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セルジオ越後「日本人が海外に出て行くのは、Jリーグに未練がないからじゃないかな」
投稿日時:2011年08月29日 12:45
[トークショー「日本サッカーの進歩と問題点」
サッカージャーナリスト養成講座 主催)より抜粋]

とりわけ饒舌になる時がある。日本サッカーについて語る際は。
サッカー王国ブラジルから来日して40年近くが経つ。彼の足跡はそのまま日本サッカーの歩みと重なると言って良い。苦しい時代も、華やかな時代も、目にしてきた。だからこそ日本のサッカーが発展するために必要な要素を熟知している。
時に辛辣になる。鋭利な刃物のように、手厳しく切り捨てることも惜しまない。
一刀両断に酷評することも多々あるが、しかし、悪意ではない。そこに存在するのは、長年寄り添ってきたからこそ胸に居座る、日本サッカーの躍進を願う純粋たる愛情だ。本当の意味で日本のサッカーが文化として根付き、世界に追い付くには激しく鞭打つ必要があると確信している。
すべては日本サッカーが強くなるため――その信念に基づいて彼が語り尽くした日本サッカー論を全6回に分けてお届けする。
Jリーグが発足して18年が経ったね。
Jリーグがスタートを切った時、素晴らしい夢があった。一方で、アマチュアからプロに変われるのかという衝突もあって、サッカー界の中でも賛成・反対で完全に分かれていた。でも、「プロ化は無理だろう」という声もある中、Jリーグは10チームで始まった。それはなぜかと言うと、日本サッカーを強くするため。日本代表を何とか世界に出られるようにしようという強い意志があった。
ジーコ、リトバルスキー、リネカー……Jリーグは相当の投資をして世界中から錚々たるメンバーを集めて始まった。まだバブル崩壊前でお金が余ってたからね。そして大フィーバー。思ったよりもずっと衝撃的なスタートを切って、それで、12チーム、14チームと増えて、2002年のワールドカップをきっかけに16チーム、18チームとなっていった。
僕はサッカーを普及させるためにずっと子供の指導をしてきた。Jリーグ開幕前までは、カズ(三浦知良/横浜FC)を始め、子供たちは「プロになるために海外に行きたい」と夢を語っていた。でも、Jリーグが出来てからは小野(伸二/清水エスパルス)の世代を中心に、「Jリーガーになりたい」と言う子供が増えてきて、それは一番良いバロメーターだと思ったね。Jリーグが出来て子供たちが自分の国に夢を持てるようになったのはとても良いこと。日本サッカー、Jリーグを分析する時に、日本の子供たちに何になりたいか、どこのリーグの選手になりたいかを聞けば、その時の社会がどうなっているのかが分かる。残念ながら、今はまた子供たちが「海外に行きたい」と言うようになっているね。
20年近くも経つと課題や問題点もはっきり見えてくる。最初は「企業を表に出さない」、「全部地域を中心にするんだ」という衝撃的な理念でスタートを切った。「子供からプロまで育てるんだ」、「ジュニアの育成機関を作るんだ」という考えは革命的だった。地域密着で子供からフォローしていくという夢は素晴らしかったけど、まだそれが実現しきれてないのは問題点だと思うね。
結局、バブルが崩壊して経済的に落ち込んだ時にそこで我慢できなかったんだよね。プロ化以前のように、もう一度企業を中心にやらなきゃならなくなったところに戻りつつある。日本のスポーツ文化は結局変えられないのかな。リーマンショックや大震災で景気が悪いから仕方ないと言った瞬間に、企業におんぶに抱っこだということを自分たちで認めてしまっている。例えばヨーロッパの国のほうが景気は悪いんですよ、日本よりも。けれどもスポーツは関係ない。要するに、環境も中身も違うから。
