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現地記者が見た中国代表の現状…日本代表との一戦の行方は?

2021.09.07

[写真]=Getty Images

 9月8日の0時(日本時間)にキックオフされる予定の2022 FIFAワールドカップ カタール・アジア最終予選の中国対日本の前に、中国代表の現状をお伝えしよう。

 この一戦は中国のホームゲームながら、入国の際に厳格な隔離措置が取られることから、本国での開催を断念。代替開催地にはカタールのドーハが選ばれた。中国代表は8月26日に現地に入り、2日のオーストラリア戦に備えた(結果は0ー3の敗北。オーストラリアのホームゲームもシドニーからドーハに変更されている)。

 長らくマルチェロ・リッピ前監督の補佐を務めていたリー・ティエ監督は、恩師から実利的なアプローチを学び、堅守からのカウンターを武器に戦う。相手によってシステムを変えるが、前線の柱はブラジルからの帰化選手エウケソンとなる。2トップなら、その相棒にエスパニョールに所属するウー・レイが入るが、1トップなら、この29歳はウイングを任されるだろう。残る2人のブラジル出身者、アランとアロイージオはジョーカーとしての起用が濃厚だ。

 中盤は主将のウー・シーと、チャンスメーカーのチャン・シージャーが軸となり、最終ラインはイングランド生まれの帰化選手タイアス・ブラウニングがまとめ上げる。オーストラリア戦の先発の平均年齢は30.3歳と、経験が重視されている。

 日本戦に向けたチームのムードは、必ずしも良好とは言えない。

「(現中国代表に)このレベルの勝利の経験を豊富に持つ選手は、ほとんどいない」と指揮官も自信の欠如を認めている。「自分たちを信じるためにも、白星を重ねていく必要がある。特にW杯最終予選のような舞台では、勝利を手にして勢いに乗らなければならない」

 その意味でも、オーストラリアとの初戦の完敗は痛かった。中国サッカー協会の代表チームへの手厚いサポートがあっても、やはりアジアのトップレベルとは差があることを思い知らされた。

 同協会はカタールW杯出場を至上命題に掲げ、今シーズンの中国スーパーリーグを大幅に短縮。ファーストステージを8月中に終わらせ、W杯最終予選が行われる9月から11月までの間はスーパーリーグを行わず、ファイナルステージは12月から来年1月に開催することに決定した。

 代表チームは8月18日からトレーニングキャンプを張り、初戦まで2週間、みっちりと全体練習を行ってきた。ドーハにも8月28日に入っている。その点では、日本より大きなアドバンテージがあると言える。彼らはオマーン戦の前に全体練習が1日しかできず、ホームでの初戦でオマーンによもやの敗北を喫した直後に、ドーハへ向かった。

 そうは言っても、こうした中国のやり方がチームにポジティブに作用しているかはわからない。パンデミックのさなか、代表チームはどこに行ってもトレーニング場と宿泊施設を往復するだけの生活を送らざるを得ず、外の世界と離れた選手たちが心理的な疲労を溜め込んでいても不思議ではない。

 来年のカタールW杯は、中国代表が過去に一度だけ本大会に出場した日韓大会から、ちょうど20年の節目の大会となる。政府はこの人気スポーツの力を借りて、中国のソフトパワーを強めようとしており、今大会には是が非でも代表チームを出場させたいと考えている。もし出場権を逃せば、協会幹部のキャリアが危ぶまれるはずだ。 また、ファンも多くを期待している。国内リーグの繁栄を経験した彼らは、次に代表にも同じことを求めているのだ。

「代表チームは、国民の息子のようなものだ」とリー・ティエ監督は言った。「彼らは親からの励ましを求めている。時にはテストで悪い点を取ることもあるが、それでも彼らは我々の息子なのだ」

 今回の日本戦は、どちらも黒星スタートを切ったチーム同士による、白熱の戦いとなるはずだ。実力は日本が上かもしれないが、綿密に準備を重ねてきた中国は、国の威信をかけて死力を尽くすに違いない。

文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一

By サッカーキング編集部

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