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ジーコの悩みは、ザックの悩みになり得る
投稿日時:2010年10月13日 17:33
写真=足立雅史
似ているなあ、と思うのだ。
「この勝利によって、選手たちがそれぞれの実力を信じて、自信を深めてもらえるようになればいいと思う。このチームには高いクオリティを持った選手が多いが、それに気付いていない選手が多い。自分たちが持っているものを信じてほしい」
アルゼンチン戦後の記者会見で、ザックことアルベルト・ザッケローニ監督はこう語った。0-0で引き分けた韓国戦後のインタビューでも、同じような話をしている。
「我々はすごくいいチームだ。ただし、自分たちの才能に気付いていない選手もいるし、このチームがもっと良くなると信じていない選手もいる。成長できることをみんなで自覚して、もっと強くなっていきたい」
日本人は高いクオリティを持っている。彼らに欠けているものは、自分たちもできるんだという自信だ──ザックが伝えたいこととほぼ同じ見立てを、2002年の日韓W杯からドイツW杯までの4年間にわたって聞いた。公式の記者会見で、ラフな雰囲気の囲み取材で、個別のインタビューで、ジーコ元監督は「日本人だってできる」と繰り返した。ブラジルやドイツのメディアに掲載された記事でも、日本人選手の可能性を高く評価していた。
日本代表を率いた時間のかなりの部分において、ジーコは向かい風にさらされた。「戦術がない」とか「選手任せ」と言われた。ジーコに言わせれば、選手の自主性を大切にしていたということになる。だが、最低限の約束事さえはっきりしなかったのは事実であり、その意味では「選手任せ」という指摘は免れない。
ジーコに誤算があったとすれば、海外組のコンディションがなかなか揃わなかったことだろう。チーム結成当初は中田英寿がパルマ、中村俊輔がレッジーナ、小野伸二がフェイエノールト、稲本潤一がフルアムで、それぞれレギュラークラスの活躍を見せていた。ところが、チーム事情やケガなどに翻弄され、4人がトップフォームで代表に戻ってくる機会は減少してしまう。また、欧州ベースの海外組に加わっていく高原直泰、柳沢敦、大久保嘉人、中田浩二らも、所属クラブで苦闘の日々を送っていく。彼らの足並みはいつも、ひどくバラバラだった。
テストマッチで海外組をできるだけ長く起用し、試合のなかでコンビネーションを高めていくジーコの目論見には、チーム結成から1年ほどで亀裂が生じてしまうのである。彼らを試合で使う第一義的な目的は、コンビネーションの熟成からコンディションのアップへ、しばしば置き換えられてしまったのだ。これでは、約束事が生まれるはずもない。
ザック率いるチームの海外組の比率は、ジーコのチームの最盛期に肩を並べる勢いだ。しかも、長谷部誠、本田圭佑、香川真司、長友佑都、川島永嗣はレギュラーで、松井大輔、内田篤人、阿部勇樹もコンスタントにピッチに立っている。所属クラブで苦しんでいるのは、いまのところ森本貴幸くらいだ。


写真=足立雅史
「ドイツでいろんな試合を、アウェイの雰囲気の強い中でもやってるんで、普通に、全然余裕を持ってやれた」
こう語ったのは内田である。駒野友一の負傷退場で急きょ巡ってきた出場機会にも、まったく動じることがなかったという。「海外に行く」だけでなく「試合に出る」ことで、若い選手たちは経験と自信を深めている。
しかしながら、かつてのジーコの悩みは、ザックにとって他人事でないはずだ。海外組が所属クラブでポジションを失ったり、ケガで戦線離脱することは起こりうる。海外組だけではない。コアメンバーと考えるJリーガーが、何らかの事情で代表の戦力に成り得ないことだってあるかもしれない。
ブラジル人のジーコに比べて、イタリア人のザックは戦術に細かい。「選手任せ」と言われるようなことはないだろうが、代表監督としての真価が問われるのはこれからである。
彼らはまだ、わずか2試合を指揮したに過ぎない。
【戸塚啓】1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の 国際Aマッチは91年から取材し、2000年3月からは183試合連続で取材中。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。著書には 『マリーシア(駆け引き)が日本のサッカーを強くする(光文社新書)』、『世界に一つだけの日本サッカー──日本サッカー改造論』(出版芸術社)、『新・ サッカー戦術論』(成美堂出版)などがある。2010年9月、最新著書『覚醒せよ、日本人ストライカーたち』(朝日新聞出版)が発売。
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