でも日本のサッカー界は、不景気だからと言って企業スポーツに戻りつつある。野球はチームのオーナーが力を持ってるから、不景気の中でも何とか頑張っている。それは年俸を見れば分かりますよね。こんな不景気の中でも野球の年俸はすごく上がっていく。でも、サッカーは優勝しても優勝しても上がらない。企業がお金のあるチームはうまくいくけど、大企業のバックアップがないチームは……あれが本来のJリーグの姿だと思う。企業におんぶに抱っこできるチームがあるから、地域との密着性が吹っ飛んでしまっている。最初の理念と完全にずれてしまっている。それが大きな大きな宿題です。
この間、僕は「Jリーグは各チームに会長という存在を作るべきだ」と提言した。会長は選挙で決めて、選挙権はスポンサーとクラブ会員が持つ。社長は親会社から人事で来れば良い。そうすれば、地域とチームの運営のバランスが取れる。18年の間に社長がどんどん代わったから、それは最初の理念も薄れてくる。今の社長さんたちは最初の頃のJリーグの理念なんてほとんど意識していないと思います。それを裏付けるのが、今の社長たちが「コパ・アメリカに選手を出さない」と言い出したこと。自分のチームのスケジュールのほうが日本代表より大事、とそれくらい薄い。そもそもJリーグを発足させた理由が何だったかということを、もう一度、見直すべきだと思う。日本サッカーを、日本代表を強くするためにJリーグを作ったんでしょ。その理念を持ち続けるのはすごく難しいんだろうね。それが現在のJリーグが持っている課題じゃないかな。
Jリーグのクラブが地域と密着していない事実は優勝チームを見れば分かるよね。ここ数年のJリーグで多くのタイトルを取っているのは鹿島だけど、世界的常識で考えたら、鹿島という街の規模で何度も優勝することはあり得ない。鹿島のファンにとっては失礼な言い方になるけどね。世界のように地域とクラブが密着していたら、規模が大きい都市のクラブが強くなるのは当然のこと。クラブをバックアップする人口の多さを考えれば、広島とか福岡とか札幌とか、そういう都市のクラブが鹿島より上位に来なければならない。
でも、日本サッカー界では世界のサッカーの基本としてはあり得ないことが起こっている。だって、見てみてよ、東京のチームが優勝したことは一度もないじゃない。経済的にも人口的にも潤っているはずの首都のクラブがリーグ優勝の経験がないのは、いかに地域と密着していないかを物語っているよね。結局、今のJリーグは企業優先ということ。時間が経てば何とかなるかなと思っていたけど、「どうかなあ?」という感じがしますよね。今もつぶれそうになってきているチームがあって、安定しているのは運営会社が強いクラブだけ。
そもそもは選手が潤わないと。プロスポーツで夢を与えるのは、やっぱり年俸だよ。豪邸の前を通った時、「ここにサッカー選手が住んでいる、だから自分もサッカー選手になりたい」となるのが世界の基本で、夢を与えるというのはやっぱりそういうこと。Jリーグでプレーして、引退して、まだ家のローンを払い切れていないってのが、現在の年俸ですね。クラブにお金がないから、外国人の良い選手はもう日本に来ない。Jリーグのスタート時は夢を与えていた。あのレオナルドも他の有名選手も自ら望んで日本に来た。理由は給料が良いから。それがすべてです。
今、多くの日本人選手が海外に出て行っているのは、Jリーグに未練がないからなんじゃないかな。「どうせこんなもんだったら出て行ったほうがいいよ」ということだと思う。国外に出て行くのには、大きく言うと2つの理由がある。一つは自分の国のリーグより給料が良いから。そしてもう一つは自分の国のリーグがダメになってきたと感じたから。給料が良いからという理由で移籍するのは良いんだけど、Jリーグに見切りを付けて移籍していたら……これは一番困る問題だよ。
〈続く〉
このコラムは、7月23日にサッカージャーナリスト養成講座が主催したトークショー「日本サッカーの進歩と問題点」(司会:青山知雄[『Jリーグサッカーキング』編集長]/出演:セルジオ越後氏、植田朝日氏)の内容を『サッカーキング』掲載用に再構成したものです。
