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2012.12.25

“振付師”竹中夏海さん「スポーツと同じようにアイドルも役割分担がイメージとして共有されている」

ぱすぽ☆やアップアップガールズ(仮)など、アイドルグループの振り付けを手がける振付師・竹中夏海さんの処女作「IDOL DANCE!!!」が12月7日にポット出版より発売された。日本女子体育大学で舞踊学を専攻していた竹中さんは、09年から振付師としての活動を開始。11年5月にオリコン1位デビューを果たしたぱすぽ☆の振付師として注目され、最近はさらにその活躍の幅を広げつつある。
竹中夏海
主にグループアイドルの振り付けを担当し、大胆なフォーメーションチェンジを特徴とする竹中さんの振り付けは、サッカーやアメフトのフォーメーションに例えられることも多い。初の著書を発表した彼女に、チームとしてのグループアイドル、個人と組織のバランス、チームの中での個性の生かし方についてお話を伺った。

没個性にならず一人一人のキャラクターを生かしてあげられるものを

――竹中さんは大学を出てからすぐアイドルの振付師として活動をスタートしていますが、それってなかなか珍しいタイプですよね?

竹中 私はもともと振付師志望だったんです。だいたいダンスをやっている人は踊れる若さがあるうちはダンサーになりたいものなんですけど、私の場合は、踊るのも好きなんですけど、振りを作るのが好きで、自分で作った振付を見たいんですよ。自分の作った振り付けを生で正面から見たいので、そうすると自分で踊ったら見られないじゃないですか。自分が踊りたいという欲とそれを見たいという欲を秤にかけたときに、見たいという方が勝つので、だったら振付師になろうと。

中学生くらいから、ダンスの仕事をするのなら振付師だとか、演出家だったりとか評論だったりとか、そういう研究する側だったり作る側だったりになりたくて。その頃からやりたいことの方向性ははっきりしていたんですけど、だったらどんなジャンルの振付師がやりたいのか、いろいろと求めている要素を突き詰めていったときに、行き着いたのがアイドルのダンスだったので、アイドルの振付師になりたいなと思い、なりました。

――アイドルというジャンルのどこに魅力を感じたんですか?

竹中 お客さんを巻き込めるものをまずやりたいなと思って。アート寄りのものってまずダンサー自身が表現したいもの、振付師が表現したいものがあると思うんですけど、それよりも見ている方も楽しい、やっている方も楽しいものがしたいなと思っていて。ディズニーランドのパレードでお客さんを巻き込んで同じ振りをして踊ったり、チアダンスで観客席が一体となって応援している姿とか、そういう空気感が好きで。一度、友達に誘われて格闘技の「ハッスル」を見に行ったことがあって、その空気感が求めているものにすごく近くて。ステージ対観客ではなくて、お客さんも一体になっている感覚がすごく良くて。そういうことができるジャンルを考えていったときにアイドルかなと。

もう一つは、没個性にならず一人一人のキャラクターを生かしてあげられるもの。ダンスって揃えることが重視されるんですけど、この子じゃないとダメなんだ、という部分がもう少しあってもいいなと思って。私は大学生のときに、チアボーイズという高校生の男の子たちのチアダンスを教えていたんですよ。チアって本当はチームの規律をすごく求められるんですけど、この子はびしっとした動きは決まらないけれど、かわいい動きは上手だなとか、そういうふうに考えちゃって。大会で優勝するためには揃えたほうがいいのかもしれないけれど、一人一人を生かしてあげられるやり方は違うんじゃないかなとか。そういう考え方に合ったものをずっと探していて、それで辿り着いたのがアイドルだったんです。

新宿タワーレコードで行われた出版記念トークショーより。
竹中夏海

チームスポーツ的に役割分担がイメージとして共有されている

――僕はサッカーが専門なんですが、サッカーではよく「個」と「組織」というのが話題になります。強いチームを作るときに選手の「個」の力を優先させたほうがいいのか、チームとしての「組織」を優先させたほうがいいのか。それを対立概念のように捉える見方もありますが、いまでは選手の個性を生かすためにチームの組織があり、組織があることで個が有効に機能するという、両者を対立概念ではなく相乗効果を生むものとして捉える見方が一般的になっています。竹中さんの振り付けを見たときに、それと同じことを感じたんですね。

