したそうだ。

 今回のようにスポーツ紙が騒ぎ立てたとしても、世界有数のゴシップ紙を持つイタリアでもまれてきたザッケローニ新監督が細かな新聞報道を気にするとは思えない。厳しい視点は持ちつつ、少し長い目で見守ることも必要なのではないだろうか。指揮官生命を懸けて新しいチャレンジを選択したザッケローニ新監督の下、日本代表と日本サッカーがいかなる新境地を切り開くのかに注目したい。
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