取材協力: 深谷亮太(サッカージャーナリスト養成講座 受講生)
サッカージャーナリスト養成講座 主催)より抜粋]

とりわけ饒舌になる時がある。日本サッカーについて語る際は。
サッカー王国ブラジルから来日して40年近くが経つ。彼の足跡はそのまま日本サッカーの歩みと重なると言って良い。苦しい時代も、華やかな時代も、目にしてきた。だからこそ日本のサッカーが発展するために必要な要素を熟知している。
時に辛辣になる。鋭利な刃物のように、手厳しく切り捨てることも惜しまない。
一刀両断に酷評することも多々あるが、しかし、悪意ではない。そこに存在するのは、長年寄り添ってきたからこそ胸に居座る、日本サッカーの躍進を願う純粋たる愛情だ。本当の意味で日本のサッカーが文化として根付き、世界に追い付くには激しく鞭打つ必要があると確信している。
すべては日本サッカーが強くなるため――その信念に基づいて彼が語り尽くした日本サッカー論を全6回に分けてお届けする。
日本人が海外に出て行っているのは、Jリーグに未練がないからなんじゃないかな
Jリーグが発足して18年が経ったね。
Jリーグがスタートを切った時、素晴らしい夢があった。一方で、アマチュアからプロに変われるのかという衝突もあって、サッカー界の中でも賛成・反対で完全に分かれていた。でも、「プロ化は無理だろう」という声もある中、Jリーグは10チームで始まった。それはなぜかと言うと、日本サッカーを強くするため。日本代表を何とか世界に出られるようにしようという強い意志があった。
ジーコ、リトバルスキー、リネカー……Jリーグは相当の投資をして世界中から錚々たるメンバーを集めて始まった。まだバブル崩壊前でお金が余ってたからね。そして大フィーバー。思ったよりもずっと衝撃的なスタートを切って、それで、12チーム、14チームと増えて、2002年のワールドカップをきっかけに16チーム、18チームとなっていった。
僕はサッカーを普及させるためにずっと子供の指導をしてきた。Jリーグ開幕前までは、カズ(三浦知良/横浜FC)を始め、子供たちは「プロになるために海外に行きたい」と夢を語っていた。でも、Jリーグが出来てからは小野(伸二/清水エスパルス)の世代を中心に、「Jリーガーになりたい」と言う子供が増えてきて、それは一番良いバロメーターだと思ったね。Jリーグが出来て子供たちが自分の国に夢を持てるようになったのはとても良いこと。日本サッカー、Jリーグを分析する時に、日本の子供たちに何になりたいか、どこのリーグの選手になりたいかを聞けば、その時の社会がどうなっているのかが分かる。残念ながら、今はまた子供たちが「海外に行きたい」と言うようになっているね。
20年近くも経つと課題や問題点もはっきり見えてくる。最初は「企業を表に出さない」、「全部地域を中心にするんだ」という衝撃的な理念でスタートを切った。「子供からプロまで育てるんだ」、「ジュニアの育成機関を作るんだ」という考えは革命的だった。地域密着で子供からフォローしていくという夢は素晴らしかったけど、まだそれが実現しきれてないのは問題点だと思うね。
結局、バブルが崩壊して経済的に落ち込んだ時にそこで我慢できなかったんだよね。プロ化以前のように、もう一度企業を中心にやらなきゃならなくなったところに戻りつつある。日本のスポーツ文化は結局変えられないのかな。リーマンショックや大震災で景気が悪いから仕方ないと言った瞬間に、企業におんぶに抱っこだということを自分たちで認めてしまっている。例えばヨーロッパの国のほうが景気は悪いんですよ、日本よりも。けれどもスポーツは関係ない。要するに、環境も中身も違うから。