竹中 そうですね。スポーツにはポジションごとに名前が与えられていたりするじゃないですか。アイドルもそこまで厳密ではないけれど、ざっくりとメンバー間やファンの人との間で、この子はダンス担当、この子はMC担当、この子は歌担当、この子は末っ子、この子はみんなの妹とか、そういう役割分担がイメージとして共有されていて、それってチームスポーツ的ですよね。それはなんとなくイメージとしてあるだけじゃなくて、メンバー間の中でも自覚していた方が絶対にいいんですよ。

ぱすぽ☆だったら、初期の頃はメンバーもスタッフもみんな手探りで、誰が何に向いているのかっていうのがはわからなくて。それはステージに上がって見ないとわからないことが多いので。この子にはこれが向いているんじゃないか、この子にはこっちが向いているんじゃないかというのが、やっていくうちにだんだんとわかってきた感じですね。メンバー自身もそういう振る舞い方がわかってきてからの方が、ステージもぐっと良くなるんです。

例えば、あいちゃん(根岸愛)とかがそういう感じ。愛ちゃんはキャプテンという役割を与えられていたのだけど、あの子の中でのキャプテン像がなかなか出来上がらなくて。でも、それが出来あがってからは急にハマるようになったりとか。ゆっきぃ(藤本有紀美)なんかもそうですね。いじられキャラと言っても広いし、リーダーと言っても広いし、末っ子って言ってもいろいろな末っ子がいるし。この子ってこうじゃんというのがわかりだしたときに、それが伝わるようになるんですよね。それはゼロから演じきるようなものではなくて、その子の普段のキャラクターや立ち居振る舞いから成り立っているものなので。それをどう生かしてあげるかというのは意識しています。

ぱすぽ☆は団体競技のグループ

――先生は今、ぱすぽ☆、アップアップガールズ(仮)、夢見るアドレセンスなど複数のグループを見ていますが、それぞれの生かし方に違いはありますか?

竹中 ぱすぽ☆のダンスはフォーメーションが特徴だと言われるんですけど、当初は本人たちにスキルがなく、個々の動きであまり見せられなかったので、全体で見せるしかなかったから、結果的にそうなったんですよね。「スイミー」という絵本があって、大きな魚と対峙したときに、小さい魚たちが一匹同士だとかなわないけれど、たくさん集まって魚の形のフォーメーションを組んで、やっつけるみたいな話なんですけど、そんなイメージで。ぱすぽ☆を始めたときは、AKBとハロプロ以外では、ももクロちゃんくらいしかいなくて。実際にステージを見に行ったりもしたんですけど、ももクロちゃんはもともと個のスキルが高い子が集まっているので、この子たちに個々のスキルでは絶対にかなわないって思って。以前にも言ったことなんですけど、ももクロちゃんが個人競技のスター選手が集まったようなグループなら、ぱすぽ☆は団体競技のグループなので。一人じゃ何も出来ない子たちがぎゅっと集まったときに、それぞれの個性だったり、メンバー間の魅力だったりが見えてくると。始まった当時は、そういうグループだと思っていて。だから最初は、フォーメーションで見せていこうというのではなく、そこで見せるしかなかったというのが実際なんです。ただ、3年やってきて、個人のスキルも上がってきているので。団体競技としての強さはすでに持っていると思うので、そこにプラスして個人の力が伸びてくれば、まだまだ上がっていけると思っているので、そこはこれからだなと思っています。

やっていく中で私自身も、メンバー間をどう見せていけばいいかをわかってきたし、メンバー同士もお互いにどう振る舞えばお互いを生かすことができるか、この子をどう扱ったらキャラが立つかみたいなのを掴んできたし、個人の見せ場というのは増えてきたかもしれないですね。例えば、「ダムダムフリーダム」はダンスの得意な杏奈(玉井杏奈)が振り付けをしたんですけど、杏奈と相談しながら作っていくときに2人の間で共有していたのが「『ダムダムフリーダム』だからなちゅ(岩村捺未)が立たないとダメだよね」と。なちゅはぱすぽ☆の中でもフリーダムの象徴なので。「ここどうしようか?」「なちゅだよね」「ここ誰がいい?」「なちゅだよね」って、2人で考えるとなちゅばかりになっちゃって。

「Love Diary」では、さこちゃん(槙田紗子)のソロダンスを入れましょうってことになって、さこちゃんが恋をして周りが見えなくなって止められない、そのときに誰が止めに入るかっていったら、杏奈しかないないよねとか。「ピンクのパラシュート」で指揮者の役をするところは、ゆっきぃなんだけど、私もそのイメージだったし、メンバーもここはゆっきぃだよねとなるし、お披露目したらファンの人もあそこはゆっきぃだよねって言ってくれる。そのイメージを私もメンバーもスタッフもファンの人も共有できているんだなというのが嬉しくて。そういうのがどんどん増えていけばいいなと思います。

ぱすぽ☆「君は僕を好きになる」

自分たちの持ち曲を自分たちが演るということ

竹中 アプガ(アップアップガールズ(仮))はスキル有りきで、個人のダンススキルといった部分では、ぱすぽ☆は全然かなわないんですよ。だけど、グループとして、自分たちのライブをやってきた経験はぱすぽ☆の方があって、あれだけスキルのあるアプガちゃんでも、ぱすぽ☆にかなわない部分があったりする。それがすごくおもしろいところで。それは自分たちのライブをするということ。自分たちの持ち曲を自分たちが演るということ。それが彼女たちの今のテーマなんですね。

ぱすぽ☆は持ち時間15分からのスタートでしたけど、最初から自分たちの持ち曲でパフォーマンスをして、自分たちのライブをしてきたので、それが当たり前なんですけど、アプガちゃんたちはバックダンサー気質というか、ハロプロの研修生からスタートしているので、技術はあるんですけど、自分たちのライブをしてきた経験は足りないんですよ。そこは、これから伸びてくる部分だと思うので。今は、一曲一曲も大事なんですけど、セットリストの流れだとか、曲と曲とのつなぎだとか、ライブ全体の流れとかを意識してやっていけるか。そういう部分の話をメンバーにしていて。もともとのスキルはある子たちなので、頭で理解して意識するようになると、できるようになるんですよ。そういう部分を意識するようになることで表現がどんどん変わっていくのが、今おもしろいところです。

アプガの曲はメンバーに当て書きしているような曲、それを例えばBerryz工房が歌っても何の説得力もなくて、この7人でやらなきゃダメな曲、今のアップアップガールズが歌って踊るから意味があるんだよという曲が多くて、だから、そのことを意識するように伝えています。それを意識してもう一度やってみようかっていうと、すごく良くなってレッスン中にちょっと感動して、泣きそうになったりして。ただ、意識すればすぐできるけれど、意識を忘れるとすぐできなくなってしまうので。動きの技術って一度身についたものは簡単にはなくならないけれど、意識は忘れてしまえばすぐ元に戻ってしまうので。つねに意識を忘れないようにとは言っています。アプガは結成されたのは去年の春とかなんですけど、ずっと先輩の曲をカバーしていたので、自分たちの曲を演るようになったのは本当に今年に入ってからとか。だから、これからですね。

アップアップガールズ(仮)「チョッパー☆チョッパー」

個人の仕事があるぱすぽ☆だと思ってください

竹中 夢アド(夢みるアドレセンス)は初期のぱすぽ☆の雰囲気に近いです。最初にスタッフの方に「個人の仕事があるぱすぽ☆だと思ってください」って言われて。ぱすぽ☆は事務所に入ってみたもののヒマにしてる子たちが集まったので、頑張るところがそこしかなかった、それで頑張れたんですけど、夢アドは「ピチレモン」の歴代表紙登場回数1位の子とかもいて、みんなモデルとして個人の活動が充実している子たちなんですよ。その子たちがアイドルグループを作ってライブをやるのって、何年か前だったら面倒くさいってなったと思うんです。今までは、本当は女優やモデルになりたくて、そのステップのためにアイドルをやっているという感じだったから。でも、彼女たちはすでにモデルとして仕事をしているのに、アイドルを嫌がっている感じはない。かといってアップフロントの子みたいに、確固たる意思を持ってアイドルになっているわけでもない。だからふわふわしたところもあって、そういう意味で、ぱすぽ☆と似ているんですよね。メンバー同士、仲が良い所も似ていて。夢アドちゃんが「ぱすぽ☆さんみたいな衣装を着たい」とか「ぱすぽ☆さんみたいな色分けをしたい」とか言うのを聞くと、ぱすぽ☆さんも先輩になったのね、と感慨深いです(笑)。