でも日本のサッカー界は、不景気だからと言って企業スポーツに戻りつつある。野球はチームのオーナーが力を持ってるから、不景気の中でも何とか頑張っている。それは年俸を見れば分かりますよね。こんな不景気の中でも野球の年俸はすごく上がっていく。でも、サッカーは優勝しても優勝しても上がらない。企業がお金のあるチームはうまくいくけど、大企業のバックアップがないチームは……あれが本来のJリーグの姿だと思う。企業におんぶに抱っこできるチームがあるから、地域との密着性が吹っ飛んでしまっている。最初の理念と完全にずれてしまっている。それが大きな大きな宿題です。
この間、僕は「Jリーグは各チームに会長という存在を作るべきだ」と提言した。会長は選挙で決めて、選挙権はスポンサーとクラブ会員が持つ。社長は親会社から人事で来れば良い。そうすれば、地域とチームの運営のバランスが取れる。18年の間に社長がどんどん代わったから、それは最初の理念も薄れてくる。今の社長さんたちは最初の頃のJリーグの理念なんてほとんど意識していないと思います。それを裏付けるのが、今の社長たちが「コパ・アメリカに選手を出さない」と言い出したこと。自分のチームのスケジュールのほうが日本代表より大事、とそれくらい薄い。そもそもJリーグを発足させた理由が何だったかということを、もう一度、見直すべきだと思う。日本サッカーを、日本代表を強くするためにJリーグを作ったんでしょ。その理念を持ち続けるのはすごく難しいんだろうね。それが現在のJリーグが持っている課題じゃないかな。
Jリーグのクラブが地域と密着していない事実は優勝チームを見れば分かるよね。ここ数年のJリーグで多くのタイトルを取っているのは鹿島だけど、世界的常識で考えたら、鹿島という街の規模で何度も優勝することはあり得ない。鹿島のファンにとっては失礼な言い方になるけどね。世界のように地域とクラブが密着していたら、規模が大きい都市のクラブが強くなるのは当然のこと。クラブをバックアップする人口の多さを考えれば、広島とか福岡とか札幌とか、そういう都市のクラブが鹿島より上位に来なければならない。
でも、日本サッカー界では世界のサッカーの基本としてはあり得ないことが起こっている。だって、見てみてよ、東京のチームが優勝したことは一度もないじゃない。経済的にも人口的にも潤っているはずの首都のクラブがリーグ優勝の経験がないのは、いかに地域と密着していないかを物語っているよね。結局、今のJリーグは企業優先ということ。時間が経てば何とかなるかなと思っていたけど、「どうかなあ?」という感じがしますよね。今もつぶれそうになってきているチームがあって、安定しているのは運営会社が強いクラブだけ。
そもそもは選手が潤わないと。プロスポーツで夢を与えるのは、やっぱり年俸だよ。豪邸の前を通った時、「ここにサッカー選手が住んでいる、だから自分もサッカー選手になりたい」となるのが世界の基本で、夢を与えるというのはやっぱりそういうこと。Jリーグでプレーして、引退して、まだ家のローンを払い切れていないってのが、現在の年俸ですね。クラブにお金がないから、外国人の良い選手はもう日本に来ない。Jリーグのスタート時は夢を与えていた。あのレオナルドも他の有名選手も自ら望んで日本に来た。理由は給料が良いから。それがすべてです。
今、多くの日本人選手が海外に出て行っているのは、Jリーグに未練がないからなんじゃないかな。「どうせこんなもんだったら出て行ったほうがいいよ」ということだと思う。国外に出て行くのには、大きく言うと2つの理由がある。一つは自分の国のリーグより給料が良いから。そしてもう一つは自分の国のリーグがダメになってきたと感じたから。給料が良いからという理由で移籍するのは良いんだけど、Jリーグに見切りを付けて移籍していたら……これは一番困る問題だよ。
〈続く〉
このコラムは、7月23日にサッカージャーナリスト養成講座が主催したトークショー「日本サッカーの進歩と問題点」(司会:青山知雄[『Jリーグサッカーキング』編集長]/出演:セルジオ越後氏、植田朝日氏)の内容を『サッカーキング』掲載用に再構成したものです。
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