夢みるアドレセンス「荻野可鈴_サプライズbirthday」

裏表があると、やっている本人が苦しくなる

――ぱすぽ☆は同業者の人気が高いですよね。ももクロは作り手側の人たちから人気が高いんですけど、ぱすぽ☆はアイドルをやっている女の子たちからの人気がすごく高い。

竹中 それは本人たちが楽しそうだからじゃないですかね。楽しそうに自由にやっている感じが伝わっているんだと。ももクロは作り手さんが楽しそうですもんね。同業者の人気という意味では、みおちゃん(増井みお)ですね。女の子人気というとバラけますけど、同業のアイドルさんからは圧倒的に人気あるんですよ。あの子はTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)のとき、楽屋を歩けないくらいでしたから。ケータリングとか取りに行くと一緒に写メ撮ろうってケータイを持ったアイドルの子たちに囲まれていて。でもあの子は三次元に興味ないんですよね。そこが不思議なところで。

―東京女子流のディレクターの佐竹さんは竹中さんとの対談の中で、今のアイドルは裏表があるとやっていけないという話をしていましたよね。

竹中 裏表があると、やっている本人が苦しくなると思うんですよ。キャラを作っていると自分自身が苦しくなっていくと思うので。ぱすぽ☆なんかは本当に実像です。ステージに立つあいちゃんやみおちゃんが楽屋にいるときそのまんまかっていうと、そうではなくて、あの子たちなりのスイッチを入れて表に出てはいるんですけど、それはちょうど人前に出るときにメイクするくらいの感覚なんですよ。遠くの人からも見やすくするために、アイラインを強調したり濃くしたりはしますけど、ベースはその子自身のものなので。そうじゃないとあとで苦しくなりますよね。だから素の自分を自分から発信できない子は周りの子に助けてもらって、素のキャラを出すようにしたりしていて。そういうのがあるから、メンバー間もお互いのキャラを把握しておくというのが大切なんですよね。

うちの子たち、みんな幸せになってほしい

――ぱすぽ☆はメンバー同士、仲が良さそうじゃないですか。昔はアイドルグループって裏では仲悪いんでしょみたいなイメージが当たり前だったけれど、とくに嵐以降って本当に仲がよさそうなグループが増えてきましたよね。

竹中 わたしが担当している子たちは仲が良いですね。その中でも違いはあって、ぱすぽ☆とか夢アドは中高生になってからの仲の良さなんですけど、アップフロントの子たちは、小さい頃から一緒にいるから、幼馴染とか兄弟に近いような感じなんですよ。お互いにきついことを言い合っていたりするんですけど、それが女子のきつさじゃなくて、兄弟とか幼馴染的な感じで、見ていて不安になるような感じではないんですよね。仲が良すぎることを不安に思うスタッフさんもいたんですけど、仲が良くて悪いことはないし、私はずっと嵐を好きなので、メンバー同士の仲が良いことはいいことで、それはファンの人にも伝わると思っているので。仲が良いからあそこは成功したって思われたいですよね。

――自分が見ているグループにこうなってほしいというのはありますか?

竹中 幸せになってほしいですね。うちの子たち、みんな幸せになってほしい。みんなかわいくて仕方ないんです。ぱすぽ☆はぱすぽ☆をやってよかったなと思うことをたくさん見つけて欲しいんですよ。アプガはまたちょっと違って、ぱすぽ☆は偶然アイドルになったような子たちだけど、アプガはそれがやりたくてやりたくて仕方なかった子たちで、やりたかったことが今叶いはじめているところなので、それをもっと叶えてほしい。夢アドも、モデルの仕事だけでなく、夢アドをやっていなければ、こういう景色に巡り合えなかったなというもの、それこそサイリウムの光だったり、ライブを演ることで感じるお客さんの温かさだったり。そういうものに出会っていくと思うので、それをたくさん見つけて欲しいですね。

竹中夏海
竹中夏海
http://ameblo.jp/takenakanaketa/

ぱすぽ☆
http://passpo.jp/

アップアップガールズ(仮)
http://ameblo.jp/upfront-girls/

夢みるアドレセンス
http://yumeado.com